五の巻 芸術は爆発だ②
化け物でも見たような形相をするモンブラン先生を見て、ミントが心配顔で尋ねます・
その問いかけにモンブラン先生、声をひっくり返しながら答えますが、内心穏やかではないことは、バレバレです。
「文部ら先生、顔色が良くありませんね、お疲れなのでは?」
ティラミスがすかさず口を挟みます。
「いや、そんなことは」
口ごもってしまったモンブラン先生に、ティラミスは愛想の良い笑みを向け、
「そうですか。無理は禁物です。わたし目で良かったら、いつでも相談に乗りますので、いつでも保健室へお越しくださいませ」
頭を下げるティラミスに、モンブラン先生は目を見開くばかりです。
そこでマシュマロ先生が顔を覗かせます。
「あらティラミス先生、眼鏡に戻られたんですのね?」
「ええ。コンタクトは矢張り苦手で。度が少しあっていないのですが、仕方がありません」
「何をされているんです。さっさと決めてしまわないと次の授業に」
甲高い声で咎めながら顔を覗かせたクランチ先生に、ティラミスは優しく微笑みかえします。
「左様ですね。さぁ後のことは私に任せて、先生方は先を進めてください」
「ティラミス様」
その眩しさは、よろめいてしまうほどでした。
「さぁマシュマロ先生も」
爽やか笑顔で言われ、マシュマロ先生もすっかりその虜にされてしまったのは、言うまでもありません。
「お前は、いったい何者だ」
我を取り戻したモンブラン先生が、厳しい声で問い質します。
ギロリと黒縁メガネの下の目が光らせたティラミスは、何も答えず踵を返しました。
「他の先生の目はごまかせても、この私の目は、騙されませんよ」
足早に去って行くティラミスに、モンブラン先生は地団太を踏みます。
その一部始終を見ていたミントが、首を傾げます。
何かが起ころうとしているようです。
「ミント」
マドレーヌに呼ばれ、ミントはそんな疑問を胸にしまって教室へと戻って行きました。
その頃、何も知らないスポンジ姫は、一目散で家路を走っていました。
「姫」
そう呼ばれても気が付きません。
馬を走らせ、前に立ちはだかるティラミスを見て、スポンジは目を見開きました。
「あなたは誰?」
「申し遅れました。炭焼き小屋の番人をしているババロアと申します。ティラミスの兄でございます」
「ティラミスの」
困惑するスポンジ姫をじっと見つめる瞳は、青く透き通っており、確かにティラミスのものとは違います。
「なぜ?」
その時です。遠くから早馬の足音が聞こえ、今度こそティラミスです。
「スポンジ姫、ご無事ですか?」
「御無事も何も……。ティラミス、どうなっているの?」
「今お話をするわけにはいきません。どうかこのままお城へお戻りください」
「そんなこと、出来ないわ」
「幸い姫は具合を損じていることになりっています」
「でも、事情が分からないまま」
今にも泣きそうなスポンジ姫に、ご安心なされ。身代わりはこちらでご用意いたします。とババロアが優しく髪を撫でます。
「私、帰らないわ」
「なりませぬ」
「理由が聞けないなら、私は意思を貫き通します」
ババロアとティラミスは困り顔で見合わせます。
「良からぬうわさが流れています」
ババロアが、目を細め遠くを見つめました。
「姫を狙う者がおります」
ティラミスの言葉に、スポンジは目を見開きましたが、ふっと笑いを零します。
「知っています。ライでしょ」
「確かにライの目的もあなた様でしょうが」
そういうババロアが、首を振って見せます。
「あ奴はまだまだ子供。心配無用でございます」
「では誰だと言うの?」
「シッ。ここではまずい。先を急ぎましょう」
そういうティラミスに無理矢理馬に乗せられ、尖山を越し、神秘の森を風のように突っ切って行きます。ざわめきの町でババロアと別れ、スポンジとティラミスはお城への道を急いだのでした。




