17/18
17
いや、彼女は今日は私用があると言って休んでいる。
外泊し、明日の昼までは帰ってこないはずだ。
では、なおさら今、私の背後に立ち両肘の部分を掴んでいるのは誰なのか?
その人物は妻の首を絞めている私の手を異常な怪力で引き剥がした。
妻が呼吸を取り戻し、苦しそうに何度も咳をする。
私の腕を万力の如く押さえたまま、背後の人物が身体を回り込ませ私と妻の間へと入ってきた。
目前に現れたもの。
それは人ではなかった。
もやもやとした煙のようだ。
黒い。
真っ黒な煙が常に流動し、しかし、それでいて人の形を造っているのだ。
何と言えば良いのか。
黒い人影のようにも見える。
それは、そいつの両腕で私の両腕を拘束しつつ立ち塞がっている。
何なのだ、これは!?
咳き込んでいた妻が落ち着きを取り戻し、私の顔を見た。
今まで見たことのない激しい憎悪の表情。
やはり。
やはり、妻は隠してはいたが、内心では私を憎んでいたのだ。