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四の巻 パン国の王子ライ②

 まんじりとも出来ず、朝を迎えたスポンジ姫は時計を見上げ、ジェラードがドアをノックする前に、外へ出て待ちます。

 どうしてそんなことをしてしまうのか、自分で説明が出来ません。頬紅をさしたジェラードがドアの前に立って待つスポンジ姫を見て、目を丸くします。

 「おはよう」

 ジェラードが口を開く前に、スポンジが声を掛けました。

 「お、おはよう。今日はどうしたの?」

 「どうもしないわ。早く目覚めたから」

 「そ、そうなの」

 先に歩き出したスポンジに促され、後ろ髪を引かれる思いでジェラードも振り返り振り返り歩きはじめました。そんなジェラードにスポンジは余裕の笑みで言います。

 「朝ごはん、学校のお庭で食べましょ。今日は私のお手製よ。はい、これはお昼分。お母様は相変わらずなの?」

 少し棘がある言い方に、ジェラードは顔を顰めます。

 「怒っていることがあるなら、はっきり言ってよ。こんなの気持ちが悪くて仕方ないわ」

 「怒ってなんかいないわ。私はただ、早起きできたから気分を変えて学校のお庭で朝食を摂るのも悪くないなと思っただけよ。お母様のことも、昨日あなたが貧血なんか起こしたから、もうちょっとしっかりして貰わないと、あなたが可哀想だと思ったから言っただけ。それを悪くとられるなんて、心外だわ」

 「もういい。分かったわ。もうあなたの家にはいかないわ。スポンジちゃん、卑怯だわ。ティラミスが好きなら好きって言えばいいじゃない」

 「何を言っているの? わたくしとティラミスは」

 「隠さないで。私、昨日全部ティラミスさんから聞いたわ」

 「聞くって?」

 「スポンジちゃん、私がわざと気を失ったふりをして、怒っているんでしょ?」

 「ええー、そうなの?」

 「恍けないで。聞かなくても私には分かったわ。だってスポンジちゃん、ティラミスさんを見るときの目が、違っていたもの」

 「バカなことを言わないで。あんなの好きでも何でもないわ」

 「良いの隠さないで。スポンジちゃん良いことを教えてあげる。従兄妹同士は結婚、出来るのよ」

 「何を言っているの?」

 「私、スポンジちゃんと、対等でいたいから。でもこれだけは言っとくわ。あんたがどんな態度を取ろうと、私の気持ちは変わらないんだから」

 走り去って行くジェラードを見ながら、スポンジ姫は頬を膨らませます。

 「何なのよ。私がティラミスなんか好きなはずがないでしょ。執事のティラミスになんか私が……」

 ボタボタと、スポンジ姫の目から、大粒の涙が零れ落ちます。

 「姫、泣いていらっしゃるのですか?」

 不意に声を掛けられたスポンジ姫、さっと涙を拭き振り返ります。

 「ティラミス、町ではその呼び方は」

 そして、スポンジ姫は呆然となってしまいました。

 そこにいたのは、ティラミスではなく、ライだったのです。

 「姫、お供します」

 動揺を隠しきれずにいるスポンジ姫に、何食わぬ顔で手を差し伸べるライ。

 この状況を、どう理解すればいいのでしょう?

 かわいそうにスポンジ姫は、息をするのも忘れてしまっている様子。

 「さ、お手を」

 ごくりとつばを飲み込み、スポンジ姫はしゃんと背筋を伸ばしました。

 こういう時は、凛としていなければいけません。動じれば、相手の思う壺です。キッと睨むスポンジ姫に、ライは白い歯を見せ、臆せず言います。

 「姫、さぁ参りましょう」

 「姫って、冗談を言うのは辞めてよ。グミにでも聞かれたら大変だわ」

 「冗談ではありませぬ。あなた様がこの国、お菓子の国の姫であることは」

 「バカバカ。何て事言い出すの」

 スポンジ姫は慌ててライの口を塞ぎ、辺りを見回しました。

 油断も隙もあったものではありません。こんな話をティラミスに訊かれたら、堪ったものではありません。どんな小言を言われるのかと考えただけで、ゾッとなります。

 

 しかしスポンジ姫の心配は、的外れもいいところ。 

 その様子をカシカシの木の陰で見ていたのは、モンブラン先生でした。

 

 ツンツンしながら前を歩いて行くスポンジ姫を、ライは小走りで追いかけて行き、モンブラン先生は、二人を尾行を始めました。

 

 「私は、パンの国の王じゃ。どうだ驚いたか?」

 すたすたと歩くスピードを緩めないスポンジを、小走りをしてライは追いかけます。

 「どうだ。私の嫁に来ないか」

 驚いたようにスポンジは足を止めます。

 その背中に見事に衝突を果たしたライは嫌って言うほど鼻をぶつけ痛がります。

 「今、何ておっしゃりました?」

 「だから私の嫁にしてやってもいいぞ」

 「御冗談でしょ?」

 「いや、大真面目に申しておる」

 「そう言うことはもう少し身長を伸ばしてからお言いなさい。私の胸にさえ届いては居ませんじゃない」

 ムスッとしたライが、ぶつくさと口の中で何やらを言っています。

 「だから私は木馬から降りて歩くのは、不利だと言ったのじゃ。パンドがあんなことを言うから。何が王が王らしくしては、命が狙われますだ。こんなにのどかでいい街ではあるまいか」

 一人ごちるライを置いて、スポンジ姫はもうはるか遠くです。

 短い脚をフル回転させ、ライはスポンジを追いかけます。


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