若葉と蝶
その人はこちらににこやかに手を振ってきた。私は少し警戒しつつも少し手を振ってみた。
「いやぁ君は聞いてたより、ずいぶんかわいらしいね」
「えっと・・・」
「あぁ驚かしてしまったね。私の名前は蝶野。若葉の友人さ」
若葉とは私の姉の名前だった。蝶野さんはニコニコと笑顔を向けてくるが、警戒は解けない。そんな私の心を見透かしたのか。
「あぁ悪い悪い。私は君のことを若葉から聞かさせていたけど、君はどうやら僕のことを知らないようだね。君のことなら何でも知ってるよ。若葉は君にデレデレだったからね。いつもいつも後ろをついてきたり、グリンピースが嫌いだったり、封印術が苦手でよく若葉がフォローしてたり、怖い話を聞いた夜は一緒に寝てもらったりね」
顔が赤くなる。あの姉は他人に何をベラベラと喋っているんだろう。
「ははっ、さきちゃんはかわいいな。若葉の古代魔法少女の霊の半分を引き受けてたり、他にも色々聞いてるけど、やめておこうか。お友達も来たようだし」
振り返るとほのかとカレンがこちらに向かって走ってきていた。
「えっと・・・」
ふたたび振り返ると蝶野はどこにもいなかった。
「あれ?」
「ふふっ若葉。君の妹はずいぶんかわいいな」
木の上から少女達を眺め、微笑をうかべる。イヤリングを触りながら呟く。
「あ、バイク!今から降りるとカッコ悪いな、、、あ、待って持ってかないで!」