違う世界1
*
ようやく忍耐の会議が終わると、夕刻からの晩餐会のために、一度自室に戻って身支度を整えた。
マーヤが仕立て直してくれた明るいエメラルドグリーン色のドレスに着替えると、少しだけど心が安らいで、頭痛も落ち着いた。
このドレスは、色が私の瞳の色にとてもよく似ているので、始めて見たときから大好きだった。
『姫さまらしく、明るくて、かわいらしい感じにしておきましたからね』
とマーヤが言ってくれてたのを思い出した。
……センチュリアのみんな、元気にしてるかな。
ドレスはいくつか持たされたのだけど、どれも仮縫い以来見る暇がなくて、今日衣装鞄から出してみるまでどんな風に仕立て直してくれたのかお楽しみだったの。
今日のこのドレスは、胸元とスカート部分のチュールレースとハイウエストなラインが、とても女の子って感じに仕上がっていた。
どちらかというと大柄な私には、気恥ずかしいんだけど。
いつもスーツしか着ていないんだもの、たまにはいいわよね。それに姉上のお下がりだし。
私がドレスなんて新調するわけないでしょ。
一着がとても高いし、めったに着るものじゃないし。
姉上がグラムート王国に嫁ぐときに、はいて捨てるほどドレスを置いていったから、今回持ってきたドレスは全部それをありがたく活用させてもらってる。
ドレスなんて一着でいいと思うのだけど、毎回違うものを着るのが淑女のたしなみなんですって。
衣装鞄の中には、
『*日目の夜は、*色のドレスに**のイヤリングとネックレスを合わせて着ること。
*日目の夜は……』
というマーヤ手書きの『コーディネイト一覧表』まで入っていた。ありがとう、マーヤ。
ちょうど、身支度が終わった頃にユートレクトが迎えに来てくれたので、私たちは晩餐会の会場へ向かった。
晩餐会の会場では、弦楽器の調べが広い会場内にちょうどいい音量で優雅に響いていた。
天井からは、センチュリアの王宮にあるものよりも二倍は大きいシャンデリアが、あちこちからぶら下がっている。
いい匂いが私の食欲を刺激した。
ビュッフェ形式になっている料理も、たくさんの種類が惜しげもない量で置かれていて、私は早くもどのお料理からいただこうか頭の中で計画を立てていた。
それにしても。
「どうしてこんなに人がたくさんいるのかしら、ユートレクト?」
この『世界会議』のために、総勢二千人くらいがローフェンディアに来てはいるけど、もちろんその全員が晩餐会に出席できるわけじゃない。
出席できるのは、国家元首・閣僚代表と、その配偶者や代表以外の閣僚たちくらいまでのはずなんだけど、それにしては人が多すぎた。
特に着飾った女性の多いこと!
こんなに諸国の王妃さまやファーストレディがこの会議についてきているとは、とてもじゃないけど思えない。
おまけにみんな若すぎる。
私と同じくらいか、それより年下の小さな淑女も多くいた。
「ローフェンディアの貴族も来ているからです。彼らは会議には出席できませんが、夜会などには顔を出せますから」
ユートレクトの苦虫を噛み潰したような声を聞いて、納得した。
「彼らにとって『世界会議』の夜会は、ご令嬢を社交界デビューさせるには最適な場所なのです」
「他国の王族や要職にいる方々が大勢集まるから、おめがねにかなったら話が早い、ということね?」
「そういうことです」
なるほどね。
ローフェンディアの貴族の皆さんにとっては、自分の国にいながら諸国とパイプを持てる関係を築く、いい機会ってことなのよね。
遠くの方で、誰かがこちらに向かって手を振っているのが見えた。
しかも女性だった。
私の知らない人だから、きっとユートレクトの知り合いに違いない。
私がまともに知っている人なんて、ここで会うとしたら姉上夫妻しかいないから。
「あちらの方、あなたのお知り合いじゃなくて?」
「いえ」
「そんなことないでしょう。
ほら、こちらに近づいていらしてよ?」
「……」
ユートレクトの顔が『おまえ、俺がいなくなったら、何かやらかすんじゃないだろうな?』と、明らかにもの語っていた。
「私なら大丈夫です。
あちらの美味しそうなお料理をひと通りいただいたら、バルコニーでおとなしくして、適当な時間においとましますから」
手を振っていた女性は、手を下ろすと、だんだんこちらに近づいてきた。
淡いピンクの可憐なドレスが、とてもよく似合っている。小柄でかわいらしい女性だ。
と思うと、気づいてしまった。
表情は変わらないけど、ユートレクトの目がその女性だけを凝視していることに。
こんな目をした彼は、初めて見た。
「では、私はお食事をいただいてきますわ。今日はお疲れさま。また明日、ごきげんよう」
私はユートレクトにそう言って、こちらに向かってくる女性に軽く一礼すると、ドレスを身にまとった最高位の淑女に許される限界の速さで、料理が置かれているテーブルへ向かった。
あのユートレクトの目は、間違いなく、異性を見る目だと思ったから、早く立ち去ってあげたかった……
違う。
なぜか、早くいなくなりたいと思った。
**
ユートレクトは今でもローフェンディア帝国の第二皇子で、皇位継承権も第四位を持っている。
今のローフェンディア皇帝には、皇妃と側室との間に生まれたお子様が男女合わせて四十三人いるから、それを考えると、第四位ってすごいなあと思う。
第二皇子なのに皇位継承権が第四位なのは、母方の身分の問題とかがあるみたい。
ユートレクトのお母さんは、爵位のない下級貴族の出身だった。
当の本人は『皇籍なぞ、とうの昔に返上した』と言っていたけど、ローフェンディア帝国がユートレクトを皇籍から抹消したなんて話は聞いてないから、当人がなんと言おうと、今でもローフェンディアの皇族であることに違いはない。
その証拠に、今回彼が寝泊りをしているのは、ローフェンディアの王宮内にある以前自分の部屋だった場所だ。
今回の『世界会議』では、出席者・随員が過去最高の人数になったので、宿泊施設が足りなくなったらしい。
それで、一人分でも場所を開けてほしいという、ローフェンディア世界会議実行委員会からのたってのお願いで、ユートレクトは、いやいや、しぶしぶ、仕方なく、以前の自室に寝泊りすることになった。
ユートレクトは『世界最後の楽園』ことマスガナス諸島の他にも、あちこちの国を放浪していたのだけど、その本当の理由はまだよくわからない。本人いわく、
『貴族どもの政権争いや後継者争いの種に使われるのは、うんざりした。誰があんな奴らのために皇帝になぞになるか。そんなに俺に失脚させられたいのか。
兄上の何が不服だというのだ。性格的には……問題が山積みだが』
らしいんだけど、私が思うにそれ以外にも理由がありそうだった。今でもわからないけど……
晩餐会のビュッフェを前菜からデザートまで、計画通り余すところなく堪能した私は、人気のないバルコニーで夜風に吹かれていた。
城下の街の灯りが宝石のように綺麗に見えた。
でも、その分夜空は、街の灯りを受けてくすんでしまっている。
早くセンチュリアに戻りたかった。
街の灯りは、ここと比べ物にならないくらい少ないけれど、夜空がとても近くて綺麗なセンチュリアに。
ここに私の居場所はない。
先刻、ユートレクトと別れてから、彼がどこに行ったのかも知れなかった。
姉上夫妻を探していたら、ローフェンディアの貴族令嬢らしい子たちに思いきりぶつかられたうえに、ピンヒールのかかとで足まで踏まれた。
こちらが丁重に謝ったのに、貴族令嬢たちは私に目もくれずに、そのままきゃあきゃあと騒ぎながら去っていってしまった。
そうしたら、腹が立つというよりもなんだか情けなくなって、それ以上会場をうろつくのがいやになってしまった。
こんな場所をなんなく歩いていられる人たちを、羨ましいと……思わなくもないけど、こんなところをうまく歩けなくたって政治はできるわ、と思うことにしてバルコニーに出た。
会場の中ではダンスが始まっているようだった。
さっきとは違う陽気な曲が流れている。
私の気持ちは、陽気とはほど遠いところにあった。
せっかくマーヤが直してくれたドレスも、私を元気づける力を使い果たしてしまったみたいだった。
もうそろそろ自室に戻ってもいいかな、と思ったそのときだった。
「あら、センチュリアの……アレクセーリナ女王陛下ではなくて?」
聞き覚えのある艶やかな声が、私の背後から聞こえた。
先刻の会議で議長をつとめていた、ファレーラ王国のララメル女王が嫣然とした微笑みを浮かべて立っていた。
***
ララメル女王は、南方独特の鮮やかな色合いと大胆なデザインの衣裳を身にまとい、にっこり……というにはあまりにも色っぽく微笑んでいた。
女の私でさえそう思ってしまうのだから、男性がこの人に微笑まれたらいちころに違いない。
「どうなさったの、こんなところで。お一人だなんて、お加減でもお悪いの?」
「いえ、お気遣いありがとうございます。
そういうわけではないのです。少し夜風に当たりたくて」
「そう……おとなり、よろしくて?」
「あ、はい」
私が返事するよりも早く、ララメル女王は私の横にくると、バルコニーの優雅な手すりに美しい背中をもたせかけた。
「確かにここの方が気持ちがよくってね。
部屋の中は、わたくし、あまり好きではないんですの。息が詰まりそうで。
先ほどの会議も、休憩時間がとても待ち遠しかったのですわ」
気さくなララメル女王の言葉に、思わず顔がほころんでしまった。
「あら、お笑いになると、えくぼがおできになるのね。とってもかわいらしくてよ」
「え……!? あ、その、そんな、そんなこと、ありません……」
突然おかしなことを言うものだから、私は思いっきり動揺してしまった。
こんな綺麗な人に『かわいらしい』なんて言われたら、そりゃ、たとえお世辞でも嬉しいけど。
「何をおっしゃるの。ここの貴族のご令嬢たちより、よほど素敵よ。
先刻、足を踏まれてしまわれたでしょう? わたくし、遠くにいたものだからお助けできなかったのだけど、もう痛まなくて?」
うそ、あんなところ見られてたの!?
あああ、恥ずかしいー!
あのときの私、すごく格好悪かったから、誰も見てませんようにって思ってたのにー!!
「はい、もう大丈夫です。お気遣い、本当にありがとうございます、ララメル女王陛下」
「まああ、そんな堅苦しい呼び方なさらないで。どうぞ、ララメルとお呼びになってちょうだい」
あ、あの……
ご自分は、私のことアレクセーリナ女王陛下って呼ばれたかと思うんですけど。
とはまさか言えないから、聞かなかったことにして、ありがたくお受けすることにした。
「ありがとうございます。では、私のこともアレクとお呼びください」
もちろん交換条件で。
「ふふ、そうね。それがよくってね。では、ありがたくそうさせていただくわ。
アレク、わたくしたち、気が合いそうね?」
はい?
この、断崖絶壁、色気なし、男っ気もなし、加えて食欲満点な私をつかまえて、一体どこに共通点を見つけて『気が合いそうだ』とおっしゃいますか?
私がとても返答に困っていると、
「あら、どうしてそんな、不思議そうな顔をしていらっしゃるの?
今は宴もたけなわだというのに、こうして、女一人で、風に吹かれていたいと思うなんて。
今日ここに来ている淑女の中では、お互い、変わり者だと思わなくて?」
ええ、まさにその通りです。
その通りすぎて言葉が出てきません。
それに、ご自分のことまで変わり者呼ばわりするって。
ララメル女王の口から、まさかこんな言葉たちが出てこようとは夢にも思っていなかったので、私は思いきり面食らっていた。
私はもちろん、この夜会の出席者の中では異色の人間だと思うけど、確かに、ララメル女王も変わっているのかもしれない。
私のような小娘をつかまえて、足の心配までしてくれるなんて。
私に近づいたのには何か裏があるのかもしれないとも考えたけど、ファレーラ王国と私の国にはあまり接点はない。
ララメル女王が、自分の国より小さい国の『平民出身の女王』ということで、各国の首脳に評判のよくない私と仲良くして、マイナスになることはあってもプラスになる要素はほとんどないはず。
相変わらず嫣然とした微笑み、なのだけど。
ララメル女王の片頬に、えくぼがあるのを見つけた。
そうしたら不思議と、この人は信じてもいいと思った。
私は思い切って言ってみた。
「そうですね、ララメル。
あなたのような綺麗な方が、今、私といると知れたら、私、他の殿方たちに嫉妬されてしまうかもしれません」
「ふふ……アレク、やっぱりわたくしたち、気が合いそうですわね。
さあ、本当に大丈夫か、足を見せてごらんなさい……ああ、やっぱり血が出ていますわ。さ、医務室にまいりましょう。
明日も窮屈な会議や夜会で、サンダルを履いているわけにはまいりませんもの。女という生き物は、何かと大変ですわ」
正解を告げる鐘の音が、聞こえたような気がした。
こう見えても、昔から人を見る目だけは確かだったんだから。
にしても、ララメル女王の、南国の鳥のように明るくせわしない……だけど心が和むおしゃべりには、頭が上がりそうになかった。
私たちは寂しかったバルコニーを出て晩餐会の会場を抜けると、医務室に向かって静かな廊下を歩き始めた。
足は確かにまだ少し痛かったけど、心はいつの間にか南国の青空のように晴れやかだった。
****
「それにしても、ここの迎賓館は本当に広いわね。うちの王宮の何倍もありそうですわ」
「そうですね、迷子になりそう……」
私とララメル女王は、医務室に向かっているのだけど。
それらしい部屋が全く見えてこなかった。
これだけ人間が集まっていれば、医務室の一つや二つ臨時にでも作っているとは思うんだけど。
私がローフェンディアの貴族令嬢Yさん(ララメル女王命名)にピンヒールで思いっきり踏まれた足を、治療してもらおう! ということで、ララメル女王と二人、晩餐会を抜け出したまではよかったのだけど。
「一体、ここはどこかしらね?」
「もしかして、完全に迷子になりましたかね」
「そうかもしれなくてよ、アレク。あらまあどうしましょう」
どうしましょう、と言っているわりには、ララメル女王の口調から焦りは全く感じられない。
「アレク、足は大丈夫? 少し休みましょうか」
「いえ、歩いているだけでは痛みませんから、大丈夫です。
お気遣いありがとうございます、ララメル」
「そう? それならばよいのだけど。
ああ、こんなことなら会場を出るとき、衛兵に医務室の場所を聞いておくべきでしたわ。
怪我をしているのにこんなに歩かせてしまって、ごめんなさいね。
わたくしったら、後先考えずに行動してしまうことが多いらしくて、よく重臣たちに叱られますの」
「え?」
心のつぶやきが、思わず口を突いてしまった。
「この間もね、わたくし、農民たちの税を下げようと思ったんですの。
今年は、天候の悪い日が続いたものだから、作物のできが少しよくなくって。
それで、公文書を作って農務大臣に渡したら、しばらくして、大臣が血相を変えて戻ってきましたの。
何事かと思ったら、税率を一割引き下げるところが、十割になっていたみたいだったんですの。
いくらなんでも十割はないでしょうって、さんざん絞られましたのよ」
「それは……そうかもしれませんね。十割っていったら、税金完全免除になってしまいますものね」
後先考えない行動、とは少し違う気がするけど、ララメル女王の秀麗な容姿の奥に隠された、恐るべき私との共通点を見つけてしまった。
それは……いわゆる、おっちょこちょい。
私が、いまだにに半年に一度くらいやらかして、ユートレクトに定規の角でこづかれる類の。
ポカミス、ともいう。
「そうなんですの。それでね、他にも……」
ララメル女王が武勇伝を続けようとしたときだった。
少し前方の方から、かすかに扉の開く音がした。
誰かが部屋から出てきたようだった。こちらに向かって歩いてくる。
私とララメル女王は、歩くのをやめて反射的に息をひそめた。
だって。
この迎賓館にはおよそ似つかわしくない、全身黒装束の人だったんだもの。
なんだか隠れたい衝動にかられたけど、廊下は一本道、近くには扉もない。
隠れたい、と感じた理由がわかったのは、その右手にぎらりと光るものを見つけてからだった。
赤い色をしたたらせた小剣が、黒装束の手に握られていた。
*****
「きゃああああああああ!!!」
ララメル女王の、上品ながらも盛大なボリュームの悲鳴に、私はわれに返った。
「……!!」
あんまりびっくりしたせいか、先に叫ばれてしまったせいなのかはわからないけど、もう声が出てこなくて、私はその場に座り込みそうになって……
って、だめだめ! へたれこんでる場合じゃないわ!
逃げたい……けど、この黒装束が出てきた部屋の中の人は一体どうなっているのかを考えると、逃げるなんてできない。
ララメル女王の甲高い悲鳴に恐れをなしたのか、黒装束は廊下の奥の方へ逃走した。
追わなくちゃ!
私はかかとの高い靴を脱ぎ捨てると、
「ララメル、あの部屋の方をお願いします!」
と叫んで、返事も聞かずに、最高位の淑女にはおよそあるまじき格好で、黒装束が逃げた方へ駆け出した。
「火事よ! みんな、早くきて! 火を消して!!」
火事じゃないんだけど『人殺し!』(まだそうと決まったわけじゃないけど)なんて叫んだら、誰も怖くなって出てきてくれないだろうから、こう叫びながら私は黒装束を追った。平民時代の知恵よ。
足の速さには自信があるのだけど、さすがにドレスをまくりあげて怪我をしている足で、長く走るのは少し辛い。
廊下の突き当たりは、バルコニーになっているみたいだった。
ここは二階。いくら私でも、飛び降りてまでは追いかけられない。
このまま外に出られてしまったら、私に勝ち目はない。
後ろへ消えていく視界の隅に、床に落ちた赤い滴が見えた。
あと少しで追いつける、絶対に捕まえなきゃ!
黒装束のマントが私の手の先に触れたので、つかもうとしたのだけどつかめなかった。
ばたん! という大きな音がして、気がつけば、扉が大きく開け放たれたバルコニーで、黒装束と向かい合っていた。
黒装束が、血に濡れた小剣を私に向けた。
「なによ! そんなものくらいじゃ、この迎賓館は燃えないわよ!」
さすがにドレスを持つ手が震えた。
黒装束の小剣を、たいまつか何かと思った方が気が楽だった。
けど、せっかく追いついたんだもの、ここで逃がしちゃ女がすたるわ。
「……」
黒装束は、私を頭のねじが少し外れた女とでも思ったのか、剣を収めると身を翻した。
「待っ……逃がさないわよ、この人殺し!」
とっさに私は叫んで、黒装束の背後に飛びついた。
急に視界が広くなった。夜空が見えて、広がって……
あれ?
なんだか、身体がゆっくり落ちていく感じが、するけど……?
私の記憶は、ここでとぎれた。