イザナギのキャンプファイヤー
「やっぱり大自然の中のキャンプは最高だぜ。肉が焼ける匂いとかさいこー!!」
森の中に黒い煙と焦げた匂いが広がる。
彼女は燃え上がる炎に目を輝かせ、踊っていた。胸と腰周りには葉っぱを巻き付けて、溢れんばかりの胸を大きくゆらす。
「なっはっはっは!!燃えろ燃えろ!!」
「…イザナギ様」
人影は1人だけ、だが、聞こえてくる声は2人分だった。ダンスの動きを止めずに会話を続ける。
「おいおいおいおい!うちは今、絶賛キャンプファイヤー中だぜ?キャンプ中のキャンプファイヤーを邪魔するなんて、神様に失礼だろうが!お前は覚悟できてんのか?あぁ?!」
「…国を焼くことをキャンプファイヤーとはいいません。おやめ下さい」
彼女の前には崩れた城壁と全壊してしまった城がある。まるで丸ごとくり抜かれたかのような破壊痕と燃える炎の紫色の不気味な光が、彼女の顔を映し出す。
爛々と光る黒い瞳に、赤い髪。
「なっはっは!いいじゃねぇか!所詮小国、魔力も大したことねぇ。ゴミクズども、いてもいなくても構わねぇだろ?」
「それでは、税や魔力が集められません」
そうかと彼女は言うと、軽々と城跡を登り、垂れ下がった1本の銀色のチューブを掴む。
「むん!!」
ぼっこりと銀色のチューブが膨れたかと思うと、その中身はどこかへと消えていった。かのチューブは、魔法国本国へとつながる魔力の流道。通常は1年かけて、国民の魔力をあつめ、税と一緒に収めるもの。
「なっはっは!これで数年分の魔力は大丈夫だろ」
彼女はにかりと笑った。
「まったく、恐ろしい方だ。」




