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五の巻 芸術は爆発だ⑧

 学芸会の当日。

 よそよそと変装したスフレを見つけ、ババロアが物陰へ引っ張り込みます。

 憮然とするスフレに、ティラミスは呆れ顔です。

 「おまえな」

 「私は、姫を思って」

 「姫を思っているものが、こんな物をカバンに忍ばせて来るかね」

 カバンをひったくられ、スフレは青ざめます。

 中から取り出されたのは、眠り薬です。

 ティラミスは前日から、学校へ泊りがけの準備です。姫は身を隠すため、一旦お城へ帰されていました。

 しかし、ババロアの手引きでそこで入れ替わる予定だったのですが、姫が頑としてそれを拒んだのです。

 やむを得ず、予定変更をしたババロアは、寝ずの番でスポンジ姫を見張りました。

 スフレの謀反など、お見通しだったのです。

 グイと腕を掴まれ、スフレはむくれます。

 「分かったわよ。入れ替わればいいんでしょ」

 「左様。分かればよろしい。さ、こちらへ」

 体育用具が入れられた倉庫へ引っ張り込まれたスフレは、意図も容易く元の姿にされ、表へ出てきました。

 しばらく置いて、ババロアに肩を抱かれたスポンジが出てきました。

 何も知らないのは、ティラミスだけです。

 舞台の中央、第一声を上げるスポンジを見て、ティラミスは眉を顰めます。

 いくらスフレがスポンジに似せていても、ちょっとした仕草とか言いまわし方が違います。長年使いてきた姫です。そんな微妙なことさえ見逃さないティラミスなのです。

 舞台そでに戻ってきたスポンジの腕を、ティラミスは捕まえます。

 「姫、何をされているんです」

 「何って、ティラミス先生、変な質問しないでください。お芝居に決まっているでしょ」

 「先生ったら、緊張しているんですか?」

 組の好奇心いっぱいの目を向けられ、ティラミスは顔を伏せます。

 「すまん。あまりこういうのは慣れていなくて」

 「へぇへぇ。オラなんか余裕だし。スポンジちゃん、大船に乗ったつもりでいていいばい」

 「ライ君、頼もしい」

 キャンディに冷やかされ、ライは胸を張ってみせます。

 そんなこんなで芝居は中盤へ差し掛かっていました。  

 ライバルがいるという事はいいことだと、しみじみと舞台に立つスポンジ姫を見ながら、ババロアは感慨深く見つめます。

 すったもんだの大騒ぎはありましたが、収まるところに収まり一安心して、スポンジ姫本人が今まさに、その瞬間を迎えています。

 袖で見つめるスフレが悔しそうにしていますが、気にすることはありません。今のスポンジ姫なら充分、主役の座を務めることが出来ます。無論、お相手はティラミス本人なのですから、望むところでしょう。

 観客席にはカステラおばさんも来ています。

 護衛を兼ね、その隣に陣取ったババロアが舞台に向かって小さく手を振って見せます。

 「まさかとは思うが、あの二人、間違いはないだろうね」

 流石は年の功。

 渋い顔をするババロアに、カステラおばさんはやれやれと首を振ります。

 「いつから」

 「いつと申されましても、おそらく当の本人同士は、まだそれを認め合ってはおられぬようで」

 「ま、それなら尚更早打ちに手を打たねばなりませんね」

 「カステラ様。しかしながら」

 「お黙り。そう簡単に許されることではありません。あなたも身に染みて、充分理解しているはずです」

 「はは」

 ひっそりと、そんな会話が取り交わされていることなど露とも知らぬスポンジ姫は、心地の良い緊張感に、しゃんと背筋を伸ばします。

 

 

 

 

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