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とにもかくにも私は、一番最初の入口から大きな失敗をし、それを取り返すことも出来ず地獄の日々を過ごすはめになったのだ。
由梨が私に対して、ひどく冷たく当たったのか?
けして、そうではなかった。
妻は私に、おそらくは世の中の夫婦並みの敬意は払ってくれた。
想像でしかないが見合い婚の場合は最初のうちは、こんなものではないかという接しかただ。
そこから二人が共に過ごす時間がお互いの距離を縮めていき、本当の夫婦の絆へと育まれていくのではないだろうか?
だが、私は満足できなかった。
醜い私に向ける、どこかぎこちない妻の笑顔ではなく、三島のパーティー会場で親しい人たちに見せていた温かい春の日差しのような笑顔を渇望した。
私が狂おしいほどに妻に寄せる愛情と同じものを妻から私に返して欲しかった。
朝、同じベッドで目覚め私が仕事へ出るまでの間、仕事が終わり私と食事を済ませる間、そしてベッドに入り私そのもので妻と直接繋がる間、その後でお互いに眠りにつくまでの間、全ての瞬間において私と同等の濃度、密度、深度をもって愛して欲しかった。
私は頭が、おかしいのかもしれない。
愛によって狂っているのかもしれない。
こんなものは愛ではないという人も居るだろう。
身勝手な独占欲だと。
人の心を支配は出来ないと。