解決! 名探偵
名:名探偵、ボケ
警:警部、ツッコミ
名「さて、お集まりのみなさん。そろそろ約束の時間となるようです」
警「おお、いよいよですな。それにしても、さすがは名探偵、雰囲気を盛り上げて来ますな」
名「警部。真面目な場面ですから、茶化さないで下さい」
警「(敬礼する)これは失礼しました」
名「(懐中時計を出して)あと数分で約束の時間。怪人六十四面相が、この屋敷に伝わる秘宝『黄金のダイヤモンド』を盗み去ると予告してきた時刻になります」
警「怪人六十四面相め……」
名「先日、『五角形ピラミッド』事件で逮捕した、怪人三十二面相が、脱獄し、怪人六十四面相となって戻って来るとは」
警「2進数ですか。それにしても、『黄金のダイヤモンド』を狙うとは……」
名「金なのか、炭素なのか」
警「『五角形ピラミッド』とは……」
名「五角なのか、四角なのか、三角なのか」
警「その、微妙に理系向けの笑いをはさむの止めてもらえます?」
名「警部!」
警「は、はい!」
名「練習が必要です」
警「は、練習というと、何の練習ですか?」
名「警部にうまく変装したつもりでしょうが、詰めが甘かったようですね。先程の敬礼は、手が左右逆でした。あなたが、怪人六十四面相ですね!」
警「……。ふっふっふ。さすがは名探偵、よくぞ見破った。そう、私こそが、怪人六十四面相だ。(顔の変装をはがす)ばりばりばり!」
名「そう、その練習です」
警「ですよね。ああ、びっくりした。私が怪人六十四面相だったのかと思った」
名「実は、私、名探偵でありながら、怪人の変装を見破ったことがないのです。そこで、本番に備えて練習しておこうかと思いまして」
警「そう言うことは先に言ってから始めてください。わかりました。練習しておきましょう」
名「屋敷のご主人。先程この部屋のカギは右手でかけたのに、パイプは左手でお持ちになるんですね。あなたが怪人百二十八面相だ!」
警「その通り。私が怪人だ。ばりばりばり! って、勝手に2進数増やさないで下さい」
名「奥さん。いつもとコロンの香りが違うようですね。あなたが怪人二百五十六面相だ!」
警「その通り、私が怪人よ。ばりばりばり! 2進数、増えすぎだから」
名「メイドのお嬢さん。今朝とホクロの位置が違うようですね。あなたが怪人五百十二面相だ!」
警「間違えちゃった。ばりばりばり! 2進数、次、千を超えるからね!」
名「よし。十分練習できました。ありがとうございます」
警「(汗をぬぐう)ふう、はあ。それは良かった」
名「……。警部、大変です!」
警「今度は何ですか?」
名「(懐中時計を取り出して)予告してきた時刻、とっくに過ぎています」
警「ばりばりばり! 何だって!?」
名「あ」
警「あ」
名「警部、あなたが怪人千二十四面相だ!」
警「もういいよ」