魔法少女かおりリターンズ
「断る」
「へ?」
「いや、だってアタシらは受験生だぞ。たしかに記憶を返してもらったから、さっきみたいに疑わないが、受験勉強と魔法少女の両立は無理だ」
記憶を取り戻してもらうために、町内を駆け回った追いかけっこの結末は残念なものだった。てか、魔法なしにどんだけ運動神経いいんだよ。
「か、かおり先輩勉強するんすね」
「どういう意味だよ。さき!」
「てっきり、先輩マグロ漁か、流れの魔法少女でもやってみるのかと」
「やるか」
元私たち魔法少女隊のリーダーだったかおりちゃんは数ヶ月前と同じ姿を見せてくれた。いるだけで安心感の生まれる屈託ない笑顔。赤みがかかった茶髪にエメラルド色の瞳。さちよさんの家系なだけはある強い魔力。まぁ、記憶を取り戻してくれたおかげで、少なくとも通学路で見かけて、気まずくなることはない。
「そこをなんとか!」
「たのんます!先輩!」
「まぁ修行とかのサポートくらいはしてやってもいいんだが、」
「え?」
「まじっすか!!」
ここで反応が分かれたのはかおりちゃんの特訓の経験があるかどうかだ。今のさきちゃんのリスペクトはあっという間に消え去るだろう。地獄の特訓メニューがある。それは勘弁してほしい。やめて、キラキラした目でこんなチャンスないわって目で見ないで!私さきちゃんのこの瞳が曇るのを見たくないの!
「あ、アイツには声をかけたのか?」