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早くに事故で父親を亡くし、今は祖父と母親と3人で店を切り盛りしている。
「しかし、どうやら最近は上手くいっていないようだ。店が潰れかけているらしい」
三島が言った。
「君は彼女が気に入ったのか?」
三島の問いに私は顔を赤らめた。
「そうか。女性に関して奥手な君にも、ついに春が訪れたのか」
三島が笑った。
図星だった。
前述の通り、私は「お坊ちゃん」として普段は悠々と貴族の如く生きてきたが、こと女性に関しては、それは当てはまらなかったのだ。
私の財産、正確には父の財産を狙って私に近づこうとする女は山ほど居た。
そういう金目当ての女たちとなら、いくらでも浮き名を流せただろう。
だが私は、そういう女たちに興味が湧かなかった。
父の愛人を何人か見てきたからかもしれない。
嫌悪すら抱いていた。
私は女たちを遠ざけ、しつこい者は散々にやっつけ、追い払った。
その経緯から私はこの歳まで、まともに恋愛をしたことがなかった。
「僕が取りなしてやろうか?」
三島が言った。
私は頷かなかった。
何故か?
三島を頼るのは嫌ではなかった。
三島は友人だし、彼のからかいは本気で私を傷つけるには及ばない。
彼女を手に入れるためなら、三島に土下座だって出来た。
私は自信が無かったのだ。