異世界の風景
「うおおおお」
外に出ると、いわゆる城下町だった。しかしそれは和よりではなく洋より、石の建物が多くて基本的に家にも靴で入っている。まさしく異世界の町という感じだった。
これが王都でないということに驚きだ。一つ一つの町がこんなに栄えているのだろうか。ふと目の前の路地に目が向いた。そこにはボロボロの服を着た子供がこちらを見ていた。男の子か女の子かは分からない。こちらが見ていることに気づいた子供は慌てたように路地の奥に走って行ってしまった。
やっぱり孤児みたいな、貧困問題はあるんだ。俺はこの世界が大体自分の想像したものと同じであると考えた。これは元の世界の知識が役に立つかもしれない。きっとこの世界には支配する側、偉そうな貴族様もいるのだろう。
そんなことを考えながら歩いているとおいしそうな匂いのする店を見つけた。 そこへ足を運んだ。
「いらっしゃい!適当な場所に座ってくれ!!」
出迎えたのはいかついスキンヘッドのおっさん。おっさんはでかいフライパンでフライ返しをしながら俺にそう言ってきた。
丸テーブルが6つ。こちらは家族連れや男と女のカップルやらですべて埋まっていた。カウンター席はあいていたのでそこへ座る。
「お?子どもか。珍しいな。うちは初めてだな?
注文は何にする?炒飯完成だ!取りに来てくれ!」
注文したと思われる家族連れが皿を取りに来る。俺の目の前に置かれたので子供の分を手渡してやった。
焼き飯か…うまそうだ。
「初めてです。ここは何の料理を扱っているんですか?」
「ここはチャイ料理を扱っているぞ。さっき渡した炒飯とか天津飯とかだな」
「なるほど。ならおいしそうだったので炒飯でおねがします」
「おう!少し待ってな」
そういっておっさんは野菜やら肉やらを切り始め、調理を始めた。俺は暇だなと思って、ポケットに手を入れる。あ。携帯ないのか…。異世界だもんな
そんなことを考えていると違うお客さんが入ってきた。
「いらっしゃい!適当に座ってくれ」
おっさんがそういうと少女は席を探し始めた。開いている席は俺の隣だけだ。俺は手で座っていいですよとサインをする。少女はペコっとお辞儀をして俺の隣に座った。
短く切りそろえた青髪にそれと同じ青い目、年齢は今の俺より上だろうか?この世界のひとってみんなきれいな人ばっかりだな思ってしまう。
「…なに?」
「あ!いやなんでもない。ごめん」
「そう…。あまりこっち見ないで」
そんなに怒らなくてもいいじゃないか…。まあでも見惚れてたとか言えないからな
「おい!坊主。できたぞ!たくさん食って大きくなるんだぞ。美人に振り向かれるような大人にな!
ガハハハッ!」
「うっ。ありがとうございます」
横目で女の子を見るとこっちは気にしてないように、おっさんに注文していた。ここにはよく来ているのだろうか?
それにしても多いな…。それでも滅茶苦茶おいしかった炒飯を残さず食べたのだった。
そのあと金を払って、満足顔でまた来ますと言って出た俺は日用品を買いに街をぶらぶらと歩きだした。あの女の子可愛かったな。またあの店に行けば会えるかもしれない。それに飯もうまかったしな。また来ようと心に決めたのだった。
「この街…。広すぎるだろ…」
困った。完全に道に迷った。俺は今どこか分からない住宅街のど真ん中に居た。一応服やこれからの生活に必要なものはあらかた買った。しかしこの街面白いのだ。見たこともない食べ物、見世物、美人な女子たちの路上ダンス。久しぶりに心が躍った。そんないつの間にか舞い上がった俺は街を縦横に歩き回り、今迷子になっていた。
(宿の店員さん。心配しているだろうな…)
露骨に落ち込んでいると、後ろから声をかけられた。
「君はあの時の!こんなところで何をしてるんだい?」
それは俺をあの宿まで運んでくれた門番のお兄さんだった。
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