準決勝
「悪いけどさっさと終わらせてもらうよ!」
ほのかは準決勝の相手に杖を向ける。
見た目はおっとりしたお姫様って様子だけど、わたしは見た目で油断したりしない。かつての仲間たちが心配だ。優勝の副賞は彼らの免罪にしよう。
「4大貴族のわたくしを前に考え事とは随分な余裕ですね」
会場はほのかへのブーイングと、相手への歓声で満たされていた。
「無能を庇う恥知らずに死の鉄槌を!」
「格の違いを見せつけて差し上げて!リリィ様あ!」
「乳の違いを見せてやれ」
「さっきの野次だれだ!ボケェ!!」
リリィと呼ばれた彼女は緑の長い髪をいじりながら、杖をゆったりとほのかに向ける。魔力がこれまでの相手と段違いだ。
「あなたに恨みはないけど、さっさと勝たせてもらうよ」
試合開始と同時にローブを脱いで、魔法を一気に叩き込んで試合終了だ。だけど、正体がバレたら、わたしは死刑。
「恨みはあるはずよ、だってあなたの仲間は私が捕まえたんだもの。」
「え…」
「ねぇ…ほのか?」
優しくにっこり微笑む姿に呆然とした。
「試合開始ぃ!!」
「緑、緑、緑、緑豹」
「ちょ!」
意表をつかれて出遅れる。足元から生えだした蔓が豹を形取る。歓声が大きくなる。その間も蔓のムチが次々に飛んでくる。
「盾!」
「無駄ですわ」
薄っぺらな紙を裂くように蔓が縦にわる。盾単体では一切意味をなさない。苦し紛れに。魔力を足に込めて、土を蹴りあげて、土煙をあげる。
とりあえず、隠れて、体勢をたてなおさないと。バックステップをとるほのかにいくつもの蔓が襲いかかる。くそ、向こうからは見えないはずなのに。魔力感知か!
「だったら、炎、炎!狐火」
ほのかの杖から炎が出て人型を形作る。魔力を読んで、攻撃を繰り出していたが、魔力が分散して狙いが定まらない。
「…やりますわね…でも、当たりが出るまで攻撃するだけですわ」
違う、違う、違う、これですわ!最期のひとつに向けて魔力を集中させる。
「緑の鉤爪!!!」
最後のひとつをいくつもの蔓が裂く。が、
「いない?」
手応えがない。
「きゃっ」
足首を捕まれ引っ張られる。
「お高くとまりやがって!揉みしだいたらあああ!」
「ちょ、やめなさいっ!ちょ、いや!」
「ヒャッハー爆乳乳絞りじゃああああああぁぁぁ」
「ぽ、ポロリといってしまいますわ!!」
レフェリーが止めにはいる。
「ストップ!ストップぅ!伝統ある大会をなんだと思っているんだ」
「じゃかましい!!」
マイクを奪い取る!!
「全員かかってこいや!!!!」
コロシアムは一瞬静まり返った。
一瞬だった。




