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六の巻 実りの秋②

さてさて、スポンジ姫の心と裏腹に教室ではひと騒動。いったい何が起こったのでしょう?

 チョークを何度も折り、嫌な音を鳴らさせては舌打ちをするわ、今まで見たことがないモンブラン先生の変貌ぶりに誰もが固唾を飲んでいる中、唯一分かっていないのがキャラメル兄妹です。

 モンブラン先生が、ちっとも生徒たちを見ようとしないことをいいことに、ベロベロバーをしてみたり耳を引っ張っておかしな顔を作り、みんなに見せてくるのです。これにはたまったものではありません。みんな笑いを堪えるのに必死です。

 ですが次の瞬間です。

 モンブラン先生が不意にこちらを振り向いたではありませんか。

 「何をしているのです」

 ばつが悪く目を反らすキャラメル兄妹に、モンブラン先生はいらいらした様子でもう一度同じ質問を繰り返します。

 当然、ふざけていたなんて答えられません。

 「私の授業が聞きたくない人は、教室から出て行ってもらっても構いませんよ」

 そう言いながら教室のドアを開けに行くモンブラン先生を見て、青くなってしまっているキャラメル強打に、早く謝るようベイクドが背中を突っつきます。

 「先生、ごめんなさい」

 「オレもごめん、なさいです」

 「別に謝らなくても良いですよ。さぁ出てお行きなさい」

 淡々とした口調で言うモンブラン先生に、ますますみんなは縮こまってしまいます。

 「どうしたのです? グリ君もモーリ君も、私の授業は退屈なんでしょ」

 しくしく泣きべそを最初に書き出したのは、隣の席に座っているプリンでした。

 「さて、どうしたものでしょう」

 「先生、それより授業を進めてください」

 そう声を張り上げたのは、スフレです。

 「わたくし、またすぐに舞台が控えておりますの。一分でも一秒でも無駄にしたくありませんわ」

 凛とした顔で言うスフレに、モンブラン先生は関原を一つして教壇へ戻って行きます。

 「では、この問題をシュークリーム君、前に来て解きなさい」

 とばっちりを受けたシュークリームが、兄であるグリを下から見上げて前へ出て行きます。

 これで話は済んだものだと誰もが思った最中、無言でキャラメル兄弟に近寄ったモンブラン先生が、容赦なく二人を教室から引っ張り出したではありませんか。

 こんなこと、今まであったでしょうか。

 どんなに煩くしていても優しく諭すことはあっても、こんな冷たい言い方をしたことも、ましてや教室からつまみ出すなど一度もしたことがありません。

 「静かに」

 必死で教室へ戻ろうとするキャラメル兄妹を一括し、笑顔で振り返ったモンブラン先生。

 「さぁ気を取り直して、次の問題はスポンジさん、解いてください。次のを」

 そこでモンブラン先生は、首を傾げんす。

 「スポンジさん、どうかされましたか?」

 こういった状況に免疫力がないせいで、ショックを受けてしまたのでしょうか。 

 さすがにまずいと思ったモンブラン先生はチラッと、廊下の方を見てからスポンジ姫に近づいて行きます。

 「どこか、具合でも悪いのですか? 顔が真っ赤ですよ」

 「え? そんなこと」

 ますます顔を赤くするスポンジ姫を見て、モンブラン先生は首を振ります。

 「どうやら、また病気が出たようですね」

 何の話しでしょ?

 「本当だ。ほっぺがまっかかだ」

 プリンにあどけない口調で言われ、スポンジ姫の頬はますます赤く染まります。

 「わたくしとしたことが、何でもなくってよ」

 そうなのです。

 スポンジ姫、先ほどマカロンから言われた一言がどうにも頭から離れずにいたのです。

 つまり、キャラメル兄妹が起こられている最中、いえいえ、みんなが緊迫していると言うのに、スポンジ姫の頭の中はと言いますと、わたくしが、ティラミスとこここ恋仲ですって。お付き合いなんて。嫌ですわ。まったくもう。あれですわ。わたくしの演技がそれほど、素晴らしかったて事よね。嫌ですわ。もうわたくしとしたことが罪作り。てな感じでございまして、みんなが心配するようなことではないのですが、まさかそんなことが言えるはずもなく……。

 動揺を隠しきれずにいるスポンジを救ったのは、スフレです。

 「先生、私が保健室へお連れしますわ」

 「いいえ。あなたは勉学にお励みになっていれば良いわ。モンブラン先生、私がスポンジちゃんを保健室へ連れて行きます」

 これにはモンブラン先生も、つい顔を綻ばせてしまいます。

 「二人ともありがとう。でもここは、保健係のシュークリーム君に頼むことにしよう」

 黒板の前で立ちんぼだったシュークリームでしたが、モンブラン先生のご指名では仕方がありません。面倒くさい素振りを見せたものの、実は内心安心したのは内緒です。

 「仕方がねーな。ほら行くぞ」

 シュークリームに促され立ち上がったスポンジ姫でしたが、どうしたことでしょう。一瞬目の前が暗くなってしまったのです。

 「おい、大丈夫かよ」

 その理由は明白です。

 物思いに耽っていたスポンジ姫は、ここ最近満足に食事を摂っていなかったのです。今朝も、カステラおばさんに怒られたばかりでした。

 シュークリームに顔を覗かれ、スポンジ姫は恥ずかしさに、笑って誤魔化します。

 しかし妙なことがあるものです。

 見ればシュークリームの顔も真っ赤になっているではありませんか。これはいったいどうしたことでしょう。

 「ありがとう。シュークリームには助けてもらってばかりね

 と、恥ずかしそうに微笑まれ、字顔から火が噴き出しそうなのをが負かすシュークリーム。必死で不機嫌顔を作らなければです。

 「いいから行くぞ。ああ重てぇ」

 「お願いしましたよ」 

 その声はいつもの優しいモンブラン先生に戻ってました。

 さぁこれで一安心と思いきや、今度はライがお尻を抑えマジも辞し始めたではありませんか。 

 「先生。オラもトイレさ行ってもいいだべか。腹の調子が朝から悪くって」

 このタイミングです。誰がその言葉を信じれるのでしょうか?

 「嘘も大概にしないか」

 不機嫌顔に戻ってしまったモンブラン先生を見て、ミントは当然だなと思います。

 「嘘じゃないだべ。本当に朝から腹の調子が悪くって。あああああああ。すぇんせいでちまうべよ」

 涙目で言うライを、モンブラン先生は鼻で笑います。

 「嘘はもう沢山だ。さぁみなさん授業を続けますよ」

 「だめだってばよ。本当に出ちゃうってばよ」

 足をくねらせて救いを求めるような目で見られたミント。チュロスが首を長く伸ばし、こちらをじっと見てます。

 あまりこれ以上目立ちたくないミントですが、マドレーヌまでチラチラ見られては、ここでやらなければ男が廃るってものです。

 「でもライ君、本当に辛そうですよ先生。朝からお腹が痛いって言ってたし、嘘なんかついていないと思います。先生お願いですj。ライ君をトイレへ行かせてください。もし先生がライ君を信じられないと仰るのなら、僕が付き添うっていうのはどうでしょう?」

 「そうね、教室が臭くなるのはちょっとね」

 「事件ですね。いやはやこれは事故に匹敵するのか」

 クッキーの言葉に、そう相槌を打ったにはグミです。

 この後のことを考えると、モンブラン先生も認めざるを得ません。

 「ライ君、一人で行けますか」

 一目散で教室を飛びだして行くライに、大きく首を横に振りるモンブラン先生でした。

 

 

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