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2つ目のスキルは羨ましいのだが

「よっこらしょ」


 ディカプレオが瓦礫に腰を下ろす。その後方で、フトシとモモカがせっせと、楽しそうに建物を直しているのが見える。お前たちどんだけ“鶴の恩返しごっこ”をやりたいんだよ。


「そこまで知りたいというのなら、ワシのスキルのことを教えてやろう」


 ディカプレオが話し始める。俺は何も尋ねていないが、スキルのことを教えてくれるのなら、黙って聞くことにしよう。


「ワシの1つ目のスキルは先ほど見せた通り『誰と闘っても必ず引き分けになるスキル』じゃ。『誰と闘っても必ず勝てるスキル』というのもあったのじゃが、果たしてどんな相手にも勝つことになって、本当によいのじゃろうか? もし、自分が負けたいと思った相手と闘うことになったらどうする? 例えばそう、ピチピチギャルとか、あと、ピチピチギャルとか」


 ディカプレオはそう言いながら、金髪の細めの男の指示に従って、破壊された建物を倒しているヨーシャカ、リンスク、モーネをチラチラ見ている。凝視はしていない。あくまでチラ見だ。


 まあ、確かにディカプレオの考え方も一理ある。それから、『誰と闘っても必ず勝てるスキル』が存在するのなら、それを選んでいる奴がいるかもしれない。もし、そいつと闘うことになったら、どうすればいいのだろうか?


「そして、ワシの2つ目のスキルは、『女性には理想のタイプに見えるスキル』だ。これを見つけたとき、ワシは心の中でガッツポーズを何度もした。どんな女も、ワシが理想のタイプの容姿に見えるのじゃ。ある女には、渋くてダンディーな男に見え、ある女には利発そうでせいたんな顔立ちの美少年に見えるのじゃ! それはもう、この島に来るまではモテモテの毎日じゃったわい」


 このじじいが美少年に見える!? とんでもない詐欺行為ではないか! そのスキル、羨ましいぞっ!


「しかし、悲劇的なのは3つ目のスキルなんじゃ……」


 ディカプレオのテンションが急激に下がる。


「ワシが選んだ3つ目のスキル、それは……」


「それは……」


 俺は固唾をのんで聞き入る。


「それは、『1日が100時間に感じるスキル』だ。ほら、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうじゃろ。だから、ワシはモテモテの暮らしを長く感じられるように、この3つ目のスキルを選んでしまったのだ。ところがじゃ、ワシの『誰と闘っても必ず引き分けになるスキル』に恐れを抱いたガルトニアの国王が、卑怯な手段を使ってワシをこの島に捨てたのじゃ」


 なぜだ? 『誰と闘っても必ず引き分けになるスキル』は脅威にはならないと思うが。


「ガルトニアの国王はもし、ワシと無双の魔王が戦闘をすることになったとき、永遠に決着がつかず、その戦闘の衝撃で世界が破壊されることを恐れたのじゃ」


 なるほど。それは確かに、実際に起こりえるな。100万もの世界各国の兵士を一瞬で撃退した魔王ナコと、ディカプレオが戦い続けたら、世界は壊滅的な被害を受けるだろう。


 しかし、俺にはわかる。ガルトニアの国王がディカプレオをこの島に捨てた理由はそれだけではない。きっとモテモテのディカプレオが許せなかったに違いない! ピチピチギャルを12人も愛人にしていたガルトニアの国王がやりそうなことだ。


「お前にワシの苦しみがわかるか! 荒くれ者と怪物しかいないこの島に捨てられて、かれこれ30年余り……。ワシは1日を100時間に感じながら過ごしてきたのだ。つまり、120年もこの島にずっといるようなものなのじゃ!」


 そ、それは、地獄だ……。俺だったら発狂しているかもしれない。


「今は、ヨーシャカ、リンスク、モーネの3人のピチピチギャルが来てくれたおかげで、楽しみができたわい。ただ、長年おなごに縁がなかったワシにあの姿は刺激が強いでのう、実質“ダイダニック軍団”の中で一番強い、あのホッソアイに徐々にワシに近づけさせるように指示しているのじゃ」


「だったら、水着の上に、何か着せてあげればいいのでは?」


「バカ者っ!」


「痛っ!」


 ディカプレオが思い切り石を投げつけてきた。短気すぎるぞ、このクソじじい! ここでまた俺がやり返したらエンドレスな闘いが始まってしまう……。我慢するしかない。まったく、最近のじじいは!


「せっかく、あのような姿をしておるおなごに、上着を与えるバカがどこにいるのじゃ!」


 はいはい、わかりましたよ。もう、好きなようにしてください。


「それじゃ、俺の頼みを聞いてください。“鶴の恩返しごっこ”をやめさせてください。フトシとモモカを開放してやってください」


「なんでワシが、お前の頼みを聞かないといけないのじゃ」


 ううっ、簡単にバレてしまった。話の流れでスゥーっと頼めば、言うとおりにしてくれるかと思ったが、伊達に年をとっていないようだ。


「それにな、ワシらには“鶴の恩返しごっこ”が必要なのじゃ」


「えっ、フトシをいじめることがそんなに楽しいのですか? いくら暇だからって……痛っ!」


 ディカプレオの奴、また石を投げつけてきやがった。しかも、さっきよりだいぶ大きな石を頭部に命中させやがった。普通の人間だったら、命の危険さえあるんだぞ!


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