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記憶

「言ったろ?まっさらにするんだよ」


「馬鹿な!妖精界は関係ないでしょう?」


「魔法少女…」


「…」


「魔法少女は妖精界の力が必要不可欠だ。お前らも無関係じゃねぇよ」


杖を取り出し、自身の影から出てきた蜥蜴に向ける。


「…異世界転移で魔力の少ないあなたが、わたしに勝つおつもりで?」


蜥蜴は黒い霧を体に纏い、魔力を練り出そうとする。


「な?」

だが、足に力が入らず、身体がよろめく。訳が分からないという顔つきの使い魔に、のんびりと魔女は言う。


「あー。さっきの魔法。お前ら、妖精も、例外じゃねぇよ。」


「なぜだ。魔力は吸われなかったはず。それに先程大鹿を仕留めたのだ。魔力量はやつをもこえるはずだ!」


「なっはっは!おめでたいやつめ」


もっとも、と彼女は杖を横にふる。空間が裂け、なかからボタボタと液体をしたらせた塊が地に落ち、べちゃりと音を立てた。


「心臓をくりぬかれたお前が魔力を感知するなど、片腹痛いぜ」


「なっ!」


「古代魔法・切り裂き(リッパー)。心臓を音もなく、痛みもなく、気配もなく、くり抜く魔法さ」


蜥蜴の身体はボロボロと崩れ落ちる。


「魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女!この魔女がああ!」


影を幾重にも伸ばすが、魔女に届くことなく崩れていく。


「影に帰りな。お前のことは忘れないよ。わたしに大鹿の魔力を届けてくれたんだからな。超古代魔法・原初記憶(ザ・メモリー)。こいつは、相手の記憶を全て奪うことができる。おまえと大鹿の記憶を全ていただくよ」


「妖精…界…をどうする…気だ…」


もはや、ちりと化した中、最後の力を振り絞って問う。


「さてな。それは…」

彼女は言葉を止める。


「記憶しだいだ。」



彼女は記憶を探り始めた。



「大鹿よ!大鹿よ!」

「なんですか?黒蜥蜴さん。あなたが珍しい」

「俺にもパートナーができた」

「…人間に使われ潰されるだけですよ。やめた方がいい」

「人間のガキだが、見込みがある!いつかあんたと並び立つ神になる」

「情がわくとめんどうです。やめておきなさい。わたしは世界のバランスを守っているだけです。人間と付き合うのはやめなさい」

「魔力が高まるのを感じる。人間は電池だ。道具だ。情などわくか。くだらない。」



「大鹿よ!なぜだ!大鹿よ!人間はなぜこうももろい」

「どうされたのですか?」

「アイツが死んでしまった。」

「人間は寿命が短いから、仕方ないですよ」

「ちがう。仇をうってやる。あの子を殺した国を滅ぼしてやる。」

「情に溺れるな。蜥蜴よ」

「貴様に何が分かる。たかだか長く生きた木の癖に」


「大鹿…貴様…人間と」

「ガッハッハッ!なぁ、ミッキュ?知り合いか」

「…旧い仲です」

「お前が、今まで、全部、仕組んで!」

「妖精界は知られてはならない」

「なら、おまえは、なんだ!知ってるぞ!わたしを恐れ、人間に泣きついた!その後人間にいいように利用されたんだってな!!」

「ガッハッハッ!あたしは泣きつかれてないぞ?」

「黙っててください。蜥蜴。あなたを真似て、飛び出た妖精たちが契約を重ね、世界は魔法少女大戦となった。この世界は滅びてしまう」

「滅びるなら勝手にほろびろ。あの子のいない世界など」

「神の1柱なら、責任をとれ!」

「ガッハッハッ!こいつが。アマテラスの姉ちゃんの元パートナーか」

「?!生きているのか?!」

「いんや!生まれ変わりだ。もっともアマテラスと違って、前世の記憶はないがな」

「会わせろ」



「さちよ。こんなことしてもなにもならないっきゅ。やつのパートナーとは魂が同じでも、中身がちがう」

「いいんだよ。イザナギさんにしろ、蜥蜴にしろ。心の支えは必要さ。特に愛情深いやつはな」

「愛情っきゅ?よく分からないっきゅ」

「愛情は全部が全部尊いわけじゃねぇ。ときにとんでもない闇を運ぶことがある。互いに見てるものが違うにしろ。大事なものなくしたもんどおし仲良くやるだろう。ガッハッハッ!」

「…アマテラスが大戦を終わらせるッキュ。たくさんの妖精が死んでしまったっきゅ」

「魔法少女たちもな。あたしの魔法もイザナギの魔法も禁呪にするらしい。まぁ、当然か。無限に成長をとげる魔法と、いくらでも他人の魔法を使えてしまう魔法があると、社会をつくるのに邪魔だからな。」

「…どうするつもりっきゅか?最高の魔法少女を」

「ガッハッハッ。どうもしねぇよ」


「さちよ!!無理しすぎッキュ」

「イザナギぃ!記憶(メモリー)を使いすぎです!記憶を喰われますよ!」

「わらわに逆らうとは、共に戦って生き延びた中じゃろ。悪いようにはしないぞ」

「なっはっは!妹が悪い道にいったらぶん殴る!ウチの役目だろ」

「ガッハッハッ!さすがだぜ!イザナギさん!あたしも同じ気持ちだぜ」

「…おろかな」



「…どうするつもりっきゅか?」

「…お前を見てると腹がたちます。わたしを殺しますか?」

「わりぃな。カウンターズとして、魔法少女として、見過ごせないぜ。お前たちの企みを」

「なっはっは!カゲぇ!!!わたしは世界がにくい!なっはっはっは!!粛清して何がわるい!!!世界はこんなにも黒いのに」

「どこまでもついて行きますよ。わがパートナーイザナギ」



イザナギは目を開ける。

「…お邪魔したかな?貧乳の誓いを果たしにきたんだけど」

「なっはっは…わりぃな。世界を終わらせる前に物思いにふけってただけだ。」


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