悪魔の契約
崩れかけた建物の中で2人は対峙していた。
「何なのだこの魔法は!なんなのだこいつは!」
妙齢の女性が着ているのは通常なら、扇情的な衣装。だが、見るも耐えないボロボロな魔法服。山高帽子はズレ落ち、片腕はだらりとさがり、その腕を血が伝う。肩で息をしている。
「・・・」
向き合うのは一人の金髪の少女。白いワンピースにはほこりひとつ付いてない。手持ち無沙汰に杖をくるくる回している。
背後には山積みになっている兵士が積み重なっていた。血だまりがひろがり、赤いカーペットが敷かれているようだった。
「私は魔法国カウンターズの零華様だぞ!こんな!こんな!!」
杖を自身にむける
「使いたくなかったが、金属化、倍加、倍加、倍加、倍加、倍加、倍加、、、!!!」
ずくずくと膨れ上がる女を静かに見上げる。その目はいたずらっぽく歪む。
「デブダルマ」
「殺す!!!!」
巨大な金属の拳を振り下ろす。少女は躱すためにひらりと下がる。逃すまいと金属を変形させる。
「はぁ、創造」
スケートボードを作り出し枝のように広がる追撃を躱す。
「想像」
杖が黒く染まる。空気が重くのしかかる。少女をまとう雰囲気が冷たく変わる。
「なんだ、この、プレッシャーは?」
「黒穴」
空間が黒く塗りつぶされる。ぞりっ
ぽっかりと空間が消え、金属の女は体の半分以上を丸くえぐられ、その場で崩れた。
「私は零華、最強の、魔法使、」
「邪魔」
杖の一振りで足のみを残して全てが飲みこまれていった。
パチパチパチパチ
乾いた拍手が天井のなくなった建物で響く。
少女はその方向に杖をむける。
「悪魔のような才能ですね。齢10ほどでしょうか」
執事服をきた羊の被り物をした男が入ってくる。
「黒穴」
「と、危ない。たとえ悪魔のような強さがあったとしても、」
「黒穴」
ぞりっと身体が斜めにくり抜かれる。
「あったとしても」
窓があった箇所から先ほどの男が入ってくる。
「悪魔にはかなわない。今はな」
「悪魔ね〜。目的は何?」
「ふははは、飲み込みが早くて助かる。俺は『零華』を守ることを契約としている。」
「じゃあ、なんで、あの女を見殺しにした」
「デブダルマが契約者なのは嫌だろう」
「はははははは、いいね、気に入った!」
悪魔と悪魔が手を結んだ瞬間だった。




