再戦
「記憶!翠豹」
ほのかは草木で出来た豹を撃ち出す。豹は、腹の部分から蔓を伸ばして、イザナギを捕まえようとする。イザナギは、牽制としての魔弾を放ち、距離を取ろうとする。豹の蔓はムチのようにしなり、イザナギの魔弾を交わしながら、次々に攻撃を繰り出していく。
「どんな魔法が来るかと思えば、ミッキュの技か。思い出だけで勝てるとでも?想いの強さで勝てるなら、こんなに苦労してねぇよ!記憶!炎筒」
宙に浮かんだ炎で出来た大砲がこちらに砲弾を飛ばす。横に飛びのけることでかわしたが、ほのかを焼き切るには、十分な魔力が込められている。
ほのかは飛び退いた先で地面に手を付き、そこから大小様々な種類の草の根を召喚する。根はどんどん成長し、イザナギを襲う。
「さっきまでの戦いで分かったろ?お前じゃうちには勝てないよ!記憶…赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫、赫…」
大砲が増え続ける。そして内包された魔力もどんどん大きくなる。杖を振り、赫の魔法を次々に放つ。魔法が当たった大砲は2つに分裂していく。
「底なし…なの…?」
「…なっはっは。ばぁ…か。そこまで…じゃ…ねぇよ」
荒い息をしながら、イザナギは言った。さすがのイザナギも異世界転移した後に、魔法戦が起きるとは想定していなかった。だが、それでも彼女の優位は揺らがない。
ドーム状にほのかの周りには炎で出来た大砲がならぶ。
「これで、終いだ。」
「ああああああ!」
最後の力で、幹を生やし、根を生やし、枝を伸ばしてイザナギを攻撃する。
半身をひねることでかわし、枝の一部がイザナギの頬を削る。
「この傷は餞別だ。あの世でさちよに伝えるんだな。さちよの得意とした魔法で逝けや。赫雨砲…」
だが、魔法は放たれなかった。杖がイザナギの手を離れ、クルクルと回転していく。イザナギは急に現れた手の痛みに驚く。いや、手の先で回し蹴りを決めるピンク色のぬいぐるみに目を奪われていた。
「だらっしゃらあああ!っホ!」
ほのかはその様子を見るや否や、杖を地面に突き刺し、祈る姿勢で叫ぶ。
「よくやった!ほのか!あとはまかせるっきゅ!超古代魔法…樹界百獣」
ほのかを中心に、緑の体を持つ無数の木や草で出来た動物たちが飛び出していく。
「くっ!」
杖を拾うため、かけ出すが、足元を走るうさぎや犬や猫に似せた動物たちに阻まれる。
「えいやっほ!」
杖を持って、リスの背中に乗り込む。
「あのぬいぐるみやろぅ。魔法の樹木に隠れていたか!」
謎の乱入者にぶち当てようと魔弾を作り出そうとするも、魔力が足りず、霧散してしまった。
「ほのか、どういうことだ!」
「まんまと罠に引っかかったね!」
ほのかは腕を組みながら、自慢げに言い放った。
「さぁ、吠え面かきやがれ!」




