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六の巻 実りの秋④

芸術の秋。スポーツの秋。食欲の秋。秋はいろいろありますが、どうやらスポンジ姫の周りは恋一色の秋の様です。


 ――澄み渡った空がとても気持ちが良い朝です。


 久しぶりに、ジェラートの迎えで家を出たスポンジ姫は、複雑な心境のままです。 

 わざと遅らせて家を出たティラミスも、数歩離れた場所を歩いています。

 どうしたことでしょう? 

 恋のいざこざなどどこ吹く風のジェラートです。以前のような笑みを見せ話して掛けられ、慌てて頷きはしたものの信じられない気分のスポンジ姫なのです。

 それに、スポンジ姫は後ろを歩くティラミスをチラリと見て、首を振ります。

 あの日の出来事は、いったい何だったのでしょう? てっきりティラミスの裏切りにあったと思ったのに、目覚めると優しいカステラおばさまがいて、何もなかったかのように暖かなスープを飲ませてくれるではありませんか。その隣にはしっかりティラミスも居て、何を聞いても冗談を返され始末で、分からないじまいになってしまっているのです。

 「昨日ね初めてママの手伝いをして、お料理をしてみたのよ。それがとてもおいしくって。この服も今日のためにって新しく買ってくれたのよ。て、スポンジちゃん? 私の話し、聞いている?」

 不意に顔を覗き込まれ、スポンジ姫は言葉を詰まらせます。

 「私、新しい恋を見つけたの」

 は?

 ハトが、豆鉄砲でも食らったような顔をするスポンジ姫をを見て、ゲラゲラと笑しだしたジェラート。

 「女は恋をする生き物なのよ」

 「はい?」

 「ベビーなスポンジちゃんには、分からないでしょうけど。女って生き物は、愛なしでは生きられないものなのよ」

 お姉さんぶって言うジェラートに、スポンジ姫は苦笑いをするしかありません。

 でも、いったい誰なのでしょう。ついこの間まであんなにティラミスにご執心だったジェラートにここまで言わせる人物は? 全く心当たりがないスポンジ姫は不思議で仕方がありません。

 「さぁ急ぎましょう。みんなが待っているわ」

 歌うように言って前を走り出したはずのジェラートに急に止まられ、スポンジ姫は嫌っと言うほど鼻をぶつけてしまいました。

 「もうジェラートちゃん、急に止まらないでよ」

 両手を前で組み、恥じらうように立ち尽くすジェラートを見て、スポンジ姫は目を凝らし前を見ると、パカパカと木馬の蹄の音が聞こえてきたかと思うと、颯爽としたババロアの登場に、ジェラートの背筋がピーンと伸ばされて、そういうことか。とスポンジ姫は思います。

 「これはこれはお美しいお二人さん、おめかしして、どちらかへお出かけですか?」

 今にも卒倒しそうなジェラートを支えながら、スポンジ姫が応えます。

 「ババロア様ごきげんよう。わたくしたちこれからハイキングに参りますのよ」

 「ほほーそれは大変よろしいですね。今日は日柄も良い。気を付けて行ってらっしゃい」

 「ババロア様。もしよろしければ、ご一緒しませんか?」

 目を輝かせて言うジェラートに、ババロアは豪快に笑って見せます。

 「それは有難い誘いですが、私もこれから少しばかり用事を済ませに、遠出しなくてはなりませぬ。是非、次の機会がありましたら、その時はご一緒させていただけますかな?」

 「勿論。無くても私が作って見せます」

 「それは頼もしい限りです。では私はこれで」

 図ったように現れたババロアに、ジェラートのとっては幸運な出来事だったのに違いないでしょうが、去りゆく背中にスポンジ姫は小さく息を吐きます。

 

 それは昨日の帰り道のことです。

 ティラミスもそうですが、兄であるババロアの護衛はもっと徹底ます。まるで気配がなく家の中に入ってからも姿を現すことは、決したりませんでした。しかし、昨日は違ったのです。

 突然目の前に現れたババロアに、スポンジ姫は飛び上がって視う有様でした。

 「申し訳ございません。どうしても姫にご提案がしたくて、無礼承知でこのババロア参上奉りました」

 「何よ、そんな畏まった言い方やめて下さらない」

 「ははっ」

 大げさに頭を下げるババロアにスポンジ姫は目をぱちくりさせ、「だから、何なのよもう。いつもみたいな話し方しなさいよ」

 「ですが誰が聞いているか分かりませぬ」

 そこまで言うとババロアはそっとスポンジに耳打ちをするのです。

 「弟に聞かれますと、兄としての威厳が」」

 「あなたね」

 ムッとするスポンジ姫を見て、ババロアは腹を抱えて笑いだしました。

 もうこれだけでも充分失礼なのに、笑いをこらえながらこうも言うのです。

 「あんな奴は止めておきなさい。明日はわたくしめがご一緒致しましょう。剣裁きもわたくし目の方が数段上でございますし、顔もこの通り」

 自分の顎を摩りながら言うババロアに、どんなに嫌悪感を覚えたことでしょうか。今思い出しても身震いをしてしまうほどです。

 どうしてあんなことを辱めもなく言えるのでしょう? 

 「スポンジちゃん、私決めた」

 ジェラートの元気な声に、スポンジ姫は目をパチクリさせます。

 「私あの方と結婚するわ。絶対して見せるわ。だってこれは運命よ。絶対にそう。スポンジちゃんもそう思うでしょう? だからお願い、あの方との縁、取り持ってほしいの。ね、ね良いでしょうおねがい」

 しっかりジェラートに手を握られ、懇願されてしまったスポンジ姫。

 さて、どうしたものでしょう。

 少し離れたところで立って待つティラミスnスポンジ姫はそっと目をやり、また溜息です。

 「恋って大変よね~」

 やたら堂宇関してくるジェラートに、只管笑って誤魔化すスポンジ姫なのでした。 

 

 

 

 

次は楽しいハイキングだよ。

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