さくらとさきとわかば
「とりあえずかおりちゃんの傷は治したよ」
「サンキューな、さくら」
弱々しくも、かおりちゃんは微笑んだ。二人はしばらく見つめあっていた。
「さっきの白い穴は?」
「ワームホールだよ。奴の反転術式を利用させてもらった」
「反転術式?」
「アホなほのかにもわかりやすくいうと、正反対の魔法っきゅ。火には水みたいな。もっとも、他人の術式をさらに上書きするなんて芸当なかなかできないっきゅ」
「一言余計だってーの」
ミッキュ の頭をはたく。ギリギリわかった。たぶん。
「龍咲神社か、ここか、賭けだったが、全員が同じ場所に出られてよかった。」
「どうしてその2つなんですか。」
「破魔市には、3つの大きな魔力のポイントがあるのよ。魔法国の関係者でそれらを守っているの。 3つのポイントはそれぞれ強大な魔力の絆で結ばれていて、緊急手段としてワームホールを開くと残りの2つの場所に転送されるようになっているの」
さくらちゃんの顔をまじまじと見つめる。と言う事は
「ごめんねみんな。私は最終決戦の後に記憶を失っていないの。もともと魔法国の出身だから」
「どうして教えてくれなかったんですか。」
しばらくさくらちゃんはいいあぐねていたけど、おもむろに口を開いた。
「私が元カウンターズだから。最終決戦の後に魔法国で功績を称える式があったでしょ。あそこには、カウンターズが出席する予定だったの。つまり、」
「若葉姉ちゃんに剣道の稽古をつけてもらったっていうのは嘘だったのかよ」
さきちゃんがさくらちゃんをにらみつけた。
「・・・そうよ。若葉さんとは仕事仲間だったのよ。荒事の仕事も多かったから、お互いの技術を教えあったわ。」
「じゃあ、蝶野のことも知っていたのか!」
胸ぐらを掴みかかる。
「オイ!さき!」
「・・・知らなかったわ。本当に気の毒に思う。」
「て・・・めぇ!!」
拳を作り、殴りかかろうと振りかぶる。しかしながらその拳は届くことなく、代わりにさきちゃんの頬を殴った。
「ごふっ」
「やめないかみっともない。私は私の失敗で死んだんだ。」
さきちゃんの口がひとりでに動き出す。
「そこに恨みも後悔もねーよ。」
「ま、まさか若葉ちゃ」
「久しぶりだな。さくら。・・・オラぁ」
唐突に、さきちゃん=若葉さんがさくらちゃんに張り手を食らわす。
「お前もわざわざ悩むな。お前がもし間に合っていたとしても、私やお前じゃぁ、一には勝てなかっただろう。死んでしまった私を思ってふさぎ込むな。もしも私を思うなら、こいつらに力を貸してやってくれ。悪い、あまり長くは出てられないんだ後は頼むぜ、相棒」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、・・・ありがとう」




