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チョキンとミシン ~パラドックスは足元が見えない~  作者: トチ
第一章 ここに至るまでの経緯とかなんとか
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第十話 狂言って芝居とヤバいじゃ、意味が違うね

トチです。前書きは短い方が良いと思ってます。

お家生活がまだまだ続きそうで悲しくなります。

巣ごもるために先日スーパーでお買い物をしてきたのですが、

4、5歳の男の子が両手に筒状のお菓子を持って嬉しそうでした。

一つはお母さんので、お父さんのは無いそうです。

いつかお菓子もらえるように頑張ってお父さん!


それでは 第十話です。


※ ハイフン"-"の間は読者様用の翻訳です。錦たちには聞こえません。


 あの店を出てから、ソウサはずっと俺の肩を掴んでる。

肩を組むじゃなくて文字通りしっかと掴んでる。

たぶん逃げるなら俺からだと思われてるな。


 曲がってきた大通りを更に越えて、人気(ひとけ)の多い一角(いっかく)に入った。

こっちは活気があって商店のような小売りが目立つ。

そのうち一つの店前でソウサは何か言いだした。


「おまえらなのめに()ふぞな?人やうとかなひぞ?-

-おまえら普通に食べるんだよな?ヒューマン用とかないぞ?-


 ザッとミシンさんはソウサの腕を掴んで、俺の肩から引き離した。


「いま、をこにする()む?これにも(ぬし)なる」

-そろそろ、馬鹿にするの止めてくれる?これでも(あるじ)なの-


 なんかいつにも増して怒ってないか?

俺にも分かるように、字幕出ませんか?

腕輪にその機能付けてくれると、売り上げ爆上がりだよ?


※ 読者様用の字幕があります。錦たちには見えません。


「すまず、悪気(あつき)は無かりけれど、これ従者(ずさ)なのに恐れてに

 (ぬし)(まぼ)る気や無き、少し腹立(はらだ)てり

 (なむじ)が従者なりきとは、主をこにしてすまざりき」

-すまん、悪気(わるぎ)は無かったんだが、こいつ従者(じゅうしゃ)のくせに逃げ腰で

 (あるじ)(まも)る気が無いのかと少し腹が立ってた

 君の方が従者だったとは、主を馬鹿にしてすまなかった-


「それはどちらにしても、同じ事じゃない」


 ソウサは俺の方を向いて胸に右手を当て、深く会釈(えしゃく)をした。


「このやり方やあれるな、()びむとすれど」

-このやり方は合っているかな、詫びたつもりなんだが-


「さてあやまちたらぬ、(あれ)にも心得(こころえ)らる」

-それで間違っていない、彼でも理解できる-


「それにすとも、主にも(きび)しきかな」

-それにしても、主にも厳しいんだな-


「これが普通なの」


 この(かん)のやり取りはなんだ?態度(たいど)がガラッと変わった。

ミシンさんが話した内容が気になるが、普通の事なのかモヤっとする。

それ以上は怒ってる気がして聞くのは()そうと思った。


 ここは食堂みたいだ、久々の食べ物の匂いに腹が鳴る。

テーブル席は五席あるが空きは一席、そこに座るのかと思ったが、

店にいた数名の客が、ジロっとこちらを見て、

何とも言えない表情でそそと食事を続ける。

俺だけ耳が尖がって無いからね、、


「すまぬ邪魔(まが)すぞ、おくのへうたてしつれゆけ!」

-すまん邪魔するぞ、奥の()に案内してくれ!-


 店の全員に聞こえるかのような大声で何か言い放った。

すると厨房(ちゅうぼう)の方から女性の店員が現れ、

こちらへと言う感じで店の奥に案内をしてくれた。

あまり珍しい生き物は、人目に付かない方が良いよね?

さらわれちゃったり、見世物(みせもの)にされたりするし。

でも俺をオークションに掛けたら大損するよ?


「ふぅ、やうやう()(しの)びてかれし、ここの(たな)は美味けれど

 いかにもすだくが陰気(いんき)くさき、()しくな思ひそ」

-ふぅ、やっと人目から離れた、ここの店は美味いんだが

 どうも集まる奴らが陰気(いんき)くさい、悪く思わないでくれ-


「気にせで」

-気にしないで-


「日ごろには、(かた)きかと思へど、やをら聞け」

-いまは、難しいかと思うが、とりあえず聞いてくれ-


「難しいけど、聞いてくれって」


 ミシンさんが訳してくれるのか、

きゃあ!ミシン・ベーカー先生ステキ!


 その後ソウサが頼んだ料理を口に運びながら、

俺たちが誰なのか、何故あの苛烈(かれつ)な砂漠から現れたのか。

人属(ひとぞく)はまだ存在してるのかとか、着ている服の事だとか、

髪が真っ黒なのは何故だ?などなど色々と聞かれた。

ソウサは仕切りに俺の左腕を見ようとしていて、

腕時計が珍しいんだろうな~というのは分かった。

ソウサは興味と人属の知っている知識で質問をしてきた。


 向こう側(斯の地)の事は、ぼやかしつつ出来る範囲で答えた。

こちらも質問を仕掛けてみたが、ミシンさんも悩むほど、

腕輪の翻訳はうまくいってないようだ。

爪切り女性の店には、食事が終わり次第(しだい)戻ると言っている。

"楽しみにせよ"という分かりやすい()めで、ご相伴(しょうばん)にあずかった。


「さるほどにいとど、なんぢらの事がな()かりそ」

-さていよいよ、おまえらの事が分かるな-


 ソウサが張り切ってるのがわかる、テーブルで会計を済ますと

立ち上がり給仕(きゅうじ)の女性に"ひと言"ふた言"何か伝えている。


「かたじけなくさうらふ、また()したまへ」

-ありがとうございます、またお越しくださいませ-


 給仕の女性はお辞儀(じぎ)をしながら、ニコッとお見送りしてくれた。

ミシンさんに靴の(かかと)を蹴られたのは、たぶん気のせい。

食堂の個室からホールに出たが店に客は誰一人いなかった。

なんか俺のせいで悪い事してしまった様で気が滅入(めい)った。


 来るときはソウサに肩を掴まれてたせいも有ってか

街並みをよく見れなかったが食堂の周りは、

食材を売る店、食器や雑貨のような品を扱う店が多い。

ただ店先から俺たちを見る視線は、

あの化け物を見るものと、そう変わらなく感じた。

まあここは"お(のぼ)りさん"を(えん)じよう、それが自然だよな。

ソウサはと言うと、、ものすごくご機嫌な様子で足取りが軽い。

ミシンさんは、、、まぁミシンさんだな。


爪きり屋の前まで来ると店の入り口から黒煙が上がってる。


「、っっとアレまずくない?店燃えてるじゃん!」


 慌てたがソウサが腕を出し俺を制止(せいし)する。


「ものならぬ、(ためし)の事、例の事」

-問題ない、いつもの事、いつもの事-


 黒煙立ち(けむ)る店の中へズカズカ入っていく。

店全体から煙臭いというか、薬の臭いが立ち込めている。

燻製(くんせい)は白い煙だけど、黒いからディーゼルの排煙(はいえん)みたいだ。

煙の中からソウサが顔を出し、手招(てまね)きしている。


「いかがせり?()()?」

-どうした?入って来いよ?-


 なにを嬉々(うれうれ)と煙越しに言ってるの?

火事から助かった人か、焼き鳥屋の暖簾越(のれんご)しみたいだぞ。

一飯(いっぱん)恩義(おんぎ)もあるし、恩を(けむ)に巻くってのはダメか。

もう~仕方ない行くか!意を決して店に入るが

中はちっとも煙くない臭いは相変わらずだが。

爪切り女が店の中央でドカッと座っている。


「おそし!こなたはすでにえたりといふに!」

-おそい!こっちはとっくに出来てるって言うのに!-


()飯屋(いひや)(さか)()がりたりて、これにもとみに()しぞ」

-悪い飯屋で盛り上がってて、これでも急いで来たんだぞ-


「嘘かな~、かの(たな)(うま)()(やす)しけれど()れよ、

 かくかかるわけなし!おほかた日ごろきみは、、、」

-嘘でしょ~、あの店は美味いよ早いよ安いよが売りでしょ、

 こんなにかかるわけない!大体いつもあなたは、、、-


 言葉が分からないのに、すごく内容が分かる。

アレだ週末の夜に駅のホームで見たことある。

イチャコラを見せられてるみたいで非常に不愉快(ふゆかい)なのだ。

叫んでる爪切り女の顔はほんのり(あか)く、まんざらでもない感じだし、

ソウサはソウサで半笑いだし困り顔でヘラヘラしてるし、

爪女の腰とも尻とも言えない微妙なラインをバンバン叩いてるし。

ここはもしや、、、未知の男女が(うたげ)(もよお)相席屋(あいせきや)か?

へー初めて来たーこういう店なんだーふーんホントにあるんだねー、、、よいしょっと。


「んじゃ俺見たいテレビあるんで帰ります」

「わたしあーゆーノリ嫌いなの帰る」


 俺たち二人はクルっと回れ右して心の野戦病院(やせんびょういん)へと敗走(はいそう)した。

煙に巻かれて粉塵爆発(ふんじんばくはつ)しろ!リア充共め!!!


心なしか煙がピンクに見えたのは、涙でプリズムしたからだろうか。


-------------------------------------------------------


 俺たちは店の外で8分待った、待つしか無いよね。

爪女が艶々(つやつや)で出てきたら、ここはネイルサロンになるのか。

煙の収まった店からソウサがキョロキョロしながら出てきた。


「などかなんぢらいづこか行く!」

-なんでお前らどっか行っちゃうんだよ!-


「我ら邪魔かなとて、、」

-私たち邪魔かなって、、-


まぁ確かにお邪魔だったよね、コレどう言い訳する?

   たわごとなど、ききたくない

   わ!

俺は別に兄弟子(あにでし)ではないが、こう言ってやりたい! わ!


「すまぬすまぬ、これ作りて(もら)へるなり」

-すまんすまん、これを作って貰ってたんだ-


 そう言うとソウサは、親指ぐらいの太さのシルバーの輪っかを見せてきた、

身振り手振りで耳に着けろと言ってる。イヤリングか、、、

、ハァアァア!?またお前のリア充アピールですか?

これ着けて今度は俺らもパーリーピーポーですか?

俺がこんなの着けたらサイレンピーポー鳴りますわ!

御用(ごよう)もないのにお(なわ)にされるわ!

彼の世(こっち)怖えわ~俺を(ため)すわ~

金属アレルギ―無いけど、なんか別のアレルギー発症(はっしょう)しそうですわ!


イヤリングを手に取るのに5分も掛ったのは、


俺のせいではない。


いかがでしたか?

ちょっと無下に扱われる錦が可哀そうになってきている私です。

錦はその辺りをスルー出来るキャラクターなので大丈夫だと信じてます。

時間の経過はゆっくりにしています、ジェットコースターが苦手です。

造語の書き間違いルビに注意してます。

古文はあまり得意ではないので許して下さい。ごめんなさい。

評価・誤字の報告など頂ければ、とつても励みになります。


次回 第十一話 サブタイのサブタイ「ショウテン」

それではまたお会いできるのを楽しみにしております。

誠意執筆中です、、、まさか?あいつが!

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