表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/43

4人の大賢者と戦争の気配

 俺はクロマグロをスーモイにあげると、急ぎ村へと向かう。


 村の付近には、噂を聞きつけた荒くれ者たちが集まっていた。


「どけ!」


 という時間ももったいなかったので、荒くれ者たちが俺とぶつかって吹っ飛んでいくことなど気にしないで、そのまま駆け抜けた。



 村に戻ると、4人の大賢者が、スーモイの罰用に造った檻に閉じ込められていた。


 キースやレイラたちが、その周りを囲んでいた。


「どうしたのよ、体中にトゲが刺さっているわよ」


 キースが俺の体を指さす。


 本当だ。はやる気持ちを抑えられず、村まで一直線に走って来たから、ホッソアイが愛情をたっぷりそそいで育てているバラ園を突き抜けたとき、全身に刺さってしまったのだな。

 トゲの痛みなんてまるで感じなかった。


 俺はおそるおそる4人の大賢者の顔を間近で見る。


 苛立っているガルトニア国王と目が合う。間違いない。本物だ。


「4人とも、全員本物なのか?」


「ああ、間違いない。全員、本物だ。もっとも、それぞれの情報を知らなくても、こいつらの偉そうな態度を見れば、本物であることは一目瞭然だ」


 レイラが教えてくれる。くノ一のレイラがそう言うのなら間違いない。


「でも、どうして、4人の大賢者が同時にここへ?」


「それをさっきから問い詰めているのだけど、答えてくれないのよ。殴って聞き出したいけど、うっかり殺しちゃったら、せっかくのたった一つの奇跡的な可能性がアウトでしょ」


 その通りだ。キース、絶対に手を出さないでくれ。


「あっ、あれは? レイラたちに見つめられると、何でも話したくなるような、あの追及する眼差しは?」


「試してみたが、そこはさすが大賢者といったところか。通用しなかった。まあ、しばらく様子を見て、何も話さないような拷問するまで。その術は心得ている」


 レイラがキラリと目を光らせる。


「フンッ、弱小国のくノ一どもなど怖くもなんともないわ! 愛人のふりして近寄っていたとは卑怯者どもめ!」


 ガルトニア国王がレイラに向かってつばを吐く。


「ウォッ!」


 カキーンッ!!


 レイラたちは一斉に、ガルトニア国王の股間めがけて手裏剣を投げた。


 全員の手裏剣が狙い通りに飛んだので、逆にそれぞれがぶつかり合って、ガルトニア国王の股間は無事ですむ。


「卑怯者はどっちばってん」


「そうよ、裏でこそこそ戦争の準備をしているくせに」


「ベアラッカスの王子とマリーヌ王女の婚約も、戦争のためでしょ」


 モモカたちがガルトニア国王を罵る。


「レイラ、何を知っているのか、そろそろ話してくれないか?」


 俺がそう言うと、レイラはゆっくりと頷いて、


「このガルトニア国王は、他の世界の者たちの協力を得て、この世界を征服しようと企んでおるのだ。そして、その際に最初に攻め込む計画になっているのが、ガルトニアに隣接する小さな国ミングア、私たちの祖国だ。しかし、どんなに調べても、こいつと他の世界の者との密会現場を押さえることができなかった……」


と教えてくれた。


 すると、突然レストキア国王が口を開き、


「なんと、そのような計画を……。大賢者の恥さらしめ!」


とガルトニア国王を罵倒する。


「よくもぬけぬけとそのようなことを……。ワシが知らぬと思っているのか?」


 ガルトニア国王がそう言うと、


「なんのことだ?」


とレストキア国王が顔をそむける。


「このモンジャーをはじめ、他の世界から来た者たちを見つけては、送金の際に99.999%もの高い手数料を取り、戦争のための資金をためこんでおるじゃろうが!」


 ガルトニア国王が詰め寄ると、


「フッ、なにをでたらめなことをほざいているのだ。我が国が戦争の準備をしているという、何か証拠でもあるのか? 証拠があるなら見せて見ろってんだ!」


とレストキア国王が否定する。


 しかし、あなたが今、口にした「何か証拠でもあるのか?」という、言葉そのものが立派な証拠だろう。だいたいの犯人はその言葉を口にする。


「まあ、よさぬか、2人とも。皆に見られておるぞよ。大賢者がみっともないところを見せるものではない」


 品のある白髪で、4人の大賢者の中でも、かなり年上と思われるリルトン国王が仲裁に入る。


「何を偉そうにこのおいぼれが! リルトンが海軍を増強しているのは何のためだ?」


 レストキア国王が、リルトン国王に顔をすれすれまで近づけて問いかける。あれでは、臭い息が直撃していることだろう。


「最近、海賊が増えてな。やむを得ず、海軍を多少、増やしただけじゃよ」


とリルトン国王は微笑みながら答える。


「海賊……、やむを得ず……、多少……ねえ」


 レストキア国王の言い方には、不信感がにじみ出ていた。


「まあでも、軍備増強に一番力を入れているのは、ベアラッカスだと聞いておるぞ」


 レストキアの国王が、ベアラッカスの国王に顔を近づける。


「……」


 ベアラッカス国王だけが相変わらず、沈黙を続けている。


 それにしても、ガルトニア国王は魔王ナコによって、闇の牢獄に閉じ込められていたはず。もう、3年も前のことだから、ナコも許してやって開放することにしたのだろうか?


 そして、いったい誰が、何のために、この4人の大賢者を“最果ての入り口はあっても出口はない島”に捨ててくれたのだろうか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ