表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/43

双頭の鷲2

****



 私が昼食会場の『オルメウスの間』で、今日も『本日の推奨ランチAセット』を摂っていると、


「まあアレクじゃなくて? 久しぶりですわね! 元気にしていらして?」

「ララメル、お疲れさまで……す」


 相変わらずの華やかな声で、ララメル女王が私のテーブルの前に現れたのだけど、私の返答の語尾が怪しくなったのは、ララメル女王の背後にいる人影のせいだった。


「……ホク王子もご一緒だったのですね、会議お疲れさまです」


 どうしよう。今日は会いたくないなあと思ってた方が来ちゃったよ。


 私が今どうにかなったらホク王子、あなたのせいですから!

 今日はもうそのハスキーボイスに悩殺されませんわよ、オホホホホホ!


 今日の私は既に『必殺・男前二割増攻撃』も受けて、身も心ももうズタボロなのですわ。

 他の殿方の攻撃は一切通用しませんのよ、残念でしたわね……って、午前中のことを思い出したら軽くめまいがしてきた。

 だめよ、しゃきっとしなきゃ。考えるなら寝るときに考えるのよ!


「お疲れさま、今日も雨がひどいね。

 市街地は大丈夫かな。こちらは高台にあるから被害はないだろうけど」


 ホク王子の言葉に、私は反射的にむっとしてしまった。

 『自分たちは大丈夫』って言っているみたいに聞こえてしまって。

 そう聞こえるのは、ホク王子になんとなく不信感を持っている私の思い込みだというのはわかっていたので、悪いなと思ったのだけど、止めることができなかった。


 市街地では、そろそろ避難が始まってる頃だと思う。貧民街の人たちも、きっと無事に避難できてるはず。

 なんていったって、あの履物皇子がいるんだから。

 ラルフ皇子、厳しくしつけられてないといいけど。


 ユートレクトが今日ローフェンディア皇子として動いていることは、公表すると周りがうるさくなるりそうなので、目撃された分には仕方ないけど、聞かれない限り黙っておこうということになっている。

 覚書にもそう書いてあるのを確認していたので(もちろんこんな言葉でじゃないけど)、私はユートレクトのことには触れずに、差障りのない返事をしておくことにした。


「そうですね、早く止んでくれるといいのですけど……」


 私がそう応えると、ララメル女王とホク王子は私の向かい側に座り、二人そろって『本日の推奨ランチBセット』を注文した。仲良しさんね。


「アレク、今晩は何か予定はありますの?」


 ララメル女王がいきなり聞いてきたので、私はなんと答えていいのか一瞬迷ってしまった。


「あ、はい、今晩は予定が入っておりまして」


 あああ危なかった……リースルさまのところに泊まってること、言ってしまいそうになったじゃないのよ。


 ララメル女王と晩ご飯とかご一緒してもいいんだけど、別れるとき帰り道が全く逆方向になるから、できればあまり一緒に行動しない方がいいと思うのよね。


 適当に私の泊まっている(はずの)部屋に帰るふりをして、その後リースルさまの寝室に帰るっていう手も使えるのかもしれないけど、危ない橋は渡りたくない。

 そうでなくても私、演技へたくそなのに。


「あら、そうなですの? それは残念ですわtね…ねえホク王子?」

「そうですね、夕食でもご一緒できればと思っていたのですが」

「そうですのよ、ねえアレク、夕食だけでもご一緒にいかが?」

「南方地域の食材を美味しく出してくれる料理長と懇意になったので、ぜひご一緒にと思ったのですが……いかがでしょう」


 どうしたのいきなり。

 なによ、二人してそのたたみかけるような攻撃は。


 南方料理、美味しそうだけど、今日はそんな気分になれなかった。

 だって、市街地は市民が避難させられるほどひどい状態で、炊き出しの準備までされてるのに、美味しいお食事食べてていいのかなって思うもの。


 二人は事情を知らないで言っているのだろうけど、もしも知ってて言ってるのだとしたら、やっぱり王侯貴族ってこんなものなのかしら、と考えてしまう。

 だから、何も知らないで言ってるのであってほしい。


「申し訳ありません、ちょうど夕食どきからの予定なので」


 私が浮かない顔で謝ると、ララメル女王はとても残念そうにホク王子の顔をちらっと見てから、


「そう……残念ですわ。それでは明日は空けておいてくださる?」


 ……明らかに二人で何か企んでいるみたいに感じるのは気のせいかしら。


 なんだか私とホク王子をくっつけようとしているみたいに思えるんだけど、ララメル女王、ホク王子も狙っているんじゃなかったかしら。


 でもね、いくらララメル女王のお願いでも、聞けるものと聞けないものがあります。

 特に今日の私にはそのたぐいの攻撃は全く通用しません。

 文句は『男前ドーピング皇族服』を今日だけ着ている人に言ってください。


「はい……ですが、明日にならないと予定がわかりかねますので、今はお約束できないのですがよろしいですか?」

「それはもちろんですわ。お互いに、いつ何があるかわかりませんものね」


 そのララメル女王の声色に、今までとは違う裏の意味があるような感じを受けて、私の背中にすうっといやな汗が伝った。



*****



 うーん……


 『清き泉の間』に戻りながら、私は心の中でずうっとうなり声をあげつつ考え込んでいた。


 ララメル女王、本当にホク王子の奇特な恋路(!)に手を貸しているのかしら。

 できればその妖艶な女力で、ホク王子を悩殺してほしいんだけど。そうすれば、私もララメル女王も幸せになれるのに。


 私の勝手なイメージだけど、ララメル女王って、そんなに簡単に狙ってる獲物を他人に譲るようには見えないんだけどなあ。どうなんだろう。


 でも、もしそうでないとしたら?


 ユートレクトは、ララメル女王は陰謀ごとに手を貸さないと言ってたけど、もしも今回に限っては違うとしたら?

 ホク王子と二人して、今回の陰謀の黒幕っぽいフォーハヴァイ王国に協力していたら?


 私はララメル女王やホク王子と知り合ってまだ日が浅いから、二人のことをまだほとんど知らない。

 だから、もしかしたら、ユートレクトも知らないララメル女王の別の顔があるかもしれない、とも考えてしまう。


 事は命に関わること。

 私一人の命ならまだいいけど、今回はリースルさまとお子さまのの命がかかっている。

 小さな可能性でも、残念だけど見つけたら疑ってかからないといけない状況だと思う。


 最初に会ったとき二人ともいい人たちだと思ったから、この勘が当たっていてほしい。


 そう願っても、ララメル女王あの言葉には何か裏の意味がある……この予感は頭から離れてくれなかった。


 そんなことをぐずぐず考えながら歩いていると、中央大陸地域の閣僚代表たちが『清き泉の間』の扉の前で何をするわけでもなく群がっているのが見えた。

 どうしたんだろう、中に入らないのかなと思っていたら、どこかの(知ってるけど名前覚えなくていいから省略)官房長官さんが、


「アレクセーリナ女王陛下、皇帝陛下がお待ちです。どうぞ中へお入りください」


 と言うと扉をノックして開けてくれたので、私は訳のわからないままお礼を言うと、午後からの戦場に足を入れた。


 私が入ると、扉は静かにだけど驚くほどの早さで外から閉められた。


「おお、勇敢な女戦士のおでましじゃな」


 サブスカ国王、女戦士ってなんですか。


 今日も変な武勇伝をこさえてたことを、私は今更ながら思い出した。みんな、お願いだから早く忘れてね。


 『清き泉の間』には、ローフェンディア皇帝やクラウス皇太子、その他の中央大陸地域の元首たちの半数が既に揃っていた。

 お昼ご飯食べた後、会議室にすぐ戻ってくる人ってわりといるのね。


 それにしても、サブスカ国王の形容にはどうお返事していいか大いに迷って、苦しみながらこう応えた。


「皆さま……先刻は分をわきまえぬ行動を取り、申し訳ありませんでした。この場を借りてお詫び申し上げます。

 外で閣僚代表たちが待機していましたが、何かあったのですか?」


 私はペトロルチカ代表をとんでもなく高貴な杖で殴り倒したことを謝罪すると、閣僚代表が廊下にたむろしている理由を、誰とはなしに訊ねてみた。


「アレクセーリナ女王よ、先刻は大儀であった。

 閣僚代表には知らせたくない報告があってな、外に出てもらっておる」


 皇帝陛下の重々しい声がして恐る恐るそのお姿を見ると、その右手には確かに神々しい皇杖が握られていた。

 私は自分の無礼な振る舞いを思い出すと、牛の吐息になって消えてしまいたい気持ちになった。


 改めて皇帝陛下に杖を略奪してペトロルチカ代表をどつき倒したことを謝ると、皇帝陛下は重低音の声で豪快に笑って許してくださった。

 けど、その後でおっしゃった言葉は、動揺が落ち着いたばかりの私の頭にはにわかに信じられないものだった。


「そのペトロルチカ代表が、先刻急死したのだ。閣僚代表も、その後を追って自害した」



******



 皇帝陛下の話はこうだった。


 衛兵さんたちと侍医さんたちが、ペトロルチカ代表と閣僚代表を医務室に運んだ後のこと。


 担架にくくりつけて運んできたペトロルチカ代表は、ベッドに移される前にまた意識を取り戻した。


 侍医さんたちはとりあえず、ペトロルチカ代表を担架ごと、こういう人たちが意識を錯乱させたときのための拘束用ベッドの上に乗せるだけ乗せた。

 鎮静剤みたいなものを注射して、落ち着いたら即拘束用ベッドに移動させられるように。

 (だって、ここで拘束を解いたら何しでかすかわからないものね)


 意識を取り戻したペトロルチカ代表は、薬物の禁断症状と思われる苦しみに悶えながら、侍医さんたちの耳を疑うようなことを告白しはじめた。


 自分はペトロルチカ代表に仕える身でありながら、今回の『大役』を果たせないまま朽ちることとをお許しください、というようなことを、何度も何度も繰り返し号泣しながらのたまったらしい。


 つまり、ペトロルチカ代表だとみんなに思われ、東方大陸地域の会議を騒がせた人物は、本当のペトロルチカ代表ではなくて偽者だったのよ。


 侍医さんたちは、ペトロルチカ代表……じゃなかった人の様子が急激に悪化していることを悟ると、あらゆる手段を使って禁断症状を抑えようしたんだけど、それでも抑えきれないほど症状はこの短時間で急速に進んでいた。


 侍医さんの話によると、『世界会議』に来る前からペトロルチカ代表を演じるために、普通の中毒者でも考えられないほどの量の薬物投与をしていたとしか考えられない、らしい。


 ペトロルチカ代表の仮面を被っていた人は、こうして苦しみぬきながら亡くなってしまった。


 ペトロルチカの閣僚代表が医務室に連れてこられたのは、ペトロルチカ代表(だった人)と同じく、薬物を使用している可能性があったからだそうなんだけど、同胞が無残な死を遂げると、口の中に仕込んでいたと思われる毒薬を噛んで自ら命を断ってしまった。


 口の中に薬を入れておいたら、唾液とかで溶けてしまうんじゃないかと思うのだけど、身元がばれたら自分の存在を消してしまわないといけないような諜報活動をしている人たちは、即死量の毒の粒に、唾液に触れたり飲み食べしても溶けない特殊なコーティングをして、奥歯や舌の裏に忍ばせているんですって。


 最悪の結果になってしまったけれど、ここで嘆いてばかりもいられない侍医さんたちは、他の分野のお医者さまたちも呼んで彼らの身元を確認することにした。


 その結果、ペトロルチカ代表を名乗っていた人物は、精巧な顔の皮を被って変装していたことがわかった。

 彼自身はペトロルチカの重要幹部のひとりだった。

 そして、閣僚代表と思われていた人物も、閣僚代表ではなくもっと地位の低い人物であることがわかった。


 ペトロルチカ代表が一体何を考えて自分の部下たちを『世界会議』に送り込み、彼らに何をさせようとしていたのかは、今となってはわからなくなってしまった。


 とても後味の悪い『事件』になってしまったけれど、二人が亡くなったことはもちろんペトロルチカには知らせるものの、遺体の引き渡しはペトロルチカからの連絡を待つことにして、当分ローフェンディアで預かるらしい。


 ……この話を聞いて私は、正当防衛だったとはいえ自分のしたことを悔いた。


 もしかしたら、私が頭を強打したことで禁断症状が進んだのかもしれない、という考えが頭を埋め尽くすと、手と腕が小刻みに震え、脚もじわりと痙攣してきた。全身から冷や汗が沸き、頭にも血がのぼった。


 口にするのは怖いけど、どうしても言っておかなくてはいけなかった。


 私は何物かにわしづかみされているように苦しい喉の奥に、全身の力をこめて声を出した。


「陛下、私の行為が、ペトロルチカ代表と思われていた人物の禁断症状を早めることになってしまったかもしれません。申し訳ありませんでした」


 その声はまるで自分のものではないように聞こえた。

 うわずって音程の定まらない声は、最高位の淑女にふさわしくないもので、自分が情けなくて泣き出しそうになった。

 でも、一国の元首が公式の場で涙を見せるなんて許されることではなかった。


 私は定められない視点で他の元首たちを見た。


 私の発言に驚いた人もいれば、全く動じていない人、逆に私の愚かさを口の端で笑う人もいた。


 その表情が自分が招いたこととはいえ、一番恐れていたものだっただけに、私の動揺はますます激しくなった。


「何を言うか、そのようなこと詫びずともよい。

 侍医たちも、あの状態では命を落とすのも時間の問題だったと申していた。

 そなたのとった行動は最善のものだった。案ずるな」


 皇帝陛下の言葉に返事をしたかったのだけど、声がどうしても出せなかったので黙ったまま頭を深く垂れた。


 下げた視界にぼやけた床が見える。


 頭を上げたら涙が落ちてしまうかもしれないと思うと、そのまま頭を動かすことができなかった。

 視界がどんどん滲んできて、緩んだ視界の中央で涙が重力と戦っていた。


 これ以上ここにはいられなかった。


 確か午後の会議までにはまだ時間があったはず。もしかしたら、全員揃い次第会議を始めるのかもしれないけど、ごめんなさい、少しだけ時間をください。


「……申し訳ありません、次の会議までには戻ります」


 私は心と涙腺につかまれた喉からそれだけ絞りだすと、うつむいたまま部屋を後にした。




 こんな考えなしの私に女王の資格なんてない。

 こんなみっともない私なんて、いなくなればいいのに。


 お手洗いの個室で声を殺して泣きながら、私は自覚できないまま、病床についていた頃の心に逆行していた。



*******



 あれから、なんとか時間までに『清き泉の間』に戻ったけど、まだ閣僚代表の皆さんは廊下に待機したままで、中に入るとある署名をするように求められた。


 それは午前中の件を一切誰にも漏らさないという、中央大陸諸国の元首たちとクラウス皇太子、そして東方大陸諸国の皆さん連名の誓約書だった。


 その文面にこんな一文があって、私は自分のしたことの重さに再び心が重くなった。


『本誓約は上記の件において、対象国(ペトロルチカのことよ)が、署名した者又は関係者もしくは国家並びに団体に対し、不安もしくは恐怖を与える目的で殺傷・略取・誘拐・人質にする行為、又は重要な施設等を破壊する行為がなされる恐れがあると認める場合には、各国が協力してこれを阻止することを確約するものである』


 そう……難しい言い回しだけど、今回の事がペトロルチカに公表された時点で、特に私なんかは『偉大なるペトロルチカ代表を殴打、撲殺した不届きな輩』とみなされて、ペトロルチカお得意のテロで殺されかねないのよ。亡くなったのはいわゆる影武者だったんだけどね。


 ただ見てただけの人たちだって、『偉大なるペトロルチカ代表を見殺しにした』というなんとも理不尽な料簡でテロのターゲットにされないとも限らないのよ。


 過激派組織が普通の人には理解できない論理や思想で動くことはユートレクトが教えてくれたから、迷惑な話だけど、私たちや私たちの治めてる国がいわれのない攻撃を受ける可能性は十分あることはわかる。


 というわけで、上みたいな文言が入ってるんだけど、私は今回『ペトロルチカの殺傷ターゲットベスト5』くらいには間違いなく入るので、他の国の皆さんにも迷惑をかけるかもしれないと思うと、胃がきりきり痛んできた。


 ……私がおよそ50通の書面に署名を終えると、皇帝陛下は私にねぎらいの言葉をかけてくださり、中央大陸地域の元首全員の署名が入った誓約書を持って、東方大陸地域の会議室に出向いていかれた。


 皇帝陛下と入れ違いに閣僚代表の皆さんが入室を認められて中に入ってくると、午後の会議が始まることになった。


 私が席に着こうとしたとき、


「大丈夫かい?」


 優しい声が聞こえて振り向くと、クラウス皇太子が心配そうな顔でこちらを見ていた。

 私はどれだけの人に迷惑をかけているんだろう。


「はい、ありがとうございます。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」


 私が頭を下げかけると、クラウス皇太子は私の両肩を支えて私のおじぎを止めた。そして、


「迷惑なんて全くかかっていないよ。気にしなくていい。皇帝陛下のおっしゃっていた通りなのだからね。

 あなたはしっかりした判断と行動が取れる人だ、自分を信じることだよ」


 クラウス皇太子の温かい言葉にまた涙が出かかったけど、そこはぐっとこらえて、私は改めて心をこめてお礼を言うと自分の席についた。


 同じような言葉をつい最近聞いたような気がした。いつだったかな……


 それを思い出せないまま会議に入ってしまったけれど、思い出したのは、会議をなんとか無事に乗り切ってリースルさまの寝室に向かっているときだった。


『ご自分の判断を信じることです』


 それは、私が午前中『清き泉の間』を出ていくとき、ユートレクトがかけてくれた言葉だった。


 クラウス皇太子と同じ意味で言ったのではないと思う。

 私のことを『しっかりした判断と行動が取れる』なんて、思ってないだろうから。


 でも今日は、午後の会議のことを私に一任してくれた。覚書に署名してるとき、細かいことに釘をさすこともできたのに。

 私はペトロルチカ代表(のいわゆる影武者)のことで動揺してて、午後の会議のことなんか打ち合わせる余裕もなかったけど、そんな重要なことを忘れる人じゃない。


 本当に信じて……くれているのかな。


 そう思いかけて心の中で頭を振った。そんなことあるわけない。

 このくらいのことで心を浮き足立たせていたら、きっとまた余計なことをしてしまう。それが何よりも怖かった。

 今日のことだって午前中は怒られなかったけど、明日になったら怒られるかもしれない。


 私の心は負の方向のことばかりに想像が膨らんだ。

 そして、彼の言葉一つでどこにでも転がっていく自分の心を諌めることしかできなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ