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五の巻 芸術は爆発だ⑤

 少々気は引けましたがジェラートは、朝を待ってカステラおばさんの家の戸を叩きました。

 「おや、ジェラートちゃんじゃないか。久しぶりだね」

 「あの、スポンジちゃんは」

 カステラおばさんはずり下がったメガネの奥から、優しい眼差しでにっこりすると、部屋の中を見返ります。

 「おばあちゃん、誰?」

 その様子に気が付いたように誰かが、奥の方から声がしたかと思うと顔を覗かせました。

 「スポンジのお友達だよ」

 「まぁ可愛らしい子ね」

 ジェラートはそう言われ、頬をほんのり赤く染めました。

 「あの、私、スポンジちゃんと同じクラスメートの、ジェラートと言います」

 「はじめまして、私はスフレ。よろしくね」

 ふんわりとした髪の感じとか、笑った時の雰囲気がスポンジにどことなく似ていて、ジェラートは目をパチクリして、驚きの表情を隠せませんでした。

 スカートを衝舞い上げる仕草とかも、よく似ています。見方を変えれば……。驚きの眼でいるジェラートに、スフレが柔らかい笑みで話し掛けます。

 「私たち、似ているでしょ」

 「はい。あ、いいえ。スフレさんの方が大人っていうか」

 「良いの良いの無理しなくて。私たち従妹なの。良く姉妹に間違われるんだけど」

 「あの、それでスポンジちゃんは?」

 「スポンジは今」

 スフレが言いかけた時でした。 

 「もうどうして起こしてくれないのよ」

 奥からスポンジが髪をくちゃくちゃのまま、目を擦りながら顔を見せました。

 ジェラートはまたもや目を瞬かせます。

 「スポンジちゃん、大丈夫?」

 目の下にクマが出来ているではありませんか。顔色も優れません。これでは学校へ行ける状態ではないことは、言われなくても分かります。

 「あの私、今日は一人で行きます」

 「悪いわね。そうしてくれるかい」

 「モンブラン先生には私から、お休みするって伝えておきます」

 慌てて頭を下げたジェラートは、そのまま踵を返すと、小さな悲鳴を上げました。

 「あっ失礼」

 「ティラミス先生」

 「おはようジェラートさん」

 「おはようございます」

 ジェラートはまともに顔を上げることが出来ずに、目を伏せたままの会話です。

 「僕もこれから学校へ行くところだから、一緒に行きましょう」

 「でも」

 「僕もスポンジさんの様子が気になって、寄っただけだから」

 さあどうしましょう。ジェラートの心臓は今にも口から飛び出してしまいそうになっています。

 さりげなく背中をそっと押され、さあ行きましょうというティラミスに促されるまま、歩き出したジェラート。

 戸の前で立つスポンジ姫に向かって、ウィンクしたことなど知る由もありません。

 今にもとろけそうなジェラートの背を見つめながら、スフレが呟きます。

 「でもこんなことで、上手くいくのかしら」

 「いってもらわなければ困ります」

 カステラおばさんが、やれやれと首を振りながら中へ戻って行きます。スポンジ姫に化けたスフレが、手櫛で髪を直し、大きなため息を吐きました。

 「あの子、信じ込んでくれたかしら」

 「あとは兄さんに任せるとしよう。しかし」

 ティラミスが、呆れるようにスポンジ姫を見ます。

 「何よ」

 「本当によろしいのですか」

 「だってスポンジ姫としてダメというなら、こうするしかないでしょ。スフレが私の真似をするというなら、私がスフレに成り代わってもいいってことでしょ」

 「さあ早くお食べ。何はともあれお腹が空いていては、何も始まりませんよ」

 

 口ひげにハットを目深に被り、スティックを突きながら歩くティラミスより、半歩後を、やはりつばの大きな帽子をかぶったスフレに手を取られながらスポンジは校長室へと向かいます。

 事前にカステラおばさんから言付かったと、ティラミスになり替わったババロアから、さりげなく話は通されていたミルフィーユ校長は疑うことなく、すんなりとスフレの転校を許可したのです。

 「しかし急な話ですな」

 「ええ、私どももこの子の我侭には困っておりますのよ」

 「一人娘で、つい甘くなってしまったのでしょう」

 「致し方がありません。大人びているとはいえ、まだまだ子供です。こんなお仕事じゃ尚更、どこかで無理をしているのでしょう。ここが心休まる場所であれば、いくらでもいてください」

 「ありがとうございます。校長先生にそう言ってもらえると、心強いですわ」

 「ちょうど、こちらには従妹であるスポンジちゃんも通っていることですし」

 チラッと、ティラミスがスフレに扮したスポンジ姫に目をやります。

 ふてぶてしい態度で、舌打ちを一度ついて見せたスポンジ姫を見て、何ですその態度は。と予定通りスフレが声を荒げます。

 「よしなさい。見苦しいじゃないか。スフレもちゃんとご挨拶をしなさい」

 「チッ。よろしく」

 面を食らったミルフィーユ校長は、モンブラン先生を呼び、スフレを預けました。

 「メレンゲ伯爵、ご安心を」

 二人は深々と頭を下げ、校長室を出ました。

 さて、スポンジ姫は上手くできるのでしょうか。

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