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アマオー:レッツスタート ―サリア先生の魔法講座―

 サリア先生の転移魔法によって転送されたのはどこかの森。


「ここは?」


「練習場と捉えてもらえばいいわ。早速練習相手のお出ましね。」


「ギャー! ギャー!」


 木陰から飛び出してきたのは緑色の小鬼。ゴブリンだ。それも2匹!


「まずは私がお手本を披露するからあなたはそこで見てて。」


「了解です、サリア先生!」


「そんなに固くならなくても大丈夫よ。気軽に『サリアさん』でいいんだから。」


 そう言うとサリアさんは杖をゴブリンに向けて構えた。


「それじゃ行くわよ。ファイアーボール!」


「ギャッ!?」


 杖から放たれた火球が片方のゴブリンに直撃。持っていたナイフを残して焼失する。


「こんな感じに杖を相手に向けて呪文を唱えればOKよ。次はあなたの番。」


「はい! ファイアーボール!」


「ギィ!」


 杖から放たれた火球がゴブリンに直撃。さっきとは違ってそれに耐えたゴブリンがナイフを構える。


「最初から当てるなんて筋がいいじゃない! やっぱり私の見立てに間違いはなかったわね!」


「でも倒せなかったです。」


「今のあなたと私じゃ持ってる魔力に大きな差があるから仕方ないわよ。それより気を付けて。ゴブリンが反撃してくるわよ。」


「はい!」


 ゴブリンがナイフを振り回しながら突撃してくる。これがもし現実だったら泣いて逃げ出してただろうけどこれはゲーム。安心して対処できる。


 振り回されるナイフを後ろに避ける。横に避ける。あ、ゴブリンが転んだ。チャンスだ!


「えい!」


 転んだゴブリンの頭目掛けて杖を振り下ろす。もともと火球で弱っていたゴブリンにはそれが止めの一撃になった。


「うん、上出来ね。まさか止めが撲殺だとは思わなかったけど。」


「魔法の方がよかったですか?」


「いいえ。戦闘は何より勝つことが第一。勝ち方自体に正解も不正解もないわ。ただ、非力な私たちにとっちゃ魔法で仕留める方が確実だわね。杖が壊れちゃう危険もあるし。」


「わかりました。気を付けます。」


「でも魔力量(MP)にも限りがあるから温存のための直接攻撃というのも有効な手段ではあるわね。ただ、直接攻撃なら杖よりも…」


 サリアさんが何かを拾い上げる。確かそこはゴブリンが立ってた場所だから…


「ゴブリンが落としたこのナイフとかがおすすめね。あなたも拾っておきなさい。」


「なるほど…」


―――――


 その後も氷や風、雷、土等といった他の属性の魔法の放ち方もサリアさんから教わった。


「それじゃあ次のステップに進みましょうか。」


「次のステップ?」


「魔法は単に呪文を唱えるだけじゃないわ。例えば杖を使った魔法には『詠唱』というものがあるの」


「詠唱ですか。ちょっと難しそうですね…」


「これもまず私がお手本を見せてあげるわね。ほら、出てきたわよ。」


 再び木陰から出現するゴブリン。今回も2匹だ。


「炎神よ、我が声を聴きたまえ! 我が求めるは燃え上がる炎!ファイアーボール!」


「ギッ…」


 さっき彼女が最初に放った火球よりも一回り大きな火球がゴブリンを焼き尽くした。


「これが詠唱した魔法の力。消費する魔力量はそのままに、威力の大きい魔法が放てるのよ。」


 「その分隙も大きいけどね」と彼女は付け加える。だが私には隙よりも大きな不安があった。


「あの…1回聞いただけじゃ詠唱の台詞を覚えられてないんですけど…」


「大丈夫よ! 覚える必要はないから。あなたには声が聞こえるはずよ!」


「声が聞こえる?…あっ!」


 声が聞こえる…というよりも見える。視界の片隅に何やら文章のようなものが1字ずつ表示されていく。これが詠唱の台詞だろうか?


「え、えんじんよ、わがこえをききたまえ、われがもとめるは、もえあがるほのお、ファイアーボール!」


「ギャッ!」


 杖から火球が放たれる。さっきは一撃で仕留められなかったゴブリンが一撃で焼失した。


「少しスムーズさには欠けていたけどいい感じね。詠唱はとにかく慣れが必要よ! 慣れればさらに早く魔法を放てるようになる!」


「これって他の属性の魔法でも詠唱があるんですよね?」


「そうよ。付け加えると詠唱は魔法それぞれによって違うから注意するのよ。例えば氷魔法なら炎神ではなく氷神に祈りをささげるわけだしね。」


「ふむふむ。」


「さて、それじゃもう一つ披露してあげようかな?」


「え、今度は何を?」


 またもやゴブリンが木陰から飛び出す。だけど今度は1匹だけ。


「まあ、見てなさい。」


 サリアさんの杖から小さな火球が放たれ、ゴブリンに直撃した。


「ギィ!」


「詠唱どころか呪文すら口にしてない!」


「これが『無詠唱』よ。魔力量の消費は呪文だけや詠唱とも変わらないけど、見ての通り威力が低い。後、無詠唱じゃ使えない魔法も多いから注意することね。」


 ゴブリンが起き上がり、反撃に打って出る。だがその脚が凍り付きさらに杖から放たれた小さな雷によって止めを刺された。


「メリットはすぐに放てることと相手に悟られにくいこと。この2点よ。」


「これは便利そうですね!」


「魔法の種類や等級だけじゃなく『呪文』、『詠唱』、『無詠唱』の3つを使いこなすのも魔法使いとして上手くやっていくためのコツよ。」


「なるほど。いろいろ勉強になります!」


「そう言ってもらえると嬉しいわ。さて…」


 目の前の木々がミシミシと音を立て始める。木々をかき分けて現れたのは今までの3倍の大きさはあるんじゃないかと思うくらい大きなゴブリン。ホブゴブリンだ。それも2頭。


「そろそろ卒業試験と行きましょうか。私が片方を受け持ってあげるから、あなたはもう片方をお願いね。」


「はい…わかりました!」

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