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一着入魂1



 疲れた……

 朝からいろんな意味で本当に疲れた。


 午前中は、二日目から昨日までの『各地域首脳及び閣僚代表会議』で決まった事項の報告会みたいなものだったから、おとなしく聞いてるだけで済んで本当によかった。

 まだ発表が済んでいない地域も残っているし、今日の会議はゆっくりできそうだわ。


 でも、眠りの妖精たちはやっぱり手強かった。

 眠気覚ましに、手のひらや手の甲を指でつねったり、鉛筆の芯先を刺したりしてたら赤くなっちゃって。最高位の淑女として恥ずかしいから内緒にしておいてね。


 今はちょうど昼食の休憩に入ったところ。

 ユートレクトは私用があるらしくて、今日も一人で昼食会場に向かっているのだけど。


 すごく疲れた顔してたな。

 朝から神経すり減らすようなことして、本当に悪いと思ってる。


 だけど、心の中で悔やんでも過去には戻れないし、悪いと思いながらも彼の心に少しでも触れられたことに、喜びを感じている自分がとてもいやだったので、今朝の出来事はもう思い返さないことにした。


 ところで『私用』って何かしら。

 公務に携わること….…お得意の諜報活動とかを極秘にするときは私に黙って動いてるから、本当に職務に関係ないプライベートなことだと思うのだけど。お昼休みくらいゆっくりしていてほしい。


「アレク! まあ、歩くのが早いのね、お待ちになって!」


 聞き間違うことのない華やかな声がしたので振り向くと、ララメル女王が肩で息をしながらこちらに向かってこられていた。


「すみませんララメル……早足なもので」

「そうですわ、早過ぎてよ。とても女性とは思えない速さですわ」


 ごめんなさい、淑女にあるまじき大股で。

 だって早くランチにありつきたいんですもん。


 それに、私は白色のパンツスーツにローヒールだけど、ララメル女王はお国の裾の長い伝統衣装を着ているから、足まわりの自由が利かないと思うのよね。


 私たちは一緒に食事を摂ることにして、ララメル女王の歩調に合わせて歩きはじめた。


「あれから、フリッツはなにも言わなくて?」

「はい、ご心配おかけして、本当に申し訳ありませんでした」

「そう……安心しましたわ。

 余計なことを言ってしまったと後悔していましたの。

 ごめんなさいね、わたくし、頭に血がのぼると、思っていることを全部言ってしまうものだから」

「いえ、とんでもありません。お気遣い感謝しております」


 私は心からララメル女王にお礼を言った。

 ララメル女王が今朝言ったことは、ユートレクトを傷つけたかもしれないけど、私だけでなく奴のことも考えての言葉だったのだし。それは奴もわかってると思う。


「ありがとうアレク……そうだわ、明日の大舞踏会、どうなさるおつもり?」

「はい?」


 突然降ってきた話題に頭がついていけないでいると、ララメル女王は瞳をきらきら輝かせながら、


「大舞踏会は、ローフェンディアの貴族や他国の高官も出席する、世界最大規模の邂逅の舞台ですもの。

 今年こそ運命の殿方と出会って身を固め、きっとリースルを見返してやるんですわ……あら、わたくしのことはいいんですのよ。

 アレク、あなたは何か策を立てていらっしゃるの?」


 策って……そんなもの、考えてるわけないじゃないの。


 あ、仮面舞踏会で皇帝陛下からの記念品は欲しいけど、世界各国のお偉いさんの顔だけでも怪しいのに、ローフェンディアの貴族の皆さんの顔までは、とてもじゃないけど覚え切れないわ。


「いえ……あの、ララメルは仮面舞踏会で記念品を下賜されたことはおありですか?」


 『記念品の話じゃなくてよ、この一大イベントで運命の殿方を見つけなくてどうしますの?』とか言われることを承知でララメル女王に聞いてみた。


 だって、このまま男性関係の話になったら、またホク王子(?)の名前が出てきそうじゃない? 顔に出さずに聞いていられるか自信がないもの。


 けど、ララメル女王は私の予想に反して快く質問に答えてくれた。


「ええ、三回は間違いなく頂いていますわ。全部お友達に差し上げましたけど。

 わたくし、殿方の顔とにっくき女の顔は、一度見たら忘れませんのよ」

「そ、そうですか」


 いたよここに。皇帝陛下のご威光をもろともしない人が。

 『売った』じゃなくて『差し上げた』なだけまし……なのかしら。


 ララメル女王は、自分の台詞で思い出したように言葉を継いだ。


「にっくき女といえば、一日目にあなたの足を踏みつけた貴族令嬢Yさんも、きっとまた厚かましく来ますわね。あの方、許しませんわ……」


 足を踏まれた当の本人が忘れていたことを、よく覚えていられると思う。

 ララメル女王の異様に怨念のこもった眼を見て、さすがに私は怖くなった。


「ララメル、私の足はだいぶ治りましたから、もう」

「いいえ、あの方だけは、許しておくわけにはまいりませんわ。あの方はね、わたくしが運命の殿方と定めた方を、卑劣な手段でかすめ取ったのです!

 覚えていらっしゃい、Yさん。あなたの両足を完膚なきまでに踏みつけて、百倍も素敵な、新たな運命の殿方を見せつけてやりますわ!」


 なるほど、そういう事情があったのね。

 それなら私に止める権利はないけど、貴族令嬢Yさんの明日が心配になってきた。

 ララメル女王の報復ってどんな風なのかしら。ユートレクトの『秘密攻撃』とは違う気はするんだけど。


 私はもはや完全に他人事のように思っていたけど、次の一言で身の危険を感じずにはいられなくなった。


「そうと決まれば、明日の作戦を立てなくてはいけませんわ。

 アレク、あなたもこのままでは、いつまでたっても結婚できなくてよ。わたくしと共に、運命の殿方を……幸せをつかみにいきましょう!」



**



 昨日までとはまた違う昼食会場に着くと、ララメル女王と私は仲良く『本日の貴婦人ランチセット』を注文した。

 これは、昨日までお世話になってた食事会場にはなかったメニューだわ。

 『貴婦人』というだけあって、デザートもついてるみたいだからとっても楽しみ。


 注文をして落ち着くと、ララメル女王は声を低くして、


「大体はフリッツに聞きましたけれど、昨日は大変でしたわね。お身体は大丈夫ですの?」

「はい、おかげさまで。ご心配おかけして申し訳ありませんでした」

「本当に? 女性の尊厳を脅かされるようなことはされなくて?」

「お気遣いありがとうございます、正当防衛でなんとか身を守りました」


 ララメル女王にも心配をかけていたことに恐縮しながら、私は少しおどけた調子で二の腕に力こぶを作る格好をした。

 なんとなくでもこういう仕草ができてしまうのは、ララメル女王が気さくでいい方だからだと思う。ホク王子と私をくっつけようとしているのは別にして。


 ララメル女王はくすっと笑うと、


「まあ頼もしい方ね。わたくし、あなたのそういうところが大好きですわ。

 でもねアレク、女には守ってくれる騎士がいるのが一番でしてよ」


 そのためにも、明日の大舞踏会では必ず運命の殿方を見つけますわよ、とララメル女王は言うと、大舞踏会は夕刻からだから、明日の会議が終わったらすぐに着替えられるように、今夜から衣装の確認をしておいた方がよくてよ……などと、明日への心得を聞かせてくれた。


 ララメル女王が私を気遣って、心が楽しくなるような話をしてくれているような気がして、申し訳ないなと思いながらも嬉しかった。

 昨日の出来事からはもう立ち直っているんだけど、今朝のことがまだ頭の片隅にあったから、それを忘れさせてもらおうと思った。


「前半の仮面舞踏会は社交辞令ですわね。背格好だけでは判断できませんもの、怖くて。

 こちらが色よい風に見せても、いざ相手が仮面を取ったらご老人、なんてことになったら大変ですのよ、本当に。

 ですけど、仮面の下が好男子ということもありますから、気は抜けませんわ……アレク、仮面は準備なさっていらして?」


 え、仮面?

 そっか、仮面舞踏会だものね、いるわよね、仮面。


 もちろん持ってきてるわけがないので、私は正直に告白することにした。


「いえそれが、とてもお恥ずかしい話なんですが、仮面舞踏会があることを知ったのが今朝なんです」


 こんな変わった催物があるのに、どうしてユートレクトは教えてくれなかったのかしら。

 忘れてた、なんてことはないと思うけど。


 そうだ、リースルさまに仮面をお借りできるか聞いてみようかな。きっといくつかお持ちなんじゃないかしら……なんて厚かましいことを考えていると、


「まあ、そうですの! でしたら、リースルに借りるといいですわ。わたくしも、何度か借りたことがありますの。

 にしてもひどい話ですわね。あのお堅い方は、こういった催物に興味がないかもしれませんけれど、わたくしたちにとっては一生を決める大切な催物ですのに」


 ララメル女王は、私が考えていたことと同じことを提案してくれたので安心した。


 やっぱりユートレクトは忘れてたのかしら。

 もしかして、奴も『リースルに借りればいい』なんて考えてたりして。これならありえるけど。


 私がリースルさまに聞いてみますと言うと、ララメル女王はご自分のことのように喜んで、


「ぜひそうなさるとよろしいわ。そのときは、ぜひわたくしもご一緒しますわ……ああそうですわ、いいことを思いつきましたわ!

 今日の会議が終わったら、リースルのところへ行きましょう!

 昨日お誘いした夕食の件ですけど、ホク王子のご都合が悪くなってしまわれたのですって。ですから今日も女三人、仲良くしましょう!」


 うーん……


 ホク王子の都合が悪くなったのは、クラウス皇太子に呼ばれてるからだと思うんだけど、それって私も行かなくちゃいけないのよね。

 ホク王子と一緒だなんて言ったら、ララメル女王は喜ぶのかもしれないけど。


 ていうか、私の仮面を選ぶのに一緒に行くなんて、ひょっとして私がつける仮面をホク王子に教える、とかそういうことじゃないでしょうね。


 私は会議が終わるまで返事を待ってもらうことにした。


 ちょうど『本日の貴婦人ランチセット』が運ばれてきたので、私が早速魚介類のパスタを食べようとすると、


「アレク、ドレスは決まっておいでなの?

 国からお持ちになったものがあると思いますけど、仮面舞踏会を知らないところをみたら、なんだか心配になってきましたわ」

「あ、はい、それは持ってきてはいるのですが」


 確かにセンチュリアからもドレスは持ってきてはいるし、リースルさまも見立ててくれるとおっしゃってくれている。

 だけど、それを言ってしまうと、私がリースルさまの寝室で寝泊りしてることまで話さないといけなくなるような気がして、うろたえてしまった。


 ララメル女王はそんな私の動揺など気にせずに、


「それもリースルに相談してみましょう。

 あの方は衣装持ちですから、一人分くらいどうということはありませんわ。お持ちになったドレスと合わせて吟味しましょう。

 運命の殿方に出会うためですもの、いくら吟味しても足りないくらいですわ。

 アレクにはどんな色がお似合いかしら。意外と大人な色がお似合いかもしれませんわね、濃赤ですとか、黒ですとか……

 まあ、なんて楽しいんでしょう! わたくし、妹を持ったような心地ですわ!」


 いつの間にか妹分にされた私は、そのことは心からありがたかった。

 今は久しぶりに女らしい会話を楽しむことにした。



***



 魚介類のパスタに海草のサラダ、トマトベースのあっさりしたスープとバケットが二切れ。

 これに飲み物(おかわり一回可)と、デザートに『旬の果実たっぷり焼き菓子・ジェリー・氷菓のプレート』とやらがついてあの値段なら、お財布に優しいと思うわ。


 さすが『本日の貴婦人ランチセット』だけあって、女性にお得な値段設定ね。パスタもエビやイカがぷりぷりしててとっても美味しかったし。


 私がようやく魚介類のパスタを食べ終えると、おしゃべりしているにもかかわらず、既に食事のお皿を全部空にしてデザートを待っているララメル女王はあたりを見回して、


「あら、今日はこんな時間なのに、まだ人が多いですわね」

「ララメル、今日の昼食休憩は昨日より30分長いそうです。昼食会場がここしかないせいだと思いますけど」


 昨日までは、各国がばらけて会議をしていたせいで食事会場もそんなに混まずに済んだけど、今日はみんなが一堂に会して同じ食事会場に詰め込まれているから、広い会場なんだけど実は結構混み合ってるのよ。


「まあそうでしたの!? 存じませんでしたわ。

 でしたらアレク、早速リースルのところへ参りましょう!」


 へ? 今ですか!?


 リースルさまのとこでお世話になってることがばれたらどうしよう。

 ララメル女王にはもうばれてもいいような気がするんだけど、何があるかわからないから慎重にしておきたい。


「で、ですがララメル、急にお伺いしたのでは、リースルさまもご都合が」

「心配いりませんわ。わたくしとリースルの仲ですもの。

 そこのあなた、こちらのデザートを二つ、急いでくださる?」


 ララメル女王は、私のさりげない制止を意に返さずウエイターさんを呼び止めると、最高位の淑女らしく堂々と要求をつきつけた。


 ……寝室に入らなければ、ばれないわよね、きっと。

 だめだわ、私にはララメル女王を止められない。リースルさまがよきにはからってくれることを願おう。


「さ、アレク、早く食べておしまいなさい。デザートを頂いたら、すぐに参りますわよ」


 紅茶を飲みながら優雅におっしゃるララメル女王に、逆らうことはできないようだった。




「まあララメル……アレクも。一体どうなさったのですか?」

「リースル、アレクの仮面と衣装を見立てますわよ。あなたのクローゼットに参りましょう」


 言うやいなや、ララメル女王はリースルさまの部屋に入ると、クローゼットに直行した。


「ええ、それは構いませんけれど、会議は」

「今日は休憩時間が長いのですわ。あなたが暇にしていると思って、遊びに来てさしあげたのよ……ほらアレク、早くいらっしゃいな」

「は、はい。リースル、突然お邪魔して申し訳ありません、失礼します」


 ここはリースルさまの私室。

 テーブルには昼食の途中と思われる食器がまだ並んでいたけど、ララメル女王は全くおかまいなしだった。


 ララメル女王、リースルさま、私の順でクローゼットに入ると、リースルさまが、


「アレク、お国からはどのような衣装をお持ちになったのですか?

 せっかくお持ちになったドレスがあるのでしたら、そちらも見せて頂きたいと思うのです」


 と聞いてくれたものの、実はどんなドレスなのか私もわからない。


 マーヤがくれた『コーディネイト一覧表』には書いてあるはずなんだけど、覚えてないのよ。


「そうですわ、わたくし、それをお聞きするのをすっかり忘れていましたわ。アレク、どんなドレスですの?」


 うううどうしよう。

 リースルさまの寝室には現物が置いてあるんだけど、それを見に行くわけにもいかないし……


 私が困っていたら、早速衣装を吟味し始めているララメル女王の隙をついて、リースルさまが私の袖を引っ張って耳を貸すようにと小さく手招きした。


「なんでしょう、リースル?」

「アレク、衣装をわたくしたちに見せて頂けませんか?

 アレクがここで寝泊りしていることは、知らせないようにしますから。その方が、今はまだいいのではないかと思うのです。

 心配いりません、ララメルのことですから、騙されてくれると思います」


 リースルさまの心強いお言葉に、私は、


「……お願い致します」


 としか答えようがなかった。


 私のすがるような返事を聞くと、リースルさまは子供をあやすかのような声でララメル女王を呼んだ。


「ララメル、アレクがドレスを見せてくださるそうですわ」

「まあ! 本当ですのアレク!?

 ですけど、見せるってどういうことですの、あなたのドレスがこちらにあるとおっしゃるの?」

「実は昨晩、アレクの泊まっていた部屋の水道管が壊れたので、急遽わたくしの寝室に、お泊り頂いたのです」

「なんてことでしょう、水道管が……!

 それは大変でしたわね。女性にとって、夜の身を清める儀式は、砂金のように大切ですのに。おかわいそうに……あんなことがあった後に、水道管まで」

「心配いりません、ララメル。新しい部屋はもう用意してありますから。さあ、参りましょう」


 あ、ありがとうございます、リースルさま。


 まだぶつぶつと私の身を案じているララメル女王の背中を押しながら、リースルさまはクローゼットを抜けて行けるらしい寝室に私たちを導いた。


「あれがあなたの荷物ですの? まあ、なんて身軽なんでしょう!」


 私のトランクたちの塊を見て、ララメル女王は純粋に驚いたようだった。

 私にとっては大荷物なトランクたちも、ララメル女王にとっては一泊二日くらいの荷物にしかならないのかもしれない。


 私は一番大きなトランクを開けると、マーヤの『コーディネイト一覧表』を見ながら、大舞踏会用の衣装を引っ張り出した。


「まあ……なんて素敵なんでしょう!」

「素晴らしいわアレク、こんな見事な衣装、今までに見たことがありませんわ!」


 そのドレスは、澄み切った青空の色をしていた。


 少し歴史を感じるような生地に見えたけど、手に取るとまるで古さや重さを感じず、陽の光が当たると夜空に流れる星の河のように輝いた。

 この独特の煌めきは、生地の糸にオーリカルクが染みこませてあるのだと思う。


 首元から胸元にかけて、そして腰周りから長い裾へと、これもまたオーリカルクを染みこませた金色の糸で、センチュリアに古くから伝わる美しい刺繍が施されている。

 独特の形をしたとても長い袖は二重になっていて、腕の七分目くらいから覗く白いレース地にも、オーリカルクの糸が使われているらしく抜けるような光を放っている。

 そして、胸元と腰の部分に一つずつ、装飾用に磨かれたオーリカルクが縫いつけられていた。


 私はマーヤの『コーディネイト一覧表』にもう一度眼をやった。

 このドレスの説明の横には、こんなことが書かれていた。


『最終日には大々的な舞踏会があるかと存じます。その際には、こちらの青色のドレスをお召しください。

 28代目のイレーネ女王が袖をお通しになられたものでございます。

 このドレスを次の女王に託す、との遺言がドレスの裏側に縫いつけられておりましたので、恐れながらわたくしが手直し致しました。

 大きな舞踏会には何着もドレスを持ち込む貴婦人もいらっしゃいますが、面倒くさがりでもあられる姫さまには一着入魂、こちらのドレスさえあれば、世界の名だたる方々にひけを取ることはございません。

 センチュリア女王として、どうぞ輝かしい一夜をお過ごしくださいませ』


 私が舞踏会やら晩餐会に怯えていたのを知っていて、こんな書きつけをしてくれたのだと思うと、マーヤの心遣いが優しく深く胸にしみた。

 リースルさまやララメル女王がどんな素敵な流行のドレスを勧めてくれても、このドレスを着ようと思った。


「アレク、わたくし、これ以上の衣装を勧めることはできませんわ。なんて見事なんでしょう、明日が待ち遠しいですわ!」

「わたくしの思っていた以上の水色です。本当に綺麗な……センチュリア女王のアレクにぴったりのドレスだと思います」


 二人の言葉にも純粋に喜んでくれているのが聞き取れて、今回『世界会議』に来てよかったと心から思った。

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