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七の巻 真冬の決闘⑦

 ――そんなこんながあって、今日は合唱のコンクールの日です。


 暗い気持ちで朝を迎えたスポンジ姫。とても歌う気にはなれません。

 学校までの道のりをとぼとぼ歩いていると、ふと聞こえてきた「ライ君おはよう」の声に顔を上げると。そこには自分と同じように背を丸め歩くライの顔を覗き込むように話すキャンデイがいました。

 「もうどうしちゃったの? ほら背中を伸ばして」

 「うるせぇな。おらの事はほっとけずら」

 「なぁにその言い方」

 大げさなそぶりを見せるキャンディに、ますます不機嫌になるライを見ているうちに、なんだかいてもたってもいられなくなってきたスポンジ姫は、つかつかと二人へ近付いて行きます。

 「ちょっと、その態度あんまりじゃありません事。レディを何だと思っていらっしゃるの?」

 ものすごい剣幕のスポンジ姫に、一瞬たじろぎましたが、ライも負けじと言い返してきます。

 「なんだべ急におかしなスポンジちゃんだな」

 「急なんかじゃないわ。常々感じておりましたの。男子って全く何を考えていらっしゃるのかしら?」

 「それはこっちのセリフだべ。言いがかりもいいとこだべ」

 「きゃははは。もう二人とも喧嘩はそこまで。今日は町を挙げての合唱コンクールよ。そんな怖い顔をしていないで楽しみましょう。ほら、歩いて歩いて」

 「みんな待って」

 その声で振り返ると、白い息を吐きながら駆けてくるクッキーでした。

 会場はもすぐそこです。

 どこからか歌声が聞こえてきて、楽しげに笑い合う声も聞こえてきました。これは姿を見なくてもわかります。ロール姉妹とキャラメル兄弟です。

 「大変大変」

 そう言って駆け寄って来たのは、グミとクレープです。

 「どうかしたの?」

 脇道から出て来たマドレーヌに聞かれ、答えたのはクレープです。

 「今ね、エクレアさんと会ったんだけど」

 「エクレアさんって?」

 「そっかスポンジちゃんは知らないっか。エクレアさんっていうのは超有名な音楽家で、し、か、も、ななななんと、シュークリームのお兄様なのよね」

 得意げに話すグミに割って入ってきたのは、ベイクドです。まだ眠いのか目を擦り擦りこう続けました。

 「町を上げての音楽祭だから、来ていてもおかしくはないんじゃない?」

 と、どこからかパカパカと馬のひづめが聞こえてきました。

 町で滅多に聞くことがない音に、全員で振り返ります。

 いったいどこの誰なのでしょう。

 物知りのミントもさすがに知らない様子で、誰もが顔を見合わせている中、馬車はどんどん近づいてきました。

 「え? ええええええ?」

 首を長くして眺めていたチュロスが、思わず叫びます。

 それも無理はありません。すっと背筋を伸ばし、巧みな手綱裁きをしてやってきたのは、あの飲んだくれのパウンドさんだったのですから。

 一体どういうことなのでしょう?

 身にまとっているものも艶やかで、今まで見たことがない民族衣装を羽織っているではありませんか。

 混乱しているみんなを他所に、ただ一人、少し離れたところでじっと身を固くするライがいました。

 「どういうこと?」

 首を傾げるプリンは、いきなり肩を掴まれ悲鳴を上げます。 

 「やっと追いついた」

 肩で息をしているジェラート見て、「もう、脅かさないでよ」と、半泣きで言うプリンを見て、みんなが一斉に吹き出します。

 「全く、今日は何ていう日なのかしら?」

 「同感です」

 マドレーヌの言葉にミントが頷いて見せます。

 「さぁ気を取り直して、みんな今日は頑張るわよ」

 珍しく張り切るキャンディに背中を押され、みんなは行動の中へと足を進めていきます。

 「ジェラート、大丈夫? 髪がぼさぼさよ」

 スポンジ姫にそう言われ、息が上がったままのジェラートが必至で手櫛で髪を整えていきます。

 「もうあれほど早く起こしてってママに頼んでおいたのに、時計見たら7時半って、信じられない。もうこんな姿をあの方に見られたら、私、生きていけない」

 「そんな大げさな。私に任せなさい」

 今にも泣き出しそうな顔をするジェラートを見て、ムースがクスッと笑いながら言います。

 ムースは普段頼りになりませんが、ヘアーアレンジには少々自信があります。学芸会もその力は十分発揮してくれたので、その腕はお墨付きです。

 「大丈夫。私がちょいのちょちょいで、直してあげるから」

 「ホント? ありがとう」

 「任せなさい」

 そうなると私も私もと、志願する子が手を挙げ始め、またもや大騒ぎです。

 「分かった。分かった。順番にしてあげるから」

 「だったら急がないと」

 ジェラートの言葉が合図となって、誰もが口々に早く早くとはやし始めます。

 いつだってこうです。

 男の子たちはそんな女の子たちをからかったり、ふざけあったり、最初はあんなに嫌だったはずの光景だったのに、そんなことをぼんやり考えていると、ふっとジェラートの顔が現れ、考え事をしていたスポンジ姫ははっとして顔を上げます。

 「どう?」

 二つに結わき髪先を巻いてもらって,得意げに笑って見せるジェラートに、思わず笑みが零れるスポンジ姫でした。


 

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