二の巻 町の暮らし①
初めての学校です。
来る道中、一人で歩いているスポンジ姫を不思議がって、いろいろな子が話しかけて来ました。
中でも、グミはしつっこいくらい、話し掛けてきました。
「あなたは転校生? ミルフィーユ校長から何も聞いていないわ。珍しいのよ。転校生なんてめったに来ないのよ。どこから来たのよ。ね、どうして黙っているの? あなたお口ないの? 私、良い人だから、そんな子でもお友達になってあげてもいいわよ。この学校ではね、あなたみたいな子は一発で嫌われちゃうのよ。でも安心して、私はそんな人たちと違うから。素もsもね、ここの生徒たちときたら、心狭すぎなのよ」
と、ずっとスポンジ姫が学校につくまでこの通りです。
「校長先生の部屋はあっちよ」
グミが、ぐ~んと首を伸ばして、指さします。
スポンジとしては、学校の情報などどうでも良かったのです。
そもそも自分みたいなお姫様が、どうして平民である子供たちと同じに、学校へ通わなくてはいけないのか、考えれば考えるほど、腹立たしく思えて仕方がありません。
「さぁこっちよ」
軽々しく手を持たれ、スポンジは絶叫しそうになりながら、グミの顔を見ました。
「緊張しているのね。でも大丈夫。私と一緒に居れば、ここでの生活は安泰よ。保証するわ」
「手、を放して」
怒りで、スポンジの肩が震えています。
「まぁかわいそうに、そんな震えなくても大丈夫よ。ごめん、少し脅かし過ぎたわね」
「そうじゃなくって、手を握られるのはちょっと」
「ああごめんなさい。つい癖で」
スポンジのイライラが募って行きます。
そもそも執事であるティラミスがお供しないって、どういうこと? それに何なのこの子? 馴れ馴れしすぎない? バニラだって、もっとましな振る舞いをするわ。
グミがそばかすだらけの顔で笑いかけて来るのですが、スポンジはにこりとする気になれません。
どこからか聞こえてくる声。
「あの子かわいそう」
「グミだぜ。あいつ、仲間見つけて来たのか」
「ゲロゲロ」
視線も冷たく感じます。
「あの、私一人で大丈夫ですから」
「気にしないで、私ね、兄弟が多いから、面倒見るのは慣れっこだから」
グミに微笑みかけられ、スポンジはつい目を反らしてしまいます。
「さぁ着いたわ」
グミのノックに応じ、ミルフィーユ校長先生が出てきました。
「グミ君、おはよう。どうしましたかね?」
「ミルフィーユ校長先生、転校生の、あら私、あなたの名前を聞くのを忘れていたわ。何ていうお名前?」
そう言いながら振り返えられ、スポンジは良い瞬言葉を詰まらせます。
「くれぐれも身分を明かされませんように。良いですか。それは肝に命じておいてください」
憎々しげに言うティラミスの顔が浮かんだのです。
ニコニコとしながら首を傾げるグミを前に、スポンジは何も思いつくことが出来ません。
「スポンジさん、お待ちしていましたよ」
なんてことしてくれるの?
驚きと怒りに満ちた目で、スポンジはミルフィーユ校長を見ます。
「まぁ、素敵。あなたスポンジって言うの? だからだからなのね。お姫様と同じ名前なんて良いな。そのフワフワした髪も羨ましいな、だからきっとママたちはその名前を選んだのね」
褒められて、嬉しいスポンジですが、少し複雑な気分です。
難なくドアを通され、スポンジは首を傾げます。
「どうかされましたか?」
「いいえ」
「ミルフィーユ校長、私ここでお待ちしましょうか。スポンジちゃん、教室、分らないだろうから」
「大丈夫ですよ。君は教室に行きたまえ」
人に親切にされるのも疲れるものです。余計なことは言えません。ティラミスのメガネがキラリと光らせ、くどいほど釘を刺されたことです。
「ばれたら永久に追放と、国王様が仰っておりました」
「お父様がそんなことをするはずないわ」
そう反論するスポンジに、ティラミスは冷ややかな笑みを浮かべて言うのです。
「さぁそれはどうでしょう」
今日までのいきさつを考えると、あながちないとは言い切れません。
「分かったわよ。学校ではなるべく話さないようにするわ。それでいいんでしょ?」
ティラミスは、本当に嫌な男です。
間もなくして、校長室がノックされ、一人の男性が入ってきました。
一体全体何なんでしょう?
さっきのグミといい、この男性といい。
さわやかな笑みとともに差し出された手に、スポンジは顔を顰めさせます。
「どうやら、恥ずかしがり屋さんっていうのは、本当のようですね校長」
カーリーヘアを掻き上げ、八重歯を見せた笑顔です。
「僕は君の担任、モンブランです。なかよく勉強して行きましょう」
良く日に焼けた顔に八重歯が映える笑顔。
きっと自分に自信があるのでしょう。
求められた握手に、スポンジは渋々答えますが、内心、いやでいやで仕方がありません。
「学校は素晴らし所です。君ならすぐにお友達が出来るでしょう。この僕が保証します。だから怖がらないで。君の人生はきっと素晴らしくなる」
熱く語るモンブラン先生の傍ら、スポンジは目前さえ感じ始めていました。
ここで本当にやっていけるのでしょうか?
不安が過ります。
「病気は徐々に治して行けばいいでしょう。焦らなくてもいい。ここは空気もおいしい。さ、モンブラン先生、スポンジさんを頼みましたよ」
「そうですね。じゃあ行きましょうか」
爽やかに笑いかけて来るもんブランですが、微笑み返す気にもなれないスポンジでした。




