二の巻 町の暮らし⑤
秋も深まり、町は大忙しです。誰もが急ぎ足で冬支度をしています。学校も行事が盛りだくさんで、毎日、スポンジ姫は憂鬱で仕方がありません。
秋晴れの日曜日、カステラおばさんは朝から大忙しです。台所ではコトコトとお鍋が大合唱をしています。
目覚ましが、朝です。朝です。と歌うようにスポンジ姫を起こし始めています。
次々と料理をテーブルに並べ満足げにしていたカステラおばさんですが、なかなか起きてこないスポン姫に眉を顰めます。
いくら寝起きの悪いスポンジ姫でも、10回目には必ず起き上がって来るのです。
カステラおばさん、心配になって様子を見に部屋へ入って行きます。
「スポンジや、もう起きないと遅れますよ」
頭からすっぽり被っている布団をそっと剥がし、
「スポンジや、躰の具合でも悪いのかい?」
カステラおばさんに聞かれたスポンジ姫は、目を開けるのもつらそうにしているではありませんか。
「おやおや大変どうしましょ。スポンジや」、どこか痛いところでもあるのかい?」
「おばさま、わたくし、何だか、熱があるみたいなの。頭も痛くって」
弱弱しい声で答えるスポンジ姫の額へ、すっと手が伸びます。
「おかしいですね。熱は無いようですが」
ギョッとなったスポンジ姫、慌てて目を開きました。
「ティラミス!」
「おはようございます。姫様」
「な、なんで、あんたがここにいるのよ」
「今日は姫様の運動会。このティラミス、応援に駆け付けない訳にはいきません」
「こ、来なくていいわよ」
キラリと、ティラミスのメガネが光ります。
「姫様、お加減の方は」
ハッとなったスポンジ姫は、急に、いたたたたとお腹を押さえて見せます。
「どちらが痛まれるんでしょうか?」
「どこもかしこもよ。これじゃ、今日は無理よ。モンブラン先生に連絡して頂戴」
「姫様、ご安心を。そんなこともあろうかと、このティラミス、エンゼル先生に医術を学んできております」
ティラミスが持っているものを見たスポンジ姫は、キャーッと悲鳴を上げます。
「どうして、あんたがそんなもの持っているのよ」
「いつ何時、何か起こるか分かりますまいと、国王より持たされました」
「ちゅ、注射はしなくてもいい。こうして横になっていれば治ります」
「それでは困ります。運動会が始まってしまうではありませんか」
「出なければいいのよ。ねっ、そうしましょう」
懇願するように言うスポンジ姫の腕を、ティラミスが掴みます。
「わ、わ、わ、分かったわ。出ます出ます。だから」
「ならば尚更」
「それには、心配及ばなくてよ」
ティラミスの手を振り解いたスポンジ姫は、さっとベッドから飛び降ります。
「ご覧の通り、もう治りました」
屈伸運動をしてみせるスポンジ姫に、ティラミスがにやりとします。
どうしていつもこう、タイミングよくティラミスは現れるのかしら?
スポンジ姫は、スープを掻き込みながら思います。
「姫、お急ぎくださいませ」
イチゴを放り込んだ瞬間に言われ、スポンジは噎せかえってしまいます。それを見たティラミスがまたまたあの大きくて太い針の注射器を手に、口元を緩ませて言うのです。
「やはりお加減がいまいちなのでは」
「わたくしのことは放っておいてよろしくてよ。おばさま、ごきげんよう」
ティラミスから逃げ出すように、家を飛びだして行くスポンジ姫でした。




