風雷の予感
少し、間が空きました...
すいません。
「......あの、亜輝菜様?」
「うん?な~に、まさとちゃん!」
「そろそろ離して下さいませんか...」
亜輝菜様との再会で思わず抱きついてしまったが、もう30分近く抱きついたまま離れて下さらない。
「ダメだよ、離さない!だってさ、まさとちゃんからしてみれば五年かもしれないけど...私は十八年間も会って無かったんだよ!?だから、ダメ」
「で、ですが...流石にこのままでは困ります!」
(どうしたらいい?この状況を!)
私は、亜輝菜様が自室に招いたわけを聞いていなかったことを思い出した。
「あ、亜輝菜様!そういえばッ私を呼んだのは真実を伝えるためだけだったのですかッ!?」
そう私が叫ぶと、亜輝菜様は「あっ忘れてた...」っと発言して咳払いをしたのちに席に戻られた。
「ま、まぁ、思い出したことだし!で話の続きをしようかなぁ...」
「思い出したって!私が言わなかったら、ずっとあのまま抱きついてるつもりだったのですか!?」
「そこは...まぁね、しょうがないじゃん!さっき言ったみたいに十八年間会えなかったんだもん!そこは、御咎め無しだよ!?...ね!まさとちゃん!」
亜輝菜様は私に説教をされるのを怖がっているようで、目を捨てられた子犬の様にこちらを見てきている。私も亜輝菜様の鬱陶しさに怒ろうとしていたがその眼に負け今回は止めた。
「わかりました。今回は許しますが次からは出来れば控えてください!この歳で抱きつかれるのは...その、恥ずかしいですから」
私が少し頬を赤らめて言うと、亜輝菜様は顔を傾げた。
「えっ?でも最初に抱きついてきたのは、まさとちゃんだったよね?」
「うぐッ!そ、それは...その場の勢いと言いますか...。
...そんなことより!話の続きは何なんですか!は、早く聞かせてください!」
「まさとちゃん、話のそらし方下手だね。でも、まぁいいよ普通に嬉しかったから!」
亜輝菜様は、さっきまでの笑顔から一転して真面目な顔で話の続きを始めた。
「じゃあ、私たちの今後の予定というか方針について、まさとちゃんに話そうかな。でもその前に、プレゼントをあげないとね!」
すると亜輝菜様は立ち上がり、いつも寝ているであろうベットの横に立てかけられていた二つの物を持って私の前に置いた。
「亜輝菜様、この布に巻かれた二本の物はは一体...」
「さっきも言ったけど、まさとちゃんにプレゼントだよ!その布ほどいてみてよ」
私は言われた通りに二本あるうちの片方を手にとり、巻かれていた布をほどいていくそしてあらわになっていく中身を観て私は思わず声を上げてしまった。
「こッ...これは!!私の家、九条寺家に代々伝わり雷神を切り裂くとされる刀!?
“鬼刀 雷絶”ではないですか!?どうして、この世界に?」
「ふっふっふーーッそれは、召喚したの!」
「召喚...ですか?」
私が首をかしげると、亜輝菜様は自慢話をするような顔で話し出した。
「まさとちゃんをこっちに召喚する儀式の応用でやったんだ!と言っても、まさとちゃんを召喚した時より簡単だったけどね!でさ、どうやってやったか聞きたくない?」
「いえ、召喚の仕方については興味ないので聞きかないです...」
「そんな...冷たい」
落ち込んでいる亜輝菜様は放っておいて、私はもう一本に目をやった。
「亜輝菜様このもう一つの物は何ですか?」
「あぁそれね、それはこっちの世界の物だよ!そっちも布、取ってみてよ!」
私は持っていた雷絶を丁寧に机に置いて、もう一方に巻かれた布をほどいていった。すると、その布の中には、西洋の剣が入っていた。
「亜輝菜様、この剣は何ですか?見たところただの剣ではなさそうですが」
「それは、こっちの私の家...つまり、アルナート家の宝剣!
“風神殺・アウケラル” 風の神であるフルーサを切り裂いたと言われてるんだって!」
「つまり今、私の前には風神、雷神を殺した二本の剣を貰ったということですか...なんか、嵐の日は外に出ない方がよさそうですね...」
私はなにか、嫌な予感がしたが気にしないことにした。そしてこの二本の剣が意味することが、ただ一つであるということも気が付いた。
「亜輝菜様...この二本を渡すということはつまり、近いうちに“ある”ということですね...」
そう私が聞くと亜輝菜様の顔からは笑顔が消えて、私の知っている無邪気な顔は野心を持った瞳の一人の少女、つまりアクネリア・コネット・アルナートになっていた。そしてアクネリアの重そうな口から発された言葉は、私の想像したどうりの言葉だった。
「そう...近いうちにまさとちゃんには、その剣で戦ってもらうことになるね...」
「そうですか...ですが、なぜそんなことになったのですか?亜輝菜様はこちらの世界では令嬢なのですよね?普通では戦いに巻き込まれることは無いのでは?」
亜輝菜様はより一層、顔を曇らせた。その顔を見て私は、今の状況が簡単に済む状況ではないことを悟った。そして亜輝菜様は不可解な発言をした。
「私が戦わなきゃいけないのは、もう一人の私...アクネリアが自分の義妹と、帝国の王子が恋をしていることに気が付いた事から始まったの...」
「えっ?意味が分かりません!?アクネリアはこちらでの亜輝菜様の名前ですよね?今の話からだと、アクネリアという別人がいるみたいじゃないですか!」
「う~~ん、正確に言うと“別人”じゃなくて、“二重人格”かな...」
亜輝菜様から出た“二重人格”という言葉に、私はより困惑した。
「余計わかりません!?説明してください!」
すると、亜輝菜様は一回大きな息を吐くと自分がこうなった経緯を説明し始めた。
「あれは、私がこっちに生まれてから八年経った日...つまり、アクネリアの八歳の誕生日...」
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亜輝菜とアクネリア、二人は同一人物でも全くの別人...性格も、感情も違います。
そしてこの話のタイトルにはアクネリアの―――――。