ミッキュ
「…きゅ!…きゅ!」
意識の遠いところから声がする。ほのかは全身の痛みをこらえながら、ゆっくりと目を開けた。
「いい加減諦めたらどうだ。お前じゃうちを倒せないぜ」
心底けだるそうにイザナギは言った。
「…わかっているっきゅ!緑豹!」
青年の姿になったミッキュが吐き捨てるように言った。ミッキュの出した草木でできた豹は、イザナギの奮った杖で焼き捨てられた。
「さちよとペアの時は、もう少しマシだったのに。そんな魔力の弱っちいガキと組んで、本来の力の半分も出せないだろ」
「だまれ、だまれ、だまれっきゅ!!」
幾重もの蔓を伸ばして、イザナギに攻撃する。
「ほのかは弱くないっきゅ!いつでもどんな時でも決してあきらめない強い心の持ち主だっきゅ」
「なっはっは!強いのならなぜそこでくたばっている」
「必ず立ち上がるっきゅ!」
「盲信するのは構わないが、その期待は相手を押しつぶすぞ」
やめて、ミッキュ。私はもうそいつとの力の差がわかってしまった。私では絶対にそいつに勝てない。私よりもはるかに大きな魔力を持ち、頼みの綱の魔法も通じない。
「盲信じゃないっきゅ!僕たちはペアっきゅ!片方が倒れそうな時はもう片方がぶん殴ってでも正しい道を歩ませるのがミッキュ達だっきゅ!」
「綺麗事だな、そいつは」
「きれいごとじゃないっきゅ!例えば、そう、例えばミッキュが女風呂覗こうとしたときには、殴り飛ばしてくれた。えっと、その、女の子の胸を揉もうとしたら、握りつぶしてくれたっきゅ!」
もっと、こう、あるだろ。
「なっはっは!とんだペアだな」
「そうだっきゅ!どんなにミッキュが道を踏み外しても、決して見捨てることなく付き合ってくれた。今度はミッキュの番だ。どんなにお前が強くても、どんなにお前が格上でも関係ない。ほのかを必ず生きて元の世界に返してやるんだ。そしていつかお前を越えるんだ。そのためにミッキュは命をかける。それが落ちこぼれてしまった神の最後の仕事だ。ミッキュは決して相棒を見捨てたりはしないっきゅ!」
「なっはっは!」
「ほのか!!」
彼はパートナーに呼びかける。
「今までお世話になったっきゅ!。今はくじけそうな気持ちになってるかもしれない。でも、君なら大丈夫。必ず立ち上がれる。神様であるミッキュが保証してあげるっきゅ!」
「…み、っきゅ?」
意識を取り戻したほのかに少し安堵の表情浮かべる。
「なっはっは!力を失った元神様に何ができるって言うんだい」
「何が、出来るかだっきゅ?」
ミッキュは再度木の蔓を召喚する。
「…吠えづらかかせてやるッキュ」




