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五の巻 芸術は爆発だ③

 お城に戻ったスポンジをタルト王とクリーム王妃は大喜びで出迎えます。

 しかし納得がいかないままお城に戻されたスポンジ姫は面白くありません。頬を膨らませ、一言も話そうとしませんでした。

 「久しぶりの再会じゃと言うのに、姫は冷たいのぅ」

 「姫、お元気でしたか」

 クリーム王妃をチラッと見たスポンジ姫は、少し驚いた表情を見せます。

 出かけて行く時よりも、一段と顔色が悪くなったような気がしたからです。

 後ろに構えているティラミスへ目をやってからスポンジ姫は、スカートを抓み、挨拶をして見せます。

 「まぁなんてことでしょ。こんなレディの振る舞いが出来るようになったのですね」

 大袈裟過ぎる喜びように、スポンジ姫は顔を赤らめました。

 「王様、一大事が起きていると聞きました」

 スポンジ姫は、チラッと後ろに構えているティラミスを見てから聞きました。

 「まぁ硬い話は後じゃ。疲れておるじゃろうから、何か美味しいものでも用意させよう」

 「王様」

 何か様子がおかしい。こういう勘は、スポンジ姫は外したことがありません。

 「王様っ」

 きつい声で言うスポンジに、困り果てたタルト王はご自慢の髭を撫でながら、ティラミスに救いを求めます。

 「王様、ここまでお連れしてきたのですからご安心でしょう。これ、こちらに入りなさい」

 そう呼ばれ、すらっとした一人の女性が中へと入って来ました。

 「この者はスフレと申すものです」

 「スフレ?」

 眉間に皺を寄せるスポンジ姫にスフレは丁寧に頭を下げました。

 「この者がしばらく姫の代わりをします」

 「ちょっと待って。似ても似つかないこの者が私の代わりですって」

 「はい。左様でございます」

 「全然分かんない。言っている意味、分からないんですけど」

 「スポンジや。これはすべて姫を守るべく手段じゃ。悪く思わんで遅れ」

 「そうですよ。スポンジは言われたとおり、ひと月だけ大人しくお部屋で過ごしていればよいのですよ」

 「だから、意味が分からないって言っているでしょ」

 鼻息荒く言うスポンジに、一同顔を顰めます。

 「説明していただけないのなら私」

 言葉を切ったスポンジは、ぎろりと一同を見まわしました。

 ごくりと生唾を飲んだのは、スフレです。

 「何をすると言うんだ」

 「早まってはいけませんよ」

 余裕の構えを見せているのは、ティラミスだけです。

 「姫、茶番はおやめなさい。あなたには何も出来ない。言う事をお聞きなさい。姫、すべてはあなた様をお守りするため、それがなぜ分かりませぬ」

 「わたくしをバカにしないで。わたくしだってその気になれば、何だってできるのよ」

 「ホホー。ならば9の段を言って御覧なさい。それが出来たのなら認めてさしあげましょう」

 その言葉に驚いたのは、やはりスフレです。

 「どうしてここで9の段が出て来るのよ」

 「姫のご成長を父君で有らせられるタルト王に分かって頂けるのには、ちょうど良いかと考えた次第でございます」

 ティラミスにふてぶてしく言われたスポンジ姫は言い淀みます。

 「い、いいわよ。おやすい御用よ」 

 皆の注目を浴び、スポンジ姫は生唾を飲み込みます。

 しかし半分も行かないうちに、スポンジ姫は俯いてしまったのでした。

 「……まさかとは思いましたが」

 スフレが思わず、つっかえてしまったスポンジ姫を、信じられないという目で見ます。

 「これが実状でございます」

 「分かりました。わたくしでお役にたてるなら喜んで、身代わりさせていただきます」

 「だから、なんでそうなるのよ」

 半泣きするスポンジ姫の声も虚しく、大人たちの話は進められていったのでした。

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