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二の巻 町の暮らし⑥

 「グミの嘘つき!」

 学校へ着き、真っ先にグミを探し出したスポンジ姫は、プンプンしながら文句を言いますが、当の本人は何のことやらわかりません。

 「何が?」

 キョトンとした顔で見られ、スポンジはまたそれに腹を立てます。

 「何がじゃないわよ。あなたが教えてくれた通りにしたのに、全然ダメだったじゃない」

 しばらく目をくるくる回していたグミでしたが、小さな声を上げ、どうやらようやく思い出したようです。

 「ああ。もしかして昨日の」

 「あなたのせいで、私は大勢の人の前で、醜態をさらさなければならないのよ。どうしてくれるのよ」

 無茶苦茶な話です。

 「そんなの知らないわ。私なら、大人の一人や二人、騙せるって言っただけでしょ。大体自分の演技が下手でばれたのに、私のせいにしないでよ」

 「何ですって」

 きーっと頭に血がのぼったスポンジ姫が、グミに詰め寄って行きます。

 「ケンカだ」「ケンカだ」

 キャラメル兄弟が、合唱し始めると、クラスメイトが集まり出してきました。

 クラスメイトの大半は、訳が分からないまま、スポンジの味方に付いての横やりです。さすがにこの騒ぎ、放っておくわけにはいかなくなった、学級委員であるマドレーヌが、やれやれと二人の間に割って入ります。

 「あなたたち何をしているの?」

 「知らないわ。スポンジちゃんが、急に私に絡んで来たのよ」

 「そうなの?」

 仲裁に入ったマドレーヌが訊かれ、スポンジはそっぽを向いてしまいます。

 「スポンジちゃん、きみの気持ちは分かるけど、そういう愛度、良くないと思う」

 困り果てたマドレーヌに助け舟を出したのは、ミントです。

 「スポンジちゃん、私も走るのとか苦手だけど、一緒に頑張ろう」

 キャンディに手を掴まれ、スポンジは耳の裏まで赤くなります。

 「大丈夫だよ。スポンジちゃんかわいいし、ダンスでお尻フリフリするところなんか、きっとみんなの心を鷲掴みだよ」

 「そ、そうかしら?」

 クッキーの言葉に、スポンジは口ごまらせます。

 「支度、しよう」

 二人に背中を押され、スポンジは渋々と頷きます。

 「さぁみんな、早く支度して、校庭へ行きましょ」

 一件落着を見せたその時です。

 「ちょっと待ってよ。私に何か一言ないの?」

 何事もなかったことにされ掛かり、面白く思わないグミの抗議に、誰もが眉間に皺をよせます。

 「ねぇ、謝ってよ」

 「ごめんなさい」

 消え入りそうな声で謝るスポンジに、グミは鼻を一つ鳴らして言います。

 「聞こえない。はっきり言ってよ」

 「グミ、うるさい」

 「何こいつ調子載ってんの?」

 珍しいことです。事なかれ主義のビターとベイクドが口を挟んできました。

 「調子なんか」

 グミは口を尖らせ言い返そうとしましたが、ビターに睨まれ、俯いてしまいます。

 「私、間違ったこと、言ってないのに、何よ何よ。ビターまでそんなこと言わなくたって」

 完璧にいじけてしまったグミを見て、ベイクドがビターを突っつきます。

 目配せをされ、渋々とビターが優しい声を作っての慰めをします。

 「まぁ災難だったよな。だけどそこはグミの優しさでさ、許してあげない?」

 「ビターがそこまで言うなら、仕方がないな」

 ニカッと歯を出して微笑んで来るグミに、ビターは背筋を冷やしながらの、引き攣り笑いで答えます。

 「もう仕方がないわね。良いわ許してあげる」

 たいして長くもない髪を指で払ったグミに、手を取られそうになり、慌ててひっこめます。

 「ビター。急ごうぜ」

 ベイクドに促され、ビターは慌てて教室を出て行きます。

 「まったく初心ね」

 二人のやり取りを見て、不思議に思ったスポンジは隣で着替えをしているキャンディたちに聞きました。

 「あの二人って、何かあるわけ?」

 「ないない」

 「グミって、自己中だから気にしなくていいよ」

 キャンディに続いて、クッキーがうんざり顔で答えます。

 そして、校内放送で集合が掛かり、いよいよ運動会の始まりです。

 校庭へ出たスポンjは、目を大きくして二人を見ました。

 もう大勢の人が協議が始まるのを、今か今かと待っているではありませんか?

 来賓席にちゃっかり座っているカステラおばさんとティラミスを見つけ、スポンジ姫は顔を顰めます。

 「じゃあ、私あっちだから」

 キャンディが手を振り行ってしまい、スポンジ姫たちも列に就きます。花火がドドーンと鳴り、歓声が沸きます。

 この光景に、スポンジ姫はしゅんとなってしまいました。

 「お父様、お母様……」

 行進の音楽が鳴り始め、、後ろに並ぶシュークリームに背中を押されたスポンジは、足をもつれさせながらのスタートです。

 放送係は、機械に強いミントとアナウンサー志望のキャンディーが担当です。

 キャンディ、流石です。アナウンサーを目指すだけはあります。語り口が、とても上手です。

 ミルフィーユ校長先生の開会宣言で幕が上がります。

 最初の競技は、綱引きです。

 ロール姉妹とキャラメル兄弟の対決です。どっちも互角の勝負で軍配は引き分けになりました。

 チュロスは、玉入れで大活躍です。

 ベイクドとビターチョコは何をさせても群を切って目立っています。二人が出場したリレーは、大盛り上がり。マドレーヌとゼリーは、華麗な舞を見せ、観客をすっかり魅了させていました。プリンとムースは二人仲良く二人三脚に出場です。転んでばかりの二人に、観客は大爆笑です。

 「さて、いよいよ最後の競技です」

 キャンディーがアナウンスに、ミントが行進曲を流します。

 マカロンがやけに張り切りながら1コースに入ります。クッキーも鉢巻を巻き直しての2コースです。シュークリームは、女ばかりのところに入れられたとふてくされての3コースに入り、スポンジ姫は4コースに入りました。まったく走る気がないジェラートが5コースに入って、横一列になったみんなが構え、モンブラン先生の合図を待ちます。

 「位置について、用意ドン」

 ピストルがなり、一斉に駆け出して行きます。マカロンが前をコロコロ転がって行きます。それを追うのがクッキーとシュークリームです。スポンジ姫も必死の形相で、先頭からかなり離されて走って行きます。

 

 「スポンジや~頑張れ」

 ひときわ大きな声で応援しているのは、カステラおばさんと、ティラミスです。

 いつの間に作ったのでしょう。ティラミスが大弾幕を振っています。恥ずかしさのあまり、スポンジ姫は顔を上げられません。

 その後ろから、ひたひたと近づいて来る足音に、スポンジ姫は気が付きました。

 どうしたことでしょう。ジェラートが、ものすごい勢いでスポンジ姫を抜いて行きます。その後も次々と抜いて、1等賞です。

 みんなが驚きを隠せません。 

 モンブラン先生すら、ゴールのピストルを撃つのを忘れていたぐらいです。


 結局、ジェラートはゴールテープを切るなり、酸欠を起こして医務室に運ばれてしまいましたが、それでも今日の主役は、間違いなくジェラートで決まりです。


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