アマオー:トゥギャザー ―フリフリ、フリフリ、フ・リ・マ!―
「さあさあ、いらっしゃい! いらっしゃい! ほら、そこの『お墨付き』のお嬢ちゃん! こっち来て!」
「あたしですか!?」
「お嬢ちゃん以外にだれがいるのさ?」
いかにも砂漠地帯から来ましたといった感じの店主が私に声を掛けてきた。お店は…アクセサリー屋だ!
「お嬢さんお嬢さん! 安くしとくよ~? なんてったって『イア様のお墨付き』だからねぇ。」
「『お嬢さん』とか『お墨付き』とか少し照れちゃいますよ~。『アマオー』って呼んでください!」
「『アマオー』ちゃんか! いい名前だねぇ~! いい名前だからオマケして値引きしちゃう!」
「やったぁ~!」
赤い宝石をあしらった首飾りを購入。だってここまで値引いてもらって逆に買わないのも失礼だよね~。
「ありがとうよ! アマオーちゃん! また会ったときはよろしくな!」
「よろしく~!」
「やあ嬢ちゃん! 鉄兜はいらねェかい? この道130年のおいらが作ったんだぜ?」
ドワーフらしき店主が引っ張り出してきたのは立派なトサカが特徴的なフルマスクの鉄兜!
「なんてったってこの鉄兜のウリはな、このトサカを取り外してナイフとして使うことも可能なんだぜ!」
「へぇ~凄~い! でもごめんなさい。鉄兜はご遠慮します!」
「やっぱり女に鉄兜は無理かァ!」
「あらあなた、ハーフエルフじゃないの? 同じハーフエルフの好で安くしとくわよ?」
「え!そうですか?」
「見てみてこの薬。これはね、『カブテリオの森』で採取した樹液をベースに作った特殊な回復薬で……それでそれでこれは………それでそれでそれでこれはこれは………」
積み上がる薬瓶の山…止まらない説明の数々…
「わ、わーすごいですねー。」
「ワイバーンの串焼きはいかが?」
「ワイバーン!? そ、それって大丈夫ですか!?」
「最上級のワイバーン肉を使ってるから味はサイコーよ!」
「最上級のワイバーン肉…」
「おや? 疑ってるね~? そいじゃあんたに試食の一本!」
「え!? ちょ!? 無理やり口に押し込むのはあむっ!? …おいし~! 10本貰ってもいいですか!?」
「はい、まいどあり~。」
「コレ、トテモ、スゴイ、イシ!」
そう言って持ってる石について熱弁するのはリザードマンの男。
「へぇ~。」
「シゲキ、スルト、ヒカル!」
突然石から眩い光が…!
「目が、目が!? 頭がくらくらする~!」
「………」
店主が板を動かす。
「…」
私が石を動かす。
「………」
店主が板を動かす。
「…」
私が石を動かす。
「……負けた。好きな品一つ持っていけ。」
「「「おお~!」」」
ギャラリーが歓声を上げる。私はとりあえずサムズアップで一言。
「グッドゲーム!」
正直ルールは何もわからなかったけど…!
「我々ケンタウロスに伝わる秘伝の占いを貴女にもしてあげましょう。」
「はい! お願いします!」
ケンタウロスの占い師が水晶越しに私を見つめる。
「ああ、なんということだ! 貴女には凶運が迫っている…!」
「ぐ、具体的にはどんな…?」
「『戦闘、報酬、素材、レア、出ない、全く出ない、レア、とにかく出ない。』とあります…! 一体これが何を指しているのか私にはわかりかねますが…」
「な、なんだと…!?」
「そんな貴女にこの幸運の腕輪をおすすめします! 貴女のような人を見過ごしてはおけない…! 三割引でいかがでしょう?」
「はい! 買います!」
――――――――――
そんなこんなで既にアイテム袋パンパンになるまで買い物しちゃった。
初心者歓迎のボーナスのお蔭で、ゲーム始めたてとは思えないほどお金がある。お蔭でフリマが楽しめる!
とはいえこのペースで買い物を続けていたらそろそろお金も危ないのでいったん退散。市場の隅の椅子に腰かける零門の所へ。
「はい、これお土産~。」
ワイバーンの串焼きをプレゼント。
「ありがとう。あ、これおいしい。」
「でしょ~? ちなみにワイバーンの肉」
「んぐっ!?」
期待通りのリアクションにひとしきり笑わせてもらった後、少し聞きにくいことをあえて聞く。
「ごめん。やっぱり無理させちゃってた…?」
「いや、大丈夫だよ。」
「そう、ならいいんだけど…」
う~ん…なんかまどろっこしい。不安とか不満があるなら何か言ってほしい。親友なんだから…
「いや、親友だからかな?」
「え?」
「あ、ごめん。今の独り言はスルーで~。」
「え~。」
少し沈黙。
「背、小さいね。」
「え?」
「ほら立って! 私と背比べ!」
「え~、いいけど…ほんとだ…」
「リアルと逆だね~。いつもは私がちょっと見上げる側なのに、今は零門が私をちょっと見上げてるんだから。なんか新鮮!」
「言われてみれば…なんだその生意気な顔は~?」
「もう少し見下ろさせていただきま~す!」
「はいはい、見下ろしてろ見下ろしてろ。いつも私が見下ろしてる側だからたまには代わってあげる」
「あ~~~! それずるい! その返しはずるい!」
「串焼きもう一本貰ってもいい?」
「自分で買いに行きなさ~い。まあ、どうしても無理だって言うのなら私が行ってやらんでもないぞよ?」
「何その口調?」
「そういう口調の商人さんがいた。狐の獣人だった。」
「はぁ? 何それ~。」
「気になるんなら行ってみなさ~い。」
またまた沈黙。今度は零門から先に口を開いた。
「はぁ…怖がってても仕方ないか!」
「お?ついに市場に繰り出しますかな?」
「あらかじめ言っとくけど、もしフリマがパニックになったり中止になったりしても文句言わないでね?」
「え、何それ気になる!」
「じゃ、いってきまーす。」
「いってらっしゃーい。」
市場へと繰り出す零門の背中を見送る。
あ、そうだ! これ言っとかなきゃ!
「お土産よろしく~! 何かアクセサリーが欲し~! 宝石たくさんついたヤツお願い~」
「あつかましい!」