反逆の開幕
アクネリアは何を考えているんでしょうね?
「ということがあってね...今じゃ、追われる身になっちゃったわけなんだ...」
亜輝菜様は机に肘をついて困った表情を私に向けて、アクネリアの愚痴を言い始めた。
「アクネリアのせいで私、指名手配もされたし...爆奏の令嬢とかいう嫌な通り名まで付けられてさぁ~もう、最悪を通り越して災厄だよ!!!」
「つまり今の状況は、亜輝菜様はアクネリアさんの人格と一緒に生活していて、日本で生活していたことを知っている者以外が居る所では過激なアクネリアさんの人格で行動してしまうため、人への冷めた対応や砦の爆破などをしてしまい、こんな状況になってしまった...と、いうことですね?」
亜輝菜様は、私に向かって、激しくうなずいた。だが、不思議なことに亜輝菜様からは恨みの感情を感じなかった。
「だけどね...アクネリアは悪い子じゃ、無いと思うんだ!」
「?...どういうことですか?今聞いた話だとかなりの危険人物だと思いますが?」
「そうだね...確かにやり方は少し間違ってるとは思うけどね!......でも私、ずっと一緒にいたから何でこんなことしたか解るの!多分アクネリアはこの国を変えたいんだと思う!!」
「国を変えたい?...それはどういったこ―――――――
私が訊ねようとしたとき、それは慌ただしく開かれた扉の音で遮られた。
「爺や?...何事なの、今私は客人と話の最中なのだけど」
「お嬢様!!て、帝国軍が攻めてきました!!人数は確認できる範囲で......三百人いるかと!」
私はその言葉を信じられなかった。
「三百人?たかが少数の反逆者にそんな大数を送り込むとは到底考えられないのですが」
「いえ、妥当ですよ、私たちの力量にあった適切な人数で来ています」
そう冷めた口調で言い放った人物の顔はさっきまでのよく知る亜輝菜様のものでは無く、彼女はもう爆奏の令嬢と化していた。そして、私はそのアクネリアに怒りを覚えたのだ、何故なら己にとって一番大切である亜輝菜様を危険にさらしたのは、ほかでもないこの女だからだ。
「三百人を相手することが貴女にはできると?...ふざけるのはやめて貰えますか、その体は貴女だけのものじゃないので!」
するとアクネリアは睨んでいる私の顔を見て笑った。まるで私が冗談でも言っているかのように。
「なにがおかしい...」
「では、貴女も戦ってくれるのですか?この体を守るために」
この言葉で、私は今更気付いた。私はどうやらアクネリアという女を、甘く見過ぎていたらしい。私は既に彼女の駒となっていて、彼女からはもう逃げられない。何故なら、私は主を人質に取られて
しまっているからである。
「...当然、亜輝菜様のためなら私は戦う、貴女の体のためなら...ね」
その私の言葉を聞いたアクネリアは、少し嬉しそうに見えた。
「そうですか、では戦うにはお互いこの服では良くないですね着替えましょうか」
アクネリアはそう言うと指を鳴らした。すると、アクネリアと私の周りを囲うように四つの光が現れた。
「こ、これは?」
「衣服を変える魔工陣というものです、数秒で済みますよ」
四つの魔工陣は激しく発光し、私はあまりの眩しさに目をつぶった。数秒った後目を開けてみると、アクネリアの服装が軍服の様なものに変わっており、私自身は袴と西洋の騎士の服が融合した様なものに変わっており、腰には先ほど亜輝菜様から託された二本の剣がさげられていた。
「これで戦えますね!どうですか、気に入りましたか?デザインは私が考えたんですよ?」
「少し派手ではないですか?この飾りは不要では」
「良いんですよ、細かいことは!要は気持ちが高ぶれば良いんですよ」
私は案外、アクネリアと亜輝菜様は似ているんじゃないかと思った。
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~アクネリア嬢隠れ家前~
「屋敷の様子はどうだ、なにか反応は?」
「いえ、今のところは特にありません!」
この屋敷に爆奏の令嬢がいると分かったのは、ほんの数日前であの砦爆破事件から約一年探してやっと見つけたのだ。
「まさか...自分の家の別荘を丸ごと闇属性の魔工術、“ミラー=ミスト”で隠すなんて化け物染みたことするなんてな、しかも一年間続けてだ、一体どこにそんな魔力を蓄えているんだか」
ミラー=ミストは本来、光を打ち消す性質がある霧を己の周りに発生させ姿を隠す魔工術で、暗殺や潜入によく使われる。使用難易度はかなり低く、闇の魔工師で使えない者は居ないと断言できるほどだ。
......だが、爆奏の令嬢はそれを屋敷全体に覆わせるという、荒技をしたのだ。
「隊長!屋敷の門が開きました!!」
「遂に、登場か...爆奏の令嬢!!」
俺は屋敷の門の方に目を向けた、門は音を立てながら開いていった。そしてその門の向こうにいたのは予想外の人物だった。
「なんだ、あの女は?」
門の向こうに立っていたのは、爆奏の令嬢ではなく、一人の剣を二本提げたポニーテールの少女が立っていた。すると、その少女が喋りだした。
「大変不本意だが、アクネリア嬢から帝国軍を蹴散らせと言われている!!だから諸君らには悪いが......倒されてほしい。」
その意味不明な発言に俺は大声を出しながら笑った。
「お前、この人数を一人で相手にするなど正気か?」
「正気も何も、アクネリアからそう頼まれている、それに私は一度引き受けた事は絶対に取り消さない」
そう言うと少女は腰の二本の剣を抜き、左の剣を逆手に持ち替え構えた。
「私は正気だ、疑うのは勝手だが......私はやるぞ?」
戦闘シーンは自信がありません!上手く書けるでしょうか...