第十話 狂言って芝居とヤバいじゃ、意味が違うね
トチです。前書きは短い方が良いと思ってます。
お家生活がまだまだ続きそうで悲しくなります。
巣ごもるために先日スーパーでお買い物をしてきたのですが、
4、5歳の男の子が両手に筒状のお菓子を持って嬉しそうでした。
一つはお母さんので、お父さんのは無いそうです。
いつかお菓子もらえるように頑張ってお父さん!
それでは 第十話です。
※ ハイフン"-"の間は読者様用の翻訳です。錦たちには聞こえません。
あの店を出てから、ソウサはずっと俺の肩を掴んでる。
肩を組むじゃなくて文字通りしっかと掴んでる。
たぶん逃げるなら俺からだと思われてるな。
曲がってきた大通りを更に越えて、人気の多い一角に入った。
こっちは活気があって商店のような小売りが目立つ。
そのうち一つの店前でソウサは何か言いだした。
「おまえらなのめに食ふぞな?人やうとかなひぞ?-
-おまえら普通に食べるんだよな?ヒューマン用とかないぞ?-
ザッとミシンさんはソウサの腕を掴んで、俺の肩から引き離した。
「いま、をこにする止む?これにも主なる」
-そろそろ、馬鹿にするの止めてくれる?これでも主なの-
なんかいつにも増して怒ってないか?
俺にも分かるように、字幕出ませんか?
腕輪にその機能付けてくれると、売り上げ爆上がりだよ?
※ 読者様用の字幕があります。錦たちには見えません。
「すまず、悪気は無かりけれど、これ従者なのに恐れてに
主を守る気や無き、少し腹立てり
汝が従者なりきとは、主をこにしてすまざりき」
-すまん、悪気は無かったんだが、こいつ従者のくせに逃げ腰で
主を守る気が無いのかと少し腹が立ってた
君の方が従者だったとは、主を馬鹿にしてすまなかった-
「それはどちらにしても、同じ事じゃない」
ソウサは俺の方を向いて胸に右手を当て、深く会釈をした。
「このやり方やあれるな、詫びむとすれど」
-このやり方は合っているかな、詫びたつもりなんだが-
「さてあやまちたらぬ、彼にも心得らる」
-それで間違っていない、彼でも理解できる-
「それにすとも、主にも厳しきかな」
-それにしても、主にも厳しいんだな-
「これが普通なの」
この間のやり取りはなんだ?態度がガラッと変わった。
ミシンさんが話した内容が気になるが、普通の事なのかモヤっとする。
それ以上は怒ってる気がして聞くのは止そうと思った。
ここは食堂みたいだ、久々の食べ物の匂いに腹が鳴る。
テーブル席は五席あるが空きは一席、そこに座るのかと思ったが、
店にいた数名の客が、ジロっとこちらを見て、
何とも言えない表情でそそと食事を続ける。
俺だけ耳が尖がって無いからね、、
「すまぬ邪魔すぞ、おくのへうたてしつれゆけ!」
-すまん邪魔するぞ、奥の間に案内してくれ!-
店の全員に聞こえるかのような大声で何か言い放った。
すると厨房の方から女性の店員が現れ、
こちらへと言う感じで店の奥に案内をしてくれた。
あまり珍しい生き物は、人目に付かない方が良いよね?
さらわれちゃったり、見世物にされたりするし。
でも俺をオークションに掛けたら大損するよ?
「ふぅ、やうやう打ち忍びてかれし、ここの店は美味けれど
いかにもすだくが陰気くさき、悪しくな思ひそ」
-ふぅ、やっと人目から離れた、ここの店は美味いんだが
どうも集まる奴らが陰気くさい、悪く思わないでくれ-
「気にせで」
-気にしないで-
「日ごろには、難きかと思へど、やをら聞け」
-いまは、難しいかと思うが、とりあえず聞いてくれ-
「難しいけど、聞いてくれって」
ミシンさんが訳してくれるのか、
きゃあ!ミシン・ベーカー先生ステキ!
その後ソウサが頼んだ料理を口に運びながら、
俺たちが誰なのか、何故あの苛烈な砂漠から現れたのか。
人属はまだ存在してるのかとか、着ている服の事だとか、
髪が真っ黒なのは何故だ?などなど色々と聞かれた。
ソウサは仕切りに俺の左腕を見ようとしていて、
腕時計が珍しいんだろうな~というのは分かった。
ソウサは興味と人属の知っている知識で質問をしてきた。
向こう側の事は、ぼやかしつつ出来る範囲で答えた。
こちらも質問を仕掛けてみたが、ミシンさんも悩むほど、
腕輪の翻訳はうまくいってないようだ。
爪切り女性の店には、食事が終わり次第戻ると言っている。
"楽しみにせよ"という分かりやすい締めで、ご相伴にあずかった。
「さるほどにいとど、なんぢらの事がな分かりそ」
-さていよいよ、おまえらの事が分かるな-
ソウサが張り切ってるのがわかる、テーブルで会計を済ますと
立ち上がり給仕の女性に"ひと言"ふた言"何か伝えている。
「かたじけなくさうらふ、また越したまへ」
-ありがとうございます、またお越しくださいませ-
給仕の女性はお辞儀をしながら、ニコッとお見送りしてくれた。
ミシンさんに靴の踵を蹴られたのは、たぶん気のせい。
食堂の個室からホールに出たが店に客は誰一人いなかった。
なんか俺のせいで悪い事してしまった様で気が滅入った。
来るときはソウサに肩を掴まれてたせいも有ってか
街並みをよく見れなかったが食堂の周りは、
食材を売る店、食器や雑貨のような品を扱う店が多い。
ただ店先から俺たちを見る視線は、
あの化け物を見るものと、そう変わらなく感じた。
まあここは"お上りさん"を演じよう、それが自然だよな。
ソウサはと言うと、、ものすごくご機嫌な様子で足取りが軽い。
ミシンさんは、、、まぁミシンさんだな。
爪きり屋の前まで来ると店の入り口から黒煙が上がってる。
「、っっとアレまずくない?店燃えてるじゃん!」
慌てたがソウサが腕を出し俺を制止する。
「ものならぬ、例の事、例の事」
-問題ない、いつもの事、いつもの事-
黒煙立ち煙る店の中へズカズカ入っていく。
店全体から煙臭いというか、薬の臭いが立ち込めている。
燻製は白い煙だけど、黒いからディーゼルの排煙みたいだ。
煙の中からソウサが顔を出し、手招きしている。
「いかがせり?入り来?」
-どうした?入って来いよ?-
なにを嬉々と煙越しに言ってるの?
火事から助かった人か、焼き鳥屋の暖簾越しみたいだぞ。
一飯の恩義もあるし、恩を煙に巻くってのはダメか。
もう~仕方ない行くか!意を決して店に入るが
中はちっとも煙くない臭いは相変わらずだが。
爪切り女が店の中央でドカッと座っている。
「おそし!こなたはすでにえたりといふに!」
-おそい!こっちはとっくに出来てるって言うのに!-
「悪し飯屋に盛り上がりたりて、これにもとみに来しぞ」
-悪い飯屋で盛り上がってて、これでも急いで来たんだぞ-
「嘘かな~、かの店は旨き疾き安しけれど売れよ、
かくかかるわけなし!おほかた日ごろきみは、、、」
-嘘でしょ~、あの店は美味いよ早いよ安いよが売りでしょ、
こんなにかかるわけない!大体いつもあなたは、、、-
言葉が分からないのに、すごく内容が分かる。
アレだ週末の夜に駅のホームで見たことある。
イチャコラを見せられてるみたいで非常に不愉快なのだ。
叫んでる爪切り女の顔はほんのり紅く、まんざらでもない感じだし、
ソウサはソウサで半笑いだし困り顔でヘラヘラしてるし、
爪女の腰とも尻とも言えない微妙なラインをバンバン叩いてるし。
ここはもしや、、、未知の男女が宴を催す相席屋か?
へー初めて来たーこういう店なんだーふーんホントにあるんだねー、、、よいしょっと。
「んじゃ俺見たいテレビあるんで帰ります」
「わたしあーゆーノリ嫌いなの帰る」
俺たち二人はクルっと回れ右して心の野戦病院へと敗走した。
煙に巻かれて粉塵爆発しろ!リア充共め!!!
心なしか煙がピンクに見えたのは、涙でプリズムしたからだろうか。
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俺たちは店の外で8分待った、待つしか無いよね。
爪女が艶々で出てきたら、ここはネイルサロンになるのか。
煙の収まった店からソウサがキョロキョロしながら出てきた。
「などかなんぢらいづこか行く!」
-なんでお前らどっか行っちゃうんだよ!-
「我ら邪魔かなとて、、」
-私たち邪魔かなって、、-
まぁ確かにお邪魔だったよね、コレどう言い訳する?
たわごとなど、ききたくない
わ!
俺は別に兄弟子ではないが、こう言ってやりたい! わ!
「すまぬすまぬ、これ作りて貰へるなり」
-すまんすまん、これを作って貰ってたんだ-
そう言うとソウサは、親指ぐらいの太さのシルバーの輪っかを見せてきた、
身振り手振りで耳に着けろと言ってる。イヤリングか、、、
、ハァアァア!?またお前のリア充アピールですか?
これ着けて今度は俺らもパーリーピーポーですか?
俺がこんなの着けたらサイレンピーポー鳴りますわ!
御用もないのにお縄にされるわ!
彼の世怖えわ~俺を試すわ~
金属アレルギ―無いけど、なんか別のアレルギー発症しそうですわ!
イヤリングを手に取るのに5分も掛ったのは、
俺のせいではない。
いかがでしたか?
ちょっと無下に扱われる錦が可哀そうになってきている私です。
錦はその辺りをスルー出来るキャラクターなので大丈夫だと信じてます。
時間の経過はゆっくりにしています、ジェットコースターが苦手です。
造語の書き間違いルビに注意してます。
古文はあまり得意ではないので許して下さい。ごめんなさい。
評価・誤字の報告など頂ければ、とつても励みになります。
次回 第十一話 サブタイのサブタイ「ショウテン」
それではまたお会いできるのを楽しみにしております。
誠意執筆中です、、、まさか?あいつが!




