商店街
破魔市の商店街は、昨今の情勢と異なりかなり賑わっている。立地があまり良くないせいか大型のスーパーなどはなく、昔ながらの商店街が未だ活気に溢れている。少々建物古びているが、店主たちの目利きは確かである。大体の生活用品は揃うため私もよく活用している。
「よう、ほのかちゃん買い物かい?サービスしとくぜ。」
「え〜いいんですか!?」
恰幅の良い肉屋の店主が豪快に笑いながら言った。エヘヘ、ラッキー。声が若干ぶりっこする。
「おまけにこのラックさんの似顔絵焼印付きのコロッケをおまけするぜ」
コロッケの上には、キザな表情の占い師の顔が焼かれていた。
「あ、ありがとうございます」
なんというか複雑な気持ちになったが、コロッケをありがたく頂戴する。まぁコロッケに恨みは無いわけだし。
「占い師様様よ。このコロッケを発売した途端女子学生にバカ売れでな。」
昔懐かしの商店街のふいんきは今はなくどこを言っても占い師の顔がちらつく。
「タピオカドリンクラック様チョコレート付きだよ」
「幸運ブレスレットラックモデル入荷」
「ラック様クラッカー発売中」
至るところに占い師の顔顔顔顔!なんだか落ち着かない気分になってしまう。同じく帰り道の女子学生たちはキャーキャー言いながらそういった商品を買っていく。女子高生だけではない主婦やおばあちゃんまでラックとなのつく商品を買っていくのだった。
「おーいあんたおいお前だよポニーテールの」
不意に呼びかけられた。声のほうに振り向くと店と店の間に細い路地道があった。そこにはかわいいなテーブルの上に水晶玉を置いてフードかぶった女がいた。
また占いか。正直もう占いがお腹いっぱいだ。聞こえないふりをして達だろう。そうだそれがいい。
「今日の夕飯はなにかなぁカレーかなぁハンバーグかなぁそれともそれともさきちゃん特製の青椒肉糸かなぁ♪」
そうだ忘れよう。変なのには関わらないのが1番。占いなんてものは統計学と誘導尋問によってなんとなーく当たるようになってるんだよ。
「デザートには、プリン。ぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷるプリン♪プププププププリン♪ぐへ」
上機嫌で歌を歌っていると不意に背中を衝撃が襲う。ごとんと言う音がして、足元を見てみると大きな水晶玉が転がっていた。
「無視するんじゃねーよ子娘が」
投げ終わった後の姿勢で鼻息荒く先程の占い師が言い放った。私と同じ年頃のはずなのに小娘とは心外である。足元に転がった水晶玉を拾い、つーかこれめちゃくちゃ重たいな。腹が立ったので思いっきり投げ返した。
私の目には水晶玉がゆっくりスローモーションで映っていた。運動がそこまで得意ではない私にしては、華麗なフォームで投げたように思う。
占い師は目を見開き、横に思いっきり飛び逃れる。そんなめちゃくちゃビビるようなものを私に投げつけたのか。と、私はまた腹が立った。
だがそれは私の想い違いであった。
投げつけた水晶玉は狙いを外れ、路地裏に吸い込まれていった。直後爆風と爆音が商店街を駆け抜けていった。
「ふぇ?」
悲鳴や怒号が飛び交う。間一髪直撃を免れた占い師はフードを外して、その真っ赤な髪を揺らしながら近づいてきた。私の胸ぐらを掴んで引き寄せる。目と目が合った。その瞳は右と左で違う色をしていた。
「バカヤロー。こんな街中で魔力を込めてぶっ放すバカがいるか」
魔力何を言ってるのこいつは?
「お前ロックだな!がっはっはっは!気にいったぜ。お前をあたしの弟子にしてやる」
へ?!




