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その怪力、やっぱりもったいないよね

 『田沢がピンチになったとき助けずにはいられないスキル』の発動が止まったせいか、突然の大雨も雷も同時に止まって、青空が広がる。


 “クニオブラザーズⅢ”のリーダー、クニオという戦士は、天候が大荒れになるほど激しい戦闘力をもっているようだ。


 ドシン、ドシン、ドシンッ。


 そこに、アニキとスーモイがやって来た。ちょうどいい! まだ間に合うかもしれない。


「あいつ、やっと見つけた~。オイラ、もう歩きくたびれたよ~」


 ドスンッ。スーモイが倒れるように座り込む。あやうく、田沢が踏みつぶされるところだった。


「あいつは早起きなんだな。朝起きたらいなかったから、オイラたちずっと探していたんだぞ」


 いや、君たちのイビキなどいろいろあって、眠れていないだけだ。ああ、そんなことよりも、


「スーモイ、君の魔法で、こいつをちょっと動けるくらいに回復してやってくれないか?」


「うーん、こいつのこと~?」


 スーモイが田沢の頭をつまんで持ち上げる。その際に、バキバキッという音がした。


「オイラ、回復の魔法は得意だけど、生き返らせる魔法は使えないんだ~。ごめんよ~あいつ~。もったいないから食べちゃおう」


 モグモグ。田沢がスーモイに食べられた。


「マズッ。オエッ」


「スーモイ、頼むから吐き出さないでくれ!」


 今吐き出されたら、とんでもなくエグイものを見ることになってしまう。


「わかった。あいつがそういうなら、オイラ我慢して食べる~」


 スーモイは食べるというよりは、田沢をむりやり飲み込もうとする。


「ウゲッ、やっぱり無理~」


 スーモイが田沢をピュッと口から出して、遠くの彼方まで飛ばした。


 まあ、グロイのを見なくてすんだから、これでもいいか。それに、きっとあれだ。あのとき、田沢はまだ生きていて、きっとスーモイが頭をつまんでバキバキッと音がしたとき、完全に田沢はまた違う世界に逝かれたのだろう。きっと、そうに違いない。天候のことだって、ただの偶然だろう。


 もう今のことは忘れて、ちょっとは眠ることにしよう。


「アニキ、スーモイ、君たちのあの素敵なツリーハウスで少し休ませてもらっていいかな?」


「あいつ、すまん。そうさせてやりたいが、あの家はもうない」


 えっ!? 誰かに襲われたのか!? やはりこんな屈強な巨人族が相手でも、この島では戦闘を挑んでくる奴らが無数にいるのだな。


「オイラたち、朝からケンカしちゃって~。あの家、壊しちゃったんだ~。あいつがいなかったから~、アニキがオイラが食べたんだろってしつこくてさ~」


「誰だってお前を疑うだろ。お前はお腹が空いたらなんだって喰う」


「なんでだよー。いくらオイラでもあいつは食べないよ~。命の恩人なんだよ~。もう、アニキが信じてくれないから、ついケンカになってしまったんだ~」


 グゥー。スーモイのお腹が鳴る。俺を見ながら、よだれを垂らしている。


「それで家を壊してしまって~、ケンカにも疲れたから、スーモイ、自分のお腹を割いて、胃の中が空っぽなのをアニキに見せたら、やっと信じてもらえたんだよー。そのあとすぐに、回復の魔法で治したけど、そこまでしないと信じないなんてひどいでしょー」


 スーモイ、そう言いながら、顔を俺に近づけすぎているぞ。スーモイと同じ場所で寝るのは危険すぎるな。



 すると、川からドンブラコ、ドンブラコと、大きな大きな“スモウレスラースライム”が3体流れてきた。


 体長15mほどの“スモウレスラースライム”は、俺たちに近づくとピョンと、意外と俊敏に動いて、岸に上がる。近くで見て気付いたが、“スモウレスラースライム”には、ドワーフの戦士たちが乗っていた。


 なるほど。モンスターと戦士がタッグを組んでいるパターンもあるのか。


 そして、この中で一番弱いと判断した俺に、一斉に襲い掛かって来る。当然、俺に触れた“スモウレスラースライム”はそれぞれ金貨1枚に変わる。


 タララッタタッタッー!!!!!


 レベルが850に上がった!


 マジか! “スモウレスラースライム”を倒してもらえる経験値がハンパないことは噂で聞いていたが、これほどまでとは! たった3体倒しただけで、レベルが一気に73も上がった! これからは“スモウレスラースライム”を見かけたら優先的に倒していこう。


「八つ裂きにしちまえーーー!!」


「切って切って切りまくれー!!」


 今度は血の気の多いドワーフどもが襲い掛かって来る。


「ガーリガーリクーヌ!!」


 アニキが魔法で、ドワーフどもを一瞬で凍らせる。


 そう、この巨人族の双子は魔法使いなのだ。アニキは攻撃系の魔法を得意とし、弟のスーモイは回復系の魔法を得意としている。


 人を見かけで判断してはいけないというが、それはどこの世界でも共通のことらしい。


「やっほーい、丸ごとドワーフ氷、おいしそ~」


 カチコチに凍ったドワーフを、スーモイが食べようとする。


「このバカタレが!!」


 アニキがスーモイの顔面を思いっきり殴る。スーモイは木々をなぎ倒しながら、50mほど飛ばされてしまう。


「巨人族の誇りにかけて、ドワーフだけは喰っちゃいけねえといつも言っているだろうが!!」


 よく理解できないが、巨人族には巨人族ならではの誇りがあるようだ。それにしてもこの怪力…。魔法使いにはもったいないな。


 すると今度は、川からドンブラコ、ドンブラコと、大きな葉っぱで造られた船に揺られて、12人の水着のピチピチギャルが「キャーキャー」言いながら流れて来た。

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