白い杖と黒い杖
「…泣いてるの?」
潤んだ瞳の魔女にほのかは問いかけた。
「はぁ?何を言ってんだ?」
腕で頬を静かに流れていた液体をぬぐう。
「…ゴミだよ。」
「そう」
ほのかは静かに杖を構える。
「へぇ…お前も白い杖を使えるんだな」
ほのかが構えるのは白い杖。かつて、アマテラスとの戦いの時に顕現した、魔法をつくる魔法を使える、未来の杖。過去の魔法を使える黒い杖とは反対の位置にある伝説の杖だった。
「…その杖も滅ぼさないといけないな。うちの記憶対策か。たしかに、うちが見たことの無い魔法は、有効だな。だが、強い覚悟と決意、未来への希望がないとその杖は現れないはずだが」
ほのかは静かに杖を見つめる。
「ミッキュのお陰だよ。あいつは最後に、わたしに希望を残してくれたんだ。魔法少女が未来を残せるようにってさ。勝手だよね」
杖を強くにぎる。
「なっはっは。死んだか、あの妖精も。安心しな。ほのか。ちゃんと本体の御神木も焼いてやるから。」
「…あなたはわたしの世界をどうする気?」
「なっはっは。気づいたか。まぁ、ここは空気中の魔力がかなりすくないからな。…パッドを集めて、爆乳天国をつくるか…なっはっは」
「え?!行く!」
「…ばーか。なっはっは、んなわけあるかよ」
乾いた笑いに、死んだような目。その目が見開かれる。
「…そういやぁ、お前、魔力があるな、どうしてだ?わたしの張った魔法陣は例外なく魔法国全土に影響があるはずだ。並の魔法使いなら、魔力を全部絞られて、虫の息。人柱にした連中クラスの魔法使いもへばってるはずだ。ましてや、ズタズタだったお前に魔力が残るはずはねぇ。」
イザナギも杖を取り出す。漆黒の杖。過去の魔法を使うことのできる。後悔や渇望が生み出す力の杖。
「…さちよ。…アマテラス。そして、…ほのか。最後に白い杖を叩きおって、未来をすり潰して、終いだ」




