その石は私の物ですので、あしからず
「でも、どうして、レイラとニーズが、この科学者さん、ノゾミさんを探していたのさ?」
「私たちは、キース殿に近づこうとしたのだが、強さだけではなく相手の心を見抜く隙のなさを察知し、ターゲットをかえることにしたのだ」
「ああ、私の様子を覗いていたのはあなたたちだったのね。あと一歩近づいていたら、今頃ここにはいなかったわよ」
キースが不敵な笑みを浮かべる。あの、再確認したいのだけど、あなたは本当に元勇者なのだよな? すっかり元魔王の影響を受けているように感じる。
「それで、“この島の脱出法を研究している科学者”の噂を知って、私と姉様はずっと探していたのです」
ニーズが教えてくれる。
「だから、私は脱出法なんて研究していないと言っているでしょ! 変な期待しないでよね。あしからず」
科学者は真っ向から否定する。この言葉遣い、聞き覚えがあるな。
「タスキ、ミカヅキ、カーヤ、お前たちのほうは何か収穫はあったのか?」
レイラが尋ねると、タスキ、ミカヅキ、カーヤの3人は無念そうに首を横に振る。
「私たちもノゾミ殿の噂は聞いていたのですが、潜入していた“NVNL”の連中は、誰もガルトニアの国王の裏の顔について知っていませんでした」
「3人で協力して、あの手この手を使ったのですが……」
「姉様、申し訳ありません」
タスキ、ミカヅキ、カーヤの3人が膝をついて、レイラに頭を下げる。おお、これは絶景だ。谷間が丸見えだ。この3人が協力して、あの手この手を使ったって、いったいどんなことを……。
「何をデレデレしている!」
「ウォイターー!!」
キースが俺の頭を、勇者の剣で叩く。
「まったくおおげさな。軽く叩いただけなのに。変な目で見ていた君がいけないのよ」
おい! ちょっとは自分の馬鹿力を自覚しろよ! 軽く叩いたつもりかもしれないが、一瞬気を失いかけるほど痛かったぞ! だいたい勇者の剣はもっとありがたく使うものではないのか。
「なにその目は、言いたいことがあるのならはっきり言いなさいよ」
「や、やっぱり、キースさんが、一番美しいですね。うっとりしちゃいます」
「君もやっぱりそう思う。私だってまだまだいけるわよね。人妻だけど。やっぱり、この美貌を持て余して、この島で年老いていくなんて、もったいなすぎるわよね」
レイラは隙がないと言っていたが、おべっかを完全に受け入れているぞ。しかも、人妻ではなくて、正確には“元魔王妻”だ。いや、元魔王はナコにやられちゃったから、未亡人が正しいのか。まあ、いろいろとややこしくなるから、このことはキースはもちろん、レイラたちにも内緒にしておこう。
「何か秘密の匂いがするな……」
レイラたちが俺の目をじーっと見つめてくる。不思議と知っていることを何でも喋りたくなってくる。これは危険だ。
「あっ、ところで質問があります」
俺は挙手をして、
「タスキたちが潜入していた軍団の“NVNL”って、何の略なんですか?」
対して興味はなかったが、話題をかえるために聞いてみた。
「ああ、それは、“ノーバイオレンス・ノーライフ”の略です」
「とんでもない荒くれ者たちの集まりでしたわ」
「姉様。すみません。勝手に、7、8人消してしまいした」
タスキが質問の答えを教えてくれると、ミカヅキとカーヤが追加情報をくれた。
うん、あの防具の色は、朱色ではなかったようだ……。そして、タスキたちが身につけている防具も……。
もともとこの島に捨てられている時点で、キースに吹っ飛ばされても心配するような連中ではないのだが、今の話を聞いて、安心した。中には、この島にだって、アニキやスーモイ、フトシのような憎めない連中もいるからな。そういえば、アニキとスーモイは無事かな。ひと段落したら、探しに行くことにしよう。
「あーーー!! あわわわわわっ!!」
突如、科学者のノゾミが大声を出して、何やら体を震わせて興奮している。
「どうしたの? お腹でも痛くなったの?」
キースが真面目に心配している。そんなわけはないだろう。ちょっと天然系なのかな?
「や、やっと見つけた! あ、あの石! あの石はぜっーーーーーったいに私の物ですからね! あしからず」
ノゾミは、キースが開けた大きな穴の底に顔を出していた深い緑色で微かに光を放っている石を指さしてそういった。
わかった。あしからず、あしからずって。俺から手数料を99.999%もぼったくっているミチェルと話し方が似ているのだ。そう思うと、金髪で色白なのもミチェルと一緒だ。
ミチェルとノゾミはいったいどういう関係なのだ? そして、ノゾミが発見して興奮しているあの鉱石にはどんな力があるのだろうか?




