別れ
「託す…か」
肩の力が抜けたようにイザナギは呟いた。
「…時間がないな。そろそろしまいにしないとな。ほのか。記憶・真実をあんたがやりな」
イザナギは腕に集めた魔法を託そうとほのかに近づく。
「わたしはしない。イザナギちゃんがやるんだよ」
「はぁ?うちは世界を滅ぼそうとしてるんだぞ?」
「わたしは信じてる」
そういってほのかは落ちていた杖を拾い、イザナギにわたした。イザナギは自身の杖と魔法を見つめた。
じっと。
「ほのか、ありがとうな…。もし生まれ変わったなら、また話をしよう」
イザナギはぽつりと呟いた。
「え?」
「…なっはっは!救い、救われ、裏切られ、信じられ、激動の人生だった!!世界の命運は、たくしたぜ。ほのか、いや、後輩ども!!記憶・真実!!!!!!」
眩い光が広がり、ほのかの脳裏にイザナギの記憶が流れてくる。
生まれてきて、成長し、仲間と切磋琢磨し、壁にぶつかり、裏切られ、ふてくされ、奮起し、自暴自棄になり、そして、感謝した。そんな1人の生き様が、想いが、流れ込んできた。
「やっぱり、イザナギちゃんは、」
ほのかは目を開けるとそこには、誰もいなかった。彼女の着ていた服と黒い杖がそこにあるだけだった。
「ほのか…」
「…ミッキュ。分かってる。…分かってるから」
真実の魔法は全てを伝えてくれていた。
彼女は自身の記憶だけじゃなくて、転送してきた魔法国のことや拘束された人々が自治していけるようにするための方法もあわせて、送っていた。新たな土地が出現したためにおこるあらたなリスクを回避するためだ。だが、多すぎる情報は、イザナギの魔力では足りず、彼女の生命を対価に魔法を作り上げたのだった。
「イザナギちゃん」
杖をひろい、彼女の冥福を祈る。
「託された世界、悪いようにはしないからね」
「…ほのか。そろそろだっきゅ」
「…うん」
「今までありがとうっきゅ!とっても楽しかったっきゅ!」
魔神少女の制限時間が迫っていた。臨時の応急処置としての魔法も限界が来てしまった。あと少しで魔法がとける。ミッキュはきえる。
「わたしもだよ。まさか、変態な妖精と魔法少女やるなんて、思っていなかったよ」
「ぼくもど貧乳なちんちくりんとコンビを組むとは思わなかったっきゅ」
「…最後のセリフは、それでいいのか?」
「今、一体化してるから、怖くないっきゅ!っていたたたたたた!え?魂で攻撃してんの?怖いッキュ!」
「ミッキュありがとう。御神木にまた会いにいくから」
「ほのかありがとう。いつも見守ってるっきゅ!」
分身体をつくるには、時間がかかる。おそらく、今生で会うことは無いだろう。
「あばよ、相棒」
「ばいばいっきゅ。偉大で胸のちっちゃな勇敢な魔法少女。君と世界に、幸あれっきゅ」
「枝、全部むしるぞ!!」
「ミッキュっキュ!」
「あっはっはっは!」
魔神少女の魔法が解ける。
森の中、ほのかは1人。頬には、涙がながれてた。




