姉
蝶野さんは何も言わずただ頭を撫でてくれた。出会って間もない人だけれども、他人と思えずただただ涙が後から後から流れていた。姉と私は昔から仲が良かったわけではない。神社の跡取りとして見られているのは姉だった。私はあくまで姉の予備でしかなかった。何をやらせてもうまくやる姉に対して、私はすこし運動ができるだけの凡人だった。そんな姉を疎ましく思っていた。あんな姉がいて、こんな私。比較してくる目がただただ重荷だった。1年前姉の力が暴走して、図らずも私と力を半分にした。それは傍目に、自分が姉の力を奪ってしまったと言う感情から、自分が姉よりも優れていると錯覚するようになった。でもそんな自分を自己嫌悪するくらい毎日を過ごしていた。魔法を使うにつれて、別の何者かになっていくような不思議な感覚に襲われるようになった。気がつけば、いつの間にか自分の知らない間に古代魔法少女に体を乗っ取られるようになってしまった。不安や恐怖を感じる一方で古代の優秀な魔法使いたちが自分の体の中にうごめく感覚に酔いしれてしまった。気づいたときには、姉は消え、破壊された街の中に自分ではない者の笑みを浮かべて、立っていた。ボロボロになったほのかたちを嘲笑い、弄び、圧倒的優位の立場から優越に浸っていた。
そんな私の目を覚ましてくれたのが姉の残した魔法だった。




