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四の巻 パンの国王子ライ③

 朝の教室は大賑わいです。

 モンブラン先生に連れられて入って来たのは、あの噂の清らの泉のきみではありませんか。キャンディは気絶寸前です。ロール姉妹はそわそわと、誰の隣に座るのか気にしています。あのマドレーヌでさえ、落ち着きがありません。

 ライ王子も、パンドに言われたことを忠実に守っています。

 「おめぇは、黙っていればいい男に見える。黙って斜に構えていれば、おめぇの言う、姫とやらと結婚だって叶うかもしれん」

 ここは力を入れ、決めなくてはいけません。

 「今日からみんなと一緒に勉強することになった、ライ君だ。仲良くするように」

 ざわつく教室を一望したライは、さらりとした髪を掻き上げて見せます。

 一番前の席に座っていた、マシュマロの目が、ハートになっています。

 「パンの国から、訳があってやって来ましたライです。よろしく」

 笑みを作ったライは、決まった。とつい顔が緩みそうになるのを、我慢我慢です。

 これで姫の心は鷲掴み。

 そう思ったライはスポンジにウインクをして見せます。

 しかし残念なことに、それは両目を瞑ってしまい不発に終わってしまいました。

 「席はと……」

 「先生。僕は、あの方の隣がいいです」

 スポンジを指さし言うライに、一瞬ですが、顔色を変えたモンブラン先生は、何も聞こえていなかったかのように、教室を見渡します。

 「はいはいはーい。キャラメル兄が威勢良く手を上げ、僕が席を代わってあげます」

 と言って、さっさと荷物を持ってクッキーの隣へ引っ越して行きます。

 「では、あの席へ」

 モンブラン先生にしては冷たい言い方ですが、そんな事、微塵も気にしていないライはいそいそと開いた席に座り、スポンジにめいっぱいカッコつけての、笑みです。

 ざわつく教室を宥めるように、二回ほど咳ばらいをしたモンブラン先生、少し不機嫌のようです。いつもより一オクターブさげた声で言います。

 「もうひとつお知らせがあります。校長先生のたっての希望で、本日付で、ティラミスさんを保健体育の講師として来てもらうことになりました」

 「ティラミスが」

 ジェラートとスポンジ姫の驚いた声が重なって、教室に響き渡ります。

 「それほど驚くことでもありません。くれぐれも失礼がないように学ぶように。話は以上。一時間目は国語です。教科書85ページ。ライ君は隣の」

 早合点をしたライが、口を開きます。

 「スポンジひ」

 ギロリとスポンジ姫に睨まれたライ王子、かわいそうに小さな体を更に縮め、マドレーヌに教科書を見せてもらいます。

 いささか面白くないのは、ミントです。

 後ろの席で、二人の背中を恨めしそうに見ます。

 そう言えば、マドレーヌとミントは恋人同士というお話ですが、真相はどうなんでしょう。

 恋のルーレットが回された教室は、もうそれはそれは大賑わいです。

 「ライさんって、あの清らの泉のパウンドさんとはどんな御関係なの?」

 キャンディが気取って訊くと、ライは顔を45度に上げ答えます。

 「わたくしの母の兄上でございまする」

 「ございまする? 嫌だ~、ライ君って面白い」

 バシッと背中を叩き大喜びし出したのは、クレープです。ロール姉妹も手を叩いて喜んでいます。

 ライは、真っ赤な顔を下に向け、みんなにばれないように必死で誤魔化します。

 「おめぇ~は喋ってはならね~。そんなずうずう弁喋ったら、笑われちまう」

 「おらぁ、どうやって喋ったらいいのか、わかんね~だよ」

 「黙ってろ。とにかく寡黙な男はモテる」

 そう言っても、ずっと黙っているわけにはいかんべ~。おじさんどうにかしてけれ。

 穴があったら入りたい気持ちでいるライに、救いの手を出したのはスポンジ姫です。

 「良い間違いなんかいくらでもあるわ。あなたも、無理してみんなの言葉と合わせる必要なくってよ。あなたのお国の言葉で話せばいいじゃない。バカみたい」

 バシッと机を叩き、スポンジ姫は教室から出て行ってしましました。

 「かっこええ」

 ライはますますスポンジ姫が気に入りました。

 そんなことをつゆとも知らないスポンジ姫は、ティラミスを探し回ります。

 どうにもこうにもひとこと言ってやらないと、気がおさまらないのです。

 また、ジェラートもティラミスの姿を教室の窓から見つめます。

 さてさて、この関係どうなりますことやら。

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