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捨てられた戦士たちが、あちらこちらで戦闘中!

「ウララララッ!!」


「テメー、ぶった切ってやる!!」


「次は誰だ、かかってこいよ!!」


 “最果ての入り口はあっても出口はない島”に着いた途端、荒くれ者どもの争いの声が無数に聞こえてくる。そう、ここは手に負えない荒くれ者を、世界各国が“捨てている”島なのだ。


 入ることはできても、例え国王でも外に出ることはできない特殊な結界が張られている。


 噴火している山もあって、まるで恐竜映画の舞台になりそうな島だ。


「おい、こいつ、あいつじゃないか?」


「ああ、確かにこいつ、あいつだな」


 おバカな会話が後ろから聞こえてくる。


「おい、お前、あいつだろう!」


「そうだ! その黒い服、あいつに違いない!」


 だから、あいつって誰だよ! まあ、なんとなく想像はつくが…。


「触るだけでモンスターを金貨に変えて、楽して稼いでいるあいつだろう!」


「そうだ、そうだ! レベルは低いくせに強いモンスターも金貨に変えて稼いでいるあいつに違いない!」


 そこまで言えるなら、名前も覚えておけばいいのに。あいつ、あいつって言われるのも、腹が立ってくる。


 振り返ってみると、見るからに屈強な、体長30mはある巨人族の戦士2人が立っていた。双子だった。1人は左耳がなかった。


 瞬間移動で逃げようとするが、思った通り、使えないように魔法がかけられている。


 世界各国のお偉いさんたちは、荒くれ者たちがここで戦い合って消えていってくれることを望んでいるのだから、逃げることに使える魔法は封じることにしたのだろう。


 俺は魔法をつかって、巨人族の双子の服に火をつける!


「アチチッ、なにするんだこいつ。オイラたち、着替え持っていないんだぞ」


 わかっている。さきほどから、ものすごい異臭が漂っている。


「アニキ、早く火を消してくれよ!」


「スーモイ、じっとしていろ。動くな」


 アニキのほうが、スーモイという名の弟に、つばを何度もはいて、消火する。左耳がないほうが、弟のスーモイらしい。


 危うく俺にまで、滝のようなつばがかかるところだった。


 そして、今度はアニキの服を燃やしている火を、スーモイがつばをはいて消そうとするが、全然当たらない。


「ウワッ、コラッ、何するんだ!」


 それどころか、アニキの顔にスーモイのつばが命中する。


 そうしている間に、待っていた相手が姿を現す。


 巨人族の3倍もデカい“2頭身キングクロコダイル”だ。

 俺の思った通りだ。この島には、人間だけではなく、手に負えなくなったモンスターたちも捨てられている。そのモンスターたちをおびき出すために、巨人族の服に火をつけたのだ。ちょうどいい時間稼ぎにもなった。


 “2頭身キングクロコダイル”は大きな口を開けると、巨人族の双子を丸のみにしようとする。


「アニキ~!!」


「スーモイ! 泣くな! 最後まで巨人族の戦士のプライドを守るのだ!!」


 うーん。なんだかこの双子、放っておけないな。


「諦めの悪い奴は昔から好きなんだ」


 当初は、巨人族の双子を喰ってから金貨に変えるつもりだった。でも、計画変更だ。俺は小走りで、“2頭身キングクロコダイル”に駆け寄って、足の大きな爪に触れる。

 すると、“2頭身キングクロコダイル”は大量の金貨になって降り注ぐ。さすがに、魔王のナコが元魔王を倒したときよりは少ないが、ざっと見ただけで金貨2,000枚はあることだろう。


 タララッタタッタッー!!!!!

 よし、レベルもたった1回の戦闘で8つ上がって、レベル66になったぞ! 島の出方はわからないが、大物のモンスターを金貨に変えまくって、どんどんレベルを上げるのだ! そして、この荒くれ者が集うこの島で一番強くなってみせる! 島の出方はそれから考えればいい。


 俺の家は吹き飛ばされてしまったが、“家の場所”はリストン王国のあの丘の上のままだ。宅急便の荷物のやりとりなどの関係で、家の場所をかえるときは、手数料を支払っているレストキア王国に届け出をする必要がある。


 1ヶ月後に次女の紗麻亜が、家が破壊されたままのあの丘に遊びに来るのだ。早く帰らないと、このままではこの世界で、紗麻亜がひとりぼっちになってしまう。もちろん、この “最果ての入り口はあっても出口はない島”から電話で連絡することなどできない。


 仕送りだって、家の場所の変更届けを出していないから、あの丘に戻らないと送ることができない。


 生き延びて脱出するしかないのだ! それにあの丘には、お気に入りのフライパンを残したままだ!


 ドスン、ドスンッ! 地面が大きく揺れる。今度は何事だ。


 俺が振り向くと、巨人族の双子が膝をついて座っていた。アニキのほうの服は、上半身がすっかり燃えてしまっていた。ちょっと悪いことをしたなと反省した。


「助かったよ~、あいつ~!!」


「あいつはオイラ達の命の恩人だ。どうか子分にしてくれ。今度はオイラ達があいつを守る番だ!」


 どうやら、まだ俺のことを“あいつ”と呼んでいるらしい。それにしても、頼もしいボディガードができた。 “最果ての入り口はあっても出口はない島”に送られたときは正直、びびりまくっていたが、脱出する希望がはっきりと見えてきたぞ!!

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