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三島のパーティーで妻を見た私は一瞬で恋に落ちた。
彼女は小柄でかわいらしく、大輪の花のような派手な美しさはないが、何とも言えない愛嬌を持っていて、見ているだけで心が自然と温まる女性だった。
私は他の出席者たちと、にこやかに談笑している彼女を食い入るように見つめ、片時も眼を離せなくなった。
もしも見失い、2度と逢えないなどということになれば私の人生最大のしくじりとなってしまうだろう。
私は呼吸すら忘れ、彼女の容姿、仕草、一挙手一投足を脳髄に刻み込もうと全身全霊を傾けた。
「おい、中村!」
耳元で三島の大声がして、私は驚いた。
周りの人々が三島を見て、すぐに元の会話へと戻っていく。
「どうした? さっきから何度も呼んでるのに上の空じゃないか?」
三島が言った。
「具合でも悪いのか?」
私は首を横に振った。
その間も彼女から眼は離さなかった。
「あ、あの…」