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3日3晩激闘を続けても決着がつかないのだが……

 今の俺ならば、相手が“最果ての入り口はあっても出口はない島”に捨てられた荒くれども500人であっても、簡単にフトシとモモカを力づくで助け出すことができる。


 とは言え、そんなことしたら、鶴役を見事ゲットして喜んでいるフトシとモモカに恨まれかねない。ここはやはり、“ダイダニック軍団”のリーダーであるディカプレオを見つけ出して、2人を開放するように頼んでみよう。


 リーダーのディカプレオが、“鶴の恩返しごっこ”をやめると言えば、あの純情な2人もそれに従うしかない。もし、ディカプレオが断ってきたら、そのときはぶちのめして強制的に開放させればいい。


 そう決めた俺は、アジトの中央にある花壇で、水をまいていた70歳くらいのヨボヨボのご老人に、ディカプレオがどこにいるか聞いてみることにした。


「おじいさん、ここのリーダーのディカプレオはどこにいますか?」


「うわっ! お前どこから来た? 急に出てきて年寄りをびっくりさせるものではない。危うく、膀胱が開くところだったぞ」


「驚かせてごめんなさい。で、ディカプレオはどこに?」


 ヨボヨボのじいさんが俺に蹴りを入れる。


「痛っ!」


 そんなバカな! レベル99999になったが俺が、こんなヨボヨボのじいさんの蹴りでダメージを喰らうなんて。普通なら、俺を蹴ったほうが、足が折れてしまうほど、俺は強くなっているはずだ。


「ディカプレオ様であろうが。口に気をつけよ、この若僧が!」


「痛っ!」


 じいさんはもう1発、俺に蹴りを入れてきた。ディカプレオと呼び捨てにした件については、今さっき蹴りを喰らったばかりだぞ。だったら、この2発目の蹴りは、余分ではないか。いったい、何に対する蹴りなんだ?


「痛っ! 年寄りにむかって何をするんじゃ!」


 俺はなんだかイラっときたので、ついじいさんを普通に蹴ってしまった。蹴った瞬間、しまったじいさんが吹き飛んでしまうと思ったが、じいさんは軽く痛がっているだけだった。このヨボヨボのじいさん、何者なんだ……もしや……。


「許さぬぞ! 礼儀知らずの若僧めが!」


 じいさんが俺に殴りかかってくる。ふん、じいさんのパンチなんて、俺に当たるわけ……。


 バコッ!!


 じいさんのパンチが俺の顔面にクリーンヒットする。


 な、なんだと!? この俺がじいさんのパンチをもろに喰らうとは! いったい、何がどうなっているんだ!?


「口のききかたを覚えてから出直してこい!」


 じいさんはさらに俺を何発も殴る。


「イテーな! じじい、いい加減にしろよっ!!」


 ええい、もうとにかく遠慮はしないぞ!! 俺はヨボヨボのじいさんを思わず本気で殴ってしまう。やばい、かっとなりすぎた。ヨボヨボのじいさんを殴り殺してしまうなんて、絶対にやってはいけないことをやってしまった。俺はそう猛省したのだが、


「なんのこれしき!」


 じいさんはそういって、再び俺に殴りかかり反撃してきた。


 俺はそのパンチをまたもかわすことができず、思わず膝をついてしまうほど、みぞおちにまともに喰らう。間違いない、こいつがそうだ。


「グヌヌッ。今のはマジで痛かったぞ。じいさんが、ディカプレオなんだな!」


 俺はそういいながら、ディカプレオの顔面に右ストレートを決める。


「だから、ディカプレオ様だと言っておろうが! このクソガキが!」


 ディカプレオも負けじと、俺の顔面に右ストレートを決める。


 それから、3日3晩、俺とじいさんは闘い続けた。顔は腫れ、全身アザだらけになった。


 これで俺はもう、この“最果ての入り口はあっても出口はない島”に来てから4日間寝てない。


「ハァ、ハァ、ハァ」


 さすがにバテてきた。俺とディカプレオの力は互角だった。このままでは一生、決着がつくきがしない。


「ハァ、ハァ、ハァ」


 ディカプレオもしんどそうだ。これ以上、闘わせるのはかわいそうだ。力は互角でも、見た目はヨボヨボのじいさんと闘っている俺のほうが、メンタル的には辛いものがある。


「ディカプレオ、年寄りがこれ以上戦うのは辛いだろう。今回は特別に許してやるからもうやめよう」


「だから、ディカプレオ様だと言っておるじゃろうが! なんど言えばわかるのじゃ! まったく最近の若僧は!」


 ディカプレオが俺に蹴りを入れる。


「イテーなっ!!」


 おっと、ここでやり返したらまたエンドレスだ。


「わかった、わかったよ。ディカプレオ様! もう引き分けにしようぜ!」


「アハハハハッ。アハハハハッ」


 ディカプレオが腹を抱えて笑い出す。


「ダハハハハッ」


「ガハハハハッ」


 “ダイダニック軍団”の荒くれどもたちも愉快そうに笑う。ふと、周りを見渡すと、俺とディカプレオが闘い続けた衝撃で、建物が崩壊していた。これは、悪いことをしてしまったな……。しかし、こんなに笑って、いったい何がそんなにおもしろいんだ!? 俺の歯にいつの間にか海苔でもついているというのか?


「当り前じゃだろうが! ワシと闘うと必ず引き分けになるのじゃ! それがワシのスキルなのだからな。ワシは誰と闘っても、勝つこともなければ、負けることもない!!」


 なるほど。どおりで3日3晩闘っても決着がつかないわけだ。ん、でも待てよ……。勝つこともなければ、負けることもないって……」


「あのディカプレオ様、質問があります」


 俺は挙手をする。


「なんじゃ?」


「ディカプレオ様のレベルを教えてください」


「そんなもの決まっておるじゃろう。ワシは戦闘で一度も勝ったことがないのだ。レベルは1だ!!」


 ディカプレオはそう言うと、キメ顔をつくった。


 マジでレベル1だったのかーーー!! 世界各国の荒くれ者や大物のモンスターが捨てられているこの“最果ての入り口はあっても出口はない島”で生き延びているだけではなく、3強の軍団のリーダーにまでレベル1で上りつめるとは、このディカプレオと名乗るじじいが恐ろしくなってきたぞ。


 やはり、レベル99999まで上がったとはいえ、闘う相手のスキルには警戒しなければならないな。

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