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三国志状態になっているらしい

 アニキとスーモイの住処は、巨大な木で作られたツリーハウスだった。荒っぽい造りだが、これはこれで野趣があってオシャレといえばオシャレな家だ。俺にはすべての家具が大きく見えて、まるで小人になった錯覚に陥っておもしろかった。


 その日の夕食は、アニキが仕留めたカミナリオバケウナギを、スーモイが火山口近くの岩で、溶岩焼きにしてくれた。

 すでに息絶えているモンスターに触っても金貨に変わることはないから、俺も食べることができる。


 ああ、それにしても今日は疲れた。そもそも今日は、この“最果ての入り口はあっても出口はない島”に来る前に、イームたちをはじめ、世界各国の軍隊と魔王のナコの闘いがあって大変だったのだ。(まあ、ナコがあっという間に撃退したのだけど)


 そして、アニキとスーモイと出会った後も、ひっきりなしに荒くれ者やモンスターとのバトルになり、休む暇もなかった。アニキのレベルは2414、スーモイのレベルは2020だった。スーモイは食事の時間が長いので、レベルに差が出ているそうだった。とにかく頼もしい仲間ができたものだ。


 もちろん屈強な荒くれ者はアニキとスーモイにまかせて、俺は大物のモンスターを倒すことに集中した。おかげで、たった半日でレベルは288まで上がり、金貨は15,500枚も稼ぐことができた。


 この調子なら、1ヶ月後にはイーム以上に強くなって、使い切れないぐらいの金貨を持って帰れそうだ。まあ、この島から出られたらの話だが…。


 と、そんなことを思い出していたら、アニキとスーモイがあっという間に、カミナリオバケウナギの溶岩焼きをたいらげていた。


「ああ、旨かったな~。アニキ、もう一匹捕まえてきてくれよ~」


「ゲフッ。やだで。まだカミナリをくらっくだったしびれがのこっでるんば」


 カミナリオバケウナギが放った雷をもろにくらったアニキは、体にしびれが残っているようで、まともに話すことができていない。そんな感じでも、ムシャムシャと食べたものだから、唇を切って血を流している。


 旨そうな匂いがしていたから食べてみたかったが、また今度にしよう。今日は、ヘトヘトだから、気になっていることを聞いたら、さっさと眠ってしまおう。


「あのさ、答えたくなかったら答えなくていいんだけどさ。スーモイはどうして左耳がないんだ?」


「ああ、喰おうとしたんだ~。スゲー腹減っていたからね~。左耳ちぎって、試しに食べてみたら、めちゃくちゃ臭くて喰えたものじゃなかったよ~。あいつはマネしないでね~」


 するわけないだろ。なんか、聞いて損した感じがする。


「あとさ、この島に捨てられた奴の中で、一番強いのは誰なんだ?」


 アニキとスーモイがいるとはいえ、あまりに強い奴とはまだ戦闘しないほうがいい。情報を得ておこう。


「ああ、それなら、あの一番高い山で暮らしている“キース”だな。いろんな猛者が戦いを挑んだのを見たが、全員が3秒以内に返り討ちにあっていた」


 アニキが遠くに見える山を指さす。良かった。これだけ離れていればバトルにならないだろう。


「まあ、キースは他の連中が戦っているのを、あの山から見るのが好きなだけだから、基本的には襲ってくることはない」


「基本的には?」


「食事の邪魔だけはしてはいけない。キースが食事中に、うっかり遭遇した者は、アウトだ。その瞬間に命を落としたと思ったほうがいい」


 聞いておいてよかった。荒くれ者にも美食家がいるのだな。


「あと、この島にはあんまり関わりたくない3つの軍団がいるんだよ~」


「そうだ。この3つの軍団の力が拮抗して、もう20年も決着がついていない」


 ふーん、三国志みたいな感じなのかな。


「あれー、おかしいなー。このあたりから、すっごい旨そうな匂いがしてきたのになー。何もないやー」


 眼鏡をかけて、太りすぎてお腹が服から出ている戦士と言っていいのかどうか微妙な奴が、テーブルに立ってそう言った。


 何者かが侵入してきたなと気配を感じていたが、大した威圧感を感じなかったので様子を見ていた。


「君、おいしそうだね~」


 逆にスーモイに狙われている。


「ヒッ! 僕なんか食べても、そこそこおいしいくらいだよ」


 おいおい、アピールしてどうする。


「それじゃ、お邪魔しましたー」


 食いしん坊の、愉快な戦士は、そそくさと退散していく。逃げ足はかなり速かった。きっと、こんなことばかりしているから、自ずと速くなったのだろう。


「ここはオイラたちの住処だから、襲ってくる奴はいないと思うが、あいつ油断するなよ」


「わかってる。世界各国の荒くれ者が集まっているんだ。覚悟しているよ。さあ、ちょっとでも寝れるうちに寝ておくよ。おやすみ」


 俺は巨大な椅子の上でそのまま眠ることにする。


 だがすぐに、


「グゴゴゴゴゴゴッ!!!!!」


 巨人族の双子のイビキ大合奏が始まった。


 魔法で耳栓を出して使ってみたが、効果なんてあるわけない!


 俺はツリーハウスを出て、自分専用の寝床を探すことにする。ああ、早くリストン王国のあの丘に帰って、ゆっくり眠りたいな。そうだ、娘の紗麻亜も遊びに来ることだし、ベッドはダブルベッドを買うことにしよう。(一緒に眠ってくれるかはわからないが…たぶん、俺はソファで寝ることになるだろうが…買ってみるのだ。)


 地上に降りると、夜行性のカサッカサッと動くあいつらがいた。しかも、かなりデカい。俺の2倍はデカい。い、嫌だ。いくら金貨になるからとはいえ、経験値がもらえるからとはいえ、こいつらに触れられるのも、触れるのも絶対に嫌だ。


 俺は猛ダッシュで逃げる。ああ、いつになったら眠れるんだーーー!!

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