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姉の言葉
魔法はその人の人なりだ。
魔法少女が使う魔法には、必ず意味がある。性質だったり、渇望だったり、さまざまだが、必ず意味があるのだ。
私の憑依は、心のどこかで姉のようになりたいという思いや、姉を超えたいという思いがあったのだと思う。
姉の「水」の力は、ころころと表情を変え、全身で感情を表し、その才能のように、ありとあらゆるものになりうるという姉の存在そのものだと思っていた。
しかし姉は言うのだ。水は水でしかないんだよ。例え、魚が棲めないくらいの清さがあろうと、様々なものが蠢く汚水であろうと、水は水なのさ。私は私でしかない。だからーーーー
目を覚ませ
「ん?どうしたんだい」
蝶野さんが言った。蝶野さんと会うようになって、気づいたら、数日が経っていた。学校終わりに姉の道場の前で。何を話していたか、覚えていないが、とても心地よい時間だったと思う。
「ごめんなさい、今日は帰ります」
「ん、そっか、また明日」
特に引き止められることはなかったが、蝶野さんがいつまでも見つめているような奇妙な感覚が家に着くまで続いた。




