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六の巻 実りの秋⑥

招かざる客であるモンブラン先生の参加のハイキングは、出発前から大揉め。やっと出発したものの……。

 のどかな風景が続く畦道を、何だかんだ言っても矢張りハイキングは楽しいのです。みんなのお喋りが止まりません。

 ジェラートはずっとババロアの話しばかりしていますし、どういうわけか付き合うことになってしまったベイクドは強制的にマカロンに手を繋がれ、顔が真っ赤になってしまっています。

 スキップするように歩いているのはキャンディです。その理由は、途中に通かかるウエハースタウンが楽しみで楽しみで仕方がないのです。誰のも話したことがありませんが、何度も通うぐらい大好きな人が、そこに入るのです。一応、少しだけでも立ち寄れないかミントたちに相談はしたのですが、即断れてしまっていたのですが、そこでおとなしく引き下がるわけにはいかないキャンディ、実はあることを企てようとしているのですが、急に心細くなってしまって、その計画をクッキーだけ話してしまっていました。

  

 ミルクロードを過ぎ、いよいよウエハースタウンの標示が見えてきました。

 だんだん賑やかな音楽が聞こえてきて、キャンディの心が逸ります。目配せをされたクッキーがギクリとして、あたりを見回します。

 そこでキャンディが、「あいたた」とお腹を押さえたからさぁ大変。

 「キ、キャンディちゃん大丈夫?」

 空々しく言うクッキーに合わせて、目をパチクリさせながらプリンがモンブラン先生を呼びます。

 「キャンディさん、どうかされましたか?」

 「お、お腹が」

 「モンブラン先生は、みんなと一緒にまんじゅう山へ向かって下さい。キャンディさんは、私が責任を持ってお連れします。もし万が一、体調が戻らないようでしたら、俺が責任をもって家まで送って行きます。ですから」

 「それじゃ、おらもキャンディが心配だから残るべ」

 「私もあまり体調が良くないので、戻ってもいいですか」

 みるみるモンブラン先生の顔色が変わり、気まずい雰囲気が広がって行きます。

 「いい加減にしなさい。君たちは私を侮辱するのか」

 あまりの声の大きさに、キャラメル兄妹が耳に指を突っ込みます。

 「わたくし先生を侮辱なんて」

 ハラっとよろけて見せる演技は、発表会で培った賜物です。

 「スポンジちゃん大丈夫?」

 ジェラートの言葉を受けてシュークリームが続けます。

 「仕方ないよ。具合が悪いんじゃ」

 「そうね。スポンジちゃん、確かに元気なかったみたいだし」

 マドレーヌの言葉に、みんなが口々に似たようなことを言い出し、さすがにモンブラン先生も応じないわけにはいきません。

 「残念だけど、今日は諦めた方が良さそうですね」

 腹立たしい気持ちを抑え微笑んで見せるモンブラン先生に、スポンジ姫は儚げな顔を作り深く頭を下げてみせるのでした。

 自分の完ぺきな演技に、内心拍手を送るスポンジ姫でしたが、何を思ったのかミントとチュロルが駆け戻って来て、ライの手を握るのです。

 そして、首を傾げたくなるようなことを言うではありませんか。一体何の話なのでしょう。

 「僕たちはきみとずっと友達だから」

 そう言って抱き付かれたライの目に、涙です。

 不思議な顔をするスポンジ姫を他所に、言うだけ言って二人はまた列に戻って行ってしまいました。

 感動の別れなど全く目に入っていないキャンディ。計画ではクッキーが付き添いで、兄の働く店のトイレを借りる出したが、クッキーの姿ははるか遠くにあり、なぜか予定外のライとスポンジ姫が心配顔でこちらを見ています。ティラミスが残ると言い出すのは予想はついていましたが、話せばきっと分かってくれる。そう高をくくっていたのです。 

 「さ、キャンデイさん行きましょうか」

 いざそう言われ、縮こまってしまったキャンディの目からじわっと、涙が溢れだしたのはその時です。

 「そんなにお腹が痛いの? 大丈夫? ほら私に掴まって」

 「おらの肩にも掴まれ」

 もう二人の顔をまともに見れなくなってしまったキャンディです。

 「スポンジちゃん、私……」

 さてどうしたのでしょう? キャンディの様子がおかしいです。

 ライとスポンジ姫が顔を見合わせてしまっていると、そこでティラミスがキャンディの頭をそっと撫でて、何か囁いたかと思うと大股で道を渡って行ってしまいました。

 スポンジ姫としては心中穏やかではありません。頭がぐるぐる回ってどうにかなりそうです。これは国を挙げての大問題なのでは。自分に見せたことのないあの優しい仕草。許せない気持ちで一ぴあもスポンジ姫でしたが、誰かに袖を引っ張られ、ハッと我に返ります。

 「あのねスポンジちゃんそれにライ君、ごめんなさい」

 もじもじしながら言うキャンディを見て、スポんジ姫は嫌な予感が頭を過ります。

 「大丈夫よ。失敗なんて誰にでもあるわ。わたくしもライ君も絶対誰にも話さないわ。だから気にしないで。ほらライ君、愚図愚図しないで。どこか着替えを売っているところ探して」

 「違うの」

 「違うって、まだセーフってことだべか」

 「本当に本当にごめんなさい」

 勢いよく頭を下げたキャンディを見て、二人で首を傾げます。

「一時間だけですよ。でもその前にしなければならないことがありそうですね「」

 去り際ティラミスはキャンディにこう言って行ったのです。

 キャンディとて充分承知しています。たとえ目的が果たせなくても、友達を失ってしまうかもと思う方が、余程悲しいに決まっていることを。

 「あのね私ねあそこへ行きたくっ……、みんなに嘘をつきました。本当にごめんなさい」

 キャンディが嘘をついてまで来たかったのは、キャラメルハウスと言う店でした。どうやらこの店にドーナッツブラザースという人気者がよく来るらしく、その噂を知って是非来てみたかったのです。

 「でもそれで会えなかったらどうするべ。大損じゃねぇのか」

 「良いんだもん。行きたかったのになぁと思って悔しがるよりましだもん」

 ライの突込みに、キャンディがムキになって言い返したその時です。店のドアが開き、現れたのはティラミスです。こっちへ恋の合図をしています。それを見た瞬間、一目散で駆けだしたキャンディ。それを追いかけるように二人も駆け寄って、あとは流されるように店の中へ。

 ティラミスはどんな交渉をしたのでしょう。手厚いおもてなしを受け大満足するキャンディを横目に、そんなことを考えて居るスポンジ姫の横顔を食い入るように見詰めるライ。その眼には薄っすらと涙が浮かんでいることを、この時まだ誰も気が付いてませんでした。

 

 

 

 

それぞれの思いを胸にしまって出発したハイキング。楽しくなるはずだったのに。

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