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一の巻 姫の旅立ち②

 望遠鏡で、始終眺めていたスポンジ姫は、ふくれっ面です。

 「まったく、くだらないわ。何で私がこんなのに出席をしなければいかないの」

 「姫、そんなことを言ってはいけませんよ。町の者が皆、あなたの誕生を祝ってくれているのですから]

 少し疲れ顔のクリーム王妃が、優しく窘めました。

 「そうじゃぞ。こんな大勢の者が、スポンジ、お前の姿を一目拝見しようと集まっておるのじゃ。さ、テラスへ出て、皆の者にその姿をお披露目をしなさい」

 長いひげを生やし、ぷっくら顔のタルト王が、眉間に皺をよせて言います。

 「嫌です。笑いたくもないのに、なぜ笑わなくてはいけないのかもわかりませんし、ここに集まっている者全員が、心からわたくしの誕生日を喜んで祝ってくれているとは、思いませんことよお父様。ごらんなさい。多くの者が、退屈顔をしているではありませんか」

 スポンジ姫は、タルト王に望遠鏡を差し出し、うんざり顔で続けます。

 「あんな野蛮な人たちが集まる町へ、どうしてこのわたくしが行かなければならないのか納得いきませんわ」

 ストンと椅子に腰を下ろしたスポンジ姫は、ぷーっと頬を膨らませます。

 困り顔のタルト王は、クリーム王妃に目配せをします。

 「とにかく、わたくしは、あんな所には行きたくありませんからッ」

 勢いよく立ち上がったスポンジ姫は、腰を振り振り怒って部屋を出て行ってしまいました。

 

 勢いよく閉まるドアの音に、面を食らった二人は顔を見合わせました。

 やれやれとタルト王が、呼び鈴を鳴らします。


 しばらくして、ノックされたドアが開き、背筋をピーンと伸ばした、執事のティラミスが礼儀正しいお辞儀をし、部屋へ入ってきました。


 「お呼びでしょうか?」

 広場を見下ろしていたタルト王が、うむっと言って振り返ります。

 クリーム王妃は、気分が悪いと言って、椅子へもたれ掛り、ぐったりしています。

 「すまんがのぅ、姫の我儘がまた始まりおった」

 「左様でございますか」

 「すいませんね。あんな子に育てたつもりはなかったのですが。私がこんな躰だからいけなかったのですね」

 「クリームや、それは違うと何度も言っておるじゃろうが」

 「左様でございます。スポンジ姫は、少々世間を知らないだけでございます。町に下り、世の中が分かればきっと、立派な姫になられるお方です」

 「そうだといいのですけれども」

 クリーム王妃、苦しそうにせき込み始めます。

 「すまんが、あの子の世話をよろしく頼む」

 「かしこまいりました。こちらこそ、私めごときの提案を聞き入れていただき、光栄でございます。このティラミス、命を懸けて姫様をお守りいたしますので、どうかご安心を」

 クリーム王妃の背中を摩ってやりながら、タルト国王は、頼んだぞと言います。

 ティラミスは頭を下げ、部屋を後にしました。

 

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