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漆黒の少女
少女に連れてこられたのは、森の中の小さな家。二階建て、家の周りには柵があり、動物よけの術式が杭に刻まれている。
小さな畑とニワトリ小屋、自給自足でもしてるのだろうか。少女にひかれるがままに家の中に、小綺麗な部屋の中には、使い古されたソファがあり、そこに寝かされる。パタパタと奥の部屋に入ったかと思うと、濡れタオルと洗面器を持ってくる。身長は私とほぼ変わらない。くしゃくしゃとした黒髪ではじめは目元が見えなかった。ただタオルを額に乗せるときに、見えた瞳の色は金色穏やかな優しい瞳だった。
取り出したのは杖、魔法国の住人なら珍しくはない。だが、
「黒い、」
漆黒の杖は見たことがない。そこだけ空間が歪んでいるようだった。
宙に魔法を描いていく。杖先から光を散らしていく、その小さな光ひとつひとつに魔法が込められている。
「きれい」
夜空に輝く星のような魔法だった。
「古代魔法治癒強化」
それとと、少女の目つきが変わる
「記憶」
完全にふいを突かれてしまった。




